表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/40

老人

 それはずっと続いている不思議な寄付だった。

 この国の孤児院というものは基本的に貴族の援助によって成り立っている。

 当然レノの暮らすシュラン孤児院も表向きはそうした寄付を受けて運営されている。


 最大のというより唯一と言って良いほど後援者であったシュミット家が断絶した孤児院が普通に運営できる筈はなかったのだが、そこは関係のあった複数の貴族や商家からの寄付がなされた事で問題無く運営は継続されている。元よりそうした金銭の手配は“シュミット家諜報部隊”との繋がりが露見しないようにヨアヒムの実家であるベールケ士爵家を通すようになっていた事も大きい。


 現在は土地の問題で貴族と揉めて1年前に下級市街地へと移転はしているが運営状況も悪くない。

 元々が質素な運営を心がけていた事もあるのだが、旧シュミット家の裏の組織は想像以上に恩を売っていたのである。シュラン孤児院に寄付されている事はベールケ士爵によって隠蔽されているがその筋からの寄付は多額だった。


 だからその寄付も当然そうした貴族からベールケ士爵を通せない何か関係のある筋からの匿名の物だと思われていた。


「今月もやはり……」

「ええ、これだけで十二分な程の金額ですからね」

 決まった日にちではなく、郵送など方法は様々な手段でシュミット家が断絶した1年後からかれこれ16年以上続く寄付は今月も届いた。


 それとなくジーク達も出所は探っているがついぞその送り主を特定するに到っていない。


 だが、その送り主と、そう思わしき人物は一人だけ存在した。

 ジークもまだ特定が出来ていないのでレノにも告げていない事だった。


 何故なら一年に数回であるが孤児院の様子を見に来る老人が一人だけ居たのである。

 もしかすればこの人物ではないのかとジークも考え調査したのである。

 が金の出所はやはり不明であった。


 そして今、ティアのように判るような変装ではなく、十二分な変装をしたその人物は偶々レノとティアの訓練を眩しい物を眺めるように影から見守っていた。



 彼こそはクラウス・ルービン・ヘルツ上級侯爵家当主であり、ティアの祖父、そしてレノの父ローレンツの処断を決めたこの国の宰相であった。


 だからこそレノには知らせるにも真実を突き止めてからとジークもそしてエッダも判断をした。


 ローレンツの“指示”が無ければ旧シュミット家の諜報機関はその全力をもって報復行動に動きヘルツ家を殲滅したであろうからだ。確実な証拠は無くともそれは起こった可能性が高い――


 未だにエッダなどはヘルツの家を殲滅したいと零す事があるのだ。


 その気持ちはジークも同じであった、がローレンツ、旧主の指示は絶対である。


 ――国を割っては成らない。


 それがローレンツの指示だった。

 ヘルツ上級侯爵家ともなれば国の重鎮の中の重鎮であり、表の要とも言える。

 そして何よりもそんな事になれば彼女が悲しむだろうと、そして結果として隣国に攻める好機さえ与えかねないと言われては闇から守護する組織が動く事は出来なくなった。



 だが、レノを主と定めた今となれば話は別である。


 それだけに“何故”この老人がこうして身分を隠しているのか、本当に寄付はこの老人の手に縁るものなのか不明な事は問題であった。真実次第、もし国を我が物とするならば――



 クラウスはティアに見つかるのを嫌ったか、訓練の様子を少し見ただけでその場を去った。


 その様子を気づかれる事無く伺っていたジークは晴れない顔付きで屋内へと戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ