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休日

 とある屋敷で密談が交わされていた。

「話が違うではないか、あんな――」

「まあ、こちらも困っておりましてな、そちらの王女様の行動も問題ですぞ」

「あれは姉上の勝手な行動だ、私は預かり知らぬ」


 密談は続く――これを全て聞き届けていた者が居るとも知らず。


 即ち“部隊”の仕事であった。

 それをジークはレノに報告している。

「という、報告が上がっておりますが……」

「まあ、予想通り裏で糸を引いている貴族が居たか」

「息子が居ない貴族としては致し方ないのでしょう」


 大使館などのネレル王国勢力だけでは無いかもと思い、事態の裏を探らせている所にローランの訪問があった貴族の屋敷でそのような会話があったのだ。

 その貴族は外交官を務めるカイェタン・ペリル・グレッツナー。伯爵ペリル家ではあるが領地を持たない宮廷貴族である、それなりの力を持つがレノには違和感が生まれる。

 高々宮廷貴族の伯爵位で一国を相手に画策を巡らせてというのは無理がある。


「さらにグレッツナー伯爵の背後があるか……」

「そう思われます、が今の所は繋ぎは無いようです、恐らくは王城での遣り取りかと」

「少々困るな、流石に王城の人員は急激に増やせない」

「そちらは一応指示をしておりますが、確かに厳しいかと」


 実質的な被害は今の所は起きていないと考え、一応は対策もされている事だとレノは其処で妥協する。


「それよりも、このお手紙ですが……」

「そうだな、その件は――」

「失礼しますレノ様――あらお話中でしたか」

「いや構わないよ、ティア?」

「ええ、お越しになられました」

「じゃあ、その件はティアに頼んで断って貰うよ」

「承知いたしました」


 休みになれば孤児院に気軽に来ていたティアだが、先日からの騒ぎに加えてローランの件などもあり、用心を兼ねて馬車での送り迎えが付いた。そして帰りはレノが王城へと送り届ける事になったのだが、これをティアを始め関係者《国王と王妃》が喜ばない筈はない為に直ぐに承諾され、レノはこれから毎週王城へと通う事になってしまっていた。


 そして断ると言ったのは王妃を護衛した事に対しての叙勲の話であり、名誉爵位の授与が検討されていたのである。爵位などに関しては王では無くても王に対して貴族が請願すればその裁可次第で認められる、今回は国王陛下でも王妃でもなくその配下の近衛兵からの申請だったらしい。


「ん、今日のお供はクリスか」

「ホホホ、感謝なさい」

「「ありがとうクリス」」

 尊大な態度で接っしようとするが、威厳がないクリスにティアとレノは同時に感謝の言葉を述べる。

 勿論目的はクリスが慌てふためくのを知ってるからだった。

「にゃ、姫様まで、レ、レノ殿は殊勝な態度ですわねっ!」

「だって我侭を言ってるのは私ですから」

「そうそう、それにクリスなら安心して警護を任せられるだろ」

「姫様はもっと我侭を言ってもよい立場なのですわ、そしてそう、私が警護する限り姫様の安全は守られているのです!」

「で、今日もクリスも当然稽古していくんだろ」

「当然ですわ! 必ずや一本取れるようになりますのよ」


 流石クリスである、空気を読まない事にかけては定評通りの行動だったのだが、二人きりになれないようになど考えていない所がまた素晴らしい才能だった、しかしこの事を知って地団駄を踏むとしたらアンネやカタリーナ、そして白百合騎士団の面々位である、実際こうしてクリスが居る方が気軽に話せるのだからとティアも残念に思っていないし、レノに至っては居てくれて助かるとさえ思っていた。


「フフフ、にいさんから一本などまだまだクリスちゃんには早いわ!」

 此処にもう一人接近を阻止したいと考える刺客として義妹エレオノーラが参入してくるのは当然の事だった。

「む、その声はエレン!」


 両親の血を引くエレオノーラの才能もまた素晴らしく、裏を知らないだけでその才能は12歳にしてクリスと互角という素晴らしいものだった。だが、彼女は兄を大事に慕いすぎて、こうして肝心な目的を忘れてしまう事が多い。


 彼女の目指すべきは本来はレノとティアの接近なのだが、訓練であってもレノが馬鹿にされるのは許せなかった。そして彼女にとって訓練相手としてもっとも背丈の似ているクリスは丁度いい相手でもあった。


 それらが要因となって、このライバル関係が生まれ、こうして続いているとも言えた。


「エレンも良い剣筋になっているわ、将来は是非女性騎士を目指して欲しいものだけど……」

「どうだろうなあ、確かに筋は悪くない、今でクリスと互角なんだからね、でも将来は自分の進みたい道に進めばいいさ、それが騎士なら僕も応援はしようと思うさ」

「そ、そうよね、エレンなら私の後を継いでそうよね、それに応援なら私もするわ、実力が見合えば問題は無い筈だわ!」

「うーん、後輩の面倒を見る感じでね、じゃないとまた僕のときみたいになるよ?」

「わ、判っているわ、その件はもう納得しているし、理解もしているもの」

「それならいいさ」


 最初に鎧一式をオーダーメイドで作らせようとしたりと中々にティアは騒動を巻き起こしているのでレノは一応釘を刺しておいたのだ。


「まあ、見ていても仕方が無い、こっちも始めようか」

「ええ、宜しくね」


 こうして二人は剣を交え学院よりも実践に近い訓練をする。

 障害物や遮蔽物などを配した場所での戦闘の訓練だ。

 時には狙撃や魔術での一撃など不意打ちも含めた厳しい内容であった。

 一応は“部隊”よりはマシな内容ではあるのだが、言うまでも無く男女が休日を過ごす方法としては大きく間違っていた。

 そんな姿を大人達は複雑な心境で暖かく見守る。

 その中には一人の老人の姿も見受けられた。

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