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闇夜の守り手

「で、お茶を?」

 現在レノによるアンネの聴取中である。

 ティアはベットで寝ていた、見事に乙女思考が限界を迎えて顔も真っ赤に気絶した。


 介抱が終わってから事の始まりからを訳知りであろうアンネに問い詰めたのだ。何しろ挙動の可笑しさもあったがレノには彼女の呟きが全て聞こえていた、そうあの台詞である。

「ええ、私からお勧めしまして」

 自分が焚きつけたことを正直に白状するアンネ。


 だがレノは自分の立場と彼女の立場を考えろと正直に告げた。

「はぁ、お分かりかと思いますが、自分は庶民ですよ」

「其れは存じておりますが、レノアール様であれば問題はないのではないかと、ティア様をお任せするに足ると判断致しました、学院の成績、そして実際に2年前からの振る舞い、ええ、ティア様が抜け出した日からの話は全て私存じていますのよ」


 ティアの乙女思考の根源がここにいたのかと、そうレノは確信していた。

 実際の所は王妃の割合が大きいのだが、普段の騎士にさえすればというような考えは全て彼女が原因であると言って良かった。

 だが本能の赴くままに騎士道精神へ一直線になりがちな彼女を――原因は幼馴染のツインテールの少女とレノにも助長した原因はある――ソレよりはまともな思考で落ち着かせているという面だけは認めねばいけない。


 身分差のある恋――

 これほど令嬢を擽るキーワードはない。それが普通の貴族ならまだしも、王女と庶民であり、しかも有能ともなれば遮る問題は周りの反対だけ。だが、国王も王妃も恐らく賛成するともなれば是非とも実現させて差し上げたい、そうアンネの恋愛脳は判断した。


 そう、恐らく実際にそうなっても問題は無い。身分を偽り、義賊である事も除けばレノは確実に最強の騎士足りえる実力を持つ青年なのだ。反対する貴族等抑えてでもすぐ婚約しても問題は無いだろう。

 だが、レノは王家の近年最大の醜聞に関わる人物であり、そして王都の闇を駆け多くの貴族の不正を正しながら世間を騒がす義賊である。


故に、レノは例え彼女を大切に思おうが己の血を考え、大切に思うからこそ――


「僕は騎士になる心算はありませんよ」


ティアを見つめる目は愛する者を見る目なのに関わらずどうしてそんな言葉が出るのだろうかと、アンネは不思議に思いつつも有無を言わさないレノの言葉を受けて口を噤んだ。


 だが、だからこそと言えようか、必ずやティアとレノの恋を応援しようとアンネは心に誓った。そしてそれは翌日からのティアの服装や髪型に変化をもたらして一層可憐になったティアを皆が見ることになる。




◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆




城を辞したレノは孤児院へ戻り――

即時に闇の中を駆けた。


数刻前。

「まだ襲撃犯の裏は」

「ええ、レノアール様達を襲った男は取り調べ前に死亡――毒殺のようです」

ジークとレノは情報の突合せをしていた。

主であるレノが襲われた事で王都にいる部隊に震撼がはしったのは言うまでもないだろう。

そして、敵を探し出す事に全力が注がれた。


「闇の守り手として――失態だな」

「申し訳御座いません」

レノは自身を責めたのだ、様々な出来事の中で仇の存在を許さないと決め行動していた事が原因だと。

「いや、私の決めかねていた態度がこの事態の原因だよ、一先ずあの事件の物証に割いていた戦力を全て今回の件へ、私は可能性のある貴族の屋敷を探る」

「では城の方は」

「ああ、任せる」

「ハッ」


当たり前のように告げてレノは孤児院を出る。“義賊アッシェ”の装束に身を包み日の落ちた町並みを走る。

城にも当然繋がりのある伝もあれば部隊の人員は入り込んでいる。ティアの周辺にも注意を促した今襲撃される可能性は低い。


だからこそ一日でも早く暴く為とレノは闇夜に溶けた。




◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆




ティアは目を覚ましてから直前の様子を思い出してもう一度ベッドへと突っ伏した。


――部屋にレノが! ウフフ、あ、でも、折角レノを部屋に呼んだのに……


嬉しさで枕を抱き寄せていた手がふと緩む。

そしてレノが庭園で言っていた事を思い出し、侍女を呼ぶ鈴を鳴らした。



「なんですって、そう……」

襲撃犯が死亡、恐らくは暗殺と教えられて危機感を強めたティアは国王と王妃の寝室の前に陣取った。


この行動はレノが知ったら頭を後ろから叩いていただろう。

剣を床に抜き身で突き刺し仁王立ちするティアの姿が凛々し過ぎて誰も止めなかった。




◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆




翌日の学院


レノが余りにも眠そうなティアに話しかけた。ティアは『どうだ、頑張ったのよ! 褒めていいわ』といった口調で不眠番をした事を語った。


「昨夜は何事もなかったわ! フフ――ィタァい」

ティアがそう言い切った瞬間――後頭部へ手首を効かせた見事な平手打ちが入った。


「ドアホか、それで寝てなくてティアが疲れて誰かに襲われたら意味が無いだろうが、そういう時は部屋で一緒に寝ろ、そこに警備を集中させるのと毒見を確実にしろ飲み物は魚を使うとかだな――」


周りは話の内容が剣呑でもあり近寄りがたい事と、ティアがレノに説教されるなど見慣れている為に“またか”と見てみぬ振りを貫いた。流石貴族たちは君子危うきに近寄らずといった所か。


だがこの学院には空気を読まない生徒が複数存在する。

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