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真実

「国王陛下、何卒お聞き届け頂きたき儀が御座います、お聞き届け頂ければこの件も見事に収まりがつきましょう」


 クラウスの一言は覚悟を決めたソレであった。


「ふむ、この国の宰相まで勤める賢人たるクラウスがそこまで言うと成れば聞かねばなるまいな、許そうではないか17前に関連する事ならば聞かねばならないのは私とて同じ事」

「多大なる評価、真にもって在り難き幸せ、ですが賢人とは言えませぬな、私は一つ間違いを犯しております故。誤解の無いよう先に申せば、我が娘が陛下と結ばれた事は嬉しく思っておりますぞ、今でもそれが貴族として正しかったと思っております」



「父上! ヘルツがヘルツが潰れますぞ!」

 これ以上は話すなとヘルムートが喚くが国王は其れを許さないと衛兵に指示をだす。

「衛兵、ヘルムートを黙らせよ」

「ハツ」



「実に情けない、さて続きをお話致しましょう。私は宰相であったにも関わらず、先王と愚息の謀略に気がつかずに……そう、一人の優秀な国を憂う貴族を処断している愚か者に過ぎません。王よ、貴方の親友であったローレンツ・ザフィーア・シュミットが処断されたのは先王が己の息子である貴方に嫁いだ我が娘の力でシュミット公爵家ザフィーアがより強大に成る事を恐れた事、その不安を巧みに使いと思われておりましょうが事実は少し異なるのです――全ては公爵家を潰す為の謀略、先王に我が娘を差し出すように工作することで、その後の公爵家を潰す為にと画策した我が愚息の謀の結果、あの忌まわしき冤罪事件が起こったのです。冤罪の証拠も全てこの愚息の用意した物であった事調べが付いております」


 そこで一旦懐から書類の入っている包みを取り出すクラウス、長年に渡って“部隊”が“竜殺し”が“虎狼”がそしてレノが捜し求めていたソレを国王へと手渡す。



「これも息子を愚かな者に育ててしまった我が不徳の致す所。事件は起こってしまい、王家の体面を守り、そして若しかすれば将来はと願い隠蔽した事実だったのは陛下もご存知かと思いますが、間違いで御座いましたな……よもや又も同じ過ちを繰り返そうとするとは。

 此処に私の名において真実を告げたからには――是非シュミット家の再興を認めていただきたいのです」


 膝を折り頭を垂れて王に願い出るクラウス。


「そうか、やはりローレンツの事件には更に裏が……勿論我が親友だった彼の名誉を守る為にもここにシュミット家の復興を認めよう。しかし、これが今回の件にも関わるのか?」

「陛下勿論で御座います――状況の証拠、そして届けられた書類、これらを否定するこの者達の否定した相手が平民であろうがなかろうが関係は御座いませんが、身分、身分と蝿のように騒ぎ立てる言許しがたい。ではもしも、この者達が相手にしたのがこの国の貴族たる者であればその証言どれ程の重みが増すか、それを知らしめるまでの事、老人の最後の忠義と思し召し下さいませ。この青年レノアールこそ、ローレンツ卿の忘れ形見、レノアール・ザフィーア・シュミット。たった今シュミット家が再興されたからにはその言は我が国の貴族としてのもの」

 ……

 ……

 ……

「「「「は?」」」」

「それは真か!?」

 唯一国王だけが驚きから立ち直った。最初から驚いていないのはレノの正体を予見していた王妃だけである。

「レノアール殿、いやレノアール卿、眼鏡を外し、前髪で隠しているその素顔を陛下に、我が娘は気がついておったようですがな」


 そのまま見事に老宰相に乗せられる形となって見事にシュミット家の再興までされてしまったレノも多少は動揺していた。

 仕方がないと眼鏡を外し、髪を掻き分けて正面から国王へと向いた。


「おお、不思議な感覚はこれであったのか……通りで初めて会った折にも初見ではないと感じる訳だな」

「やはり……そうでしたのね」

「レノが……」


 三者三様の反応と、そして――


「う、嘘だ……一族は全て……クッ」

「まさかレノ様が公爵?」

「ば、馬鹿な、これでは言い逃れどころか……」


 こちらも驚きの余りにまともな反応を示せる者はいなかった。


「死なば諸共! 私の様に優れた人間が罪で裁かれるなどあってはならない!」


 一番近くにいた王妃に向かって人質に取ろうと動いたヘルムートだが、向かった先が悪かった。


 ティアはドレスを翻して叔父であるヘルムートを投げ飛ばす。

 白い輝きがティアを包んでいた。

「グハッ、ば、馬鹿な……」

「衛兵、何をしておるか、捕縛せよ!」

「愚かな息子じゃ、王よ、此処は我が命一つで娘達は許していただきたい」

「宰相!」



 首を突き自害しようとしたクラウス。

 王が叫び手を伸ばすが余りにも玉座からかけ離れている。

 もはや止められないのかと悲劇を誰もが予想する。

 彼は一族として罪を償い、王妃である娘の為だけに死のうとしているのだと。


 その白い輝きと黒い煌きが寸前で刃を弾き、奪い取る。

 短剣を弾いたのはティア、そして奪い取ったのはレノだった。


「お爺様、死は償いでは御座いません」

「貴方が命を落とす事を誰も望みませんよ、寧ろこの後こそ忙しくなると言うのに……」

「そうです、隣国との交渉などお爺様がやらずに誰にさせると言うのですか?」

「じゃがな……」

「ハハハ、じゃがなも何もありませんよ、貴方が償いたいと言うならば宰相としてこの国に仕えるべきだ、そうではありませんか陛下」

「うむ、レノ、レノアール卿の言を良しとし、ヘルツ家に咎は無し、罪は個人のモノとする。クラウス卿には今後も宰相として務める事をもって償いとしよう」

 国王からの宣言をもって事態は収束へと向かった。

 だが――

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