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王女と未来

投稿順が間違っていましたので修正。

 もしも、レノが声を掛けてくれないそんな未来が待っていたのなら、どうなっただろうか。


 ――私に全員を倒す事が出来る筈がない。


 せめて得物があれば話は別だが、護身用の短剣などでは無理な話。


「そうね、確かに騎士でなくとも……」

「でもティアが騎士になるというなら応援するよ」

「――ッ」

 普通の遣り取り、だがレノに応援されると言うのはなんと気持ちのいい言葉かとティアの体を歓喜の衝撃に打ち震えた。


 その日はなんとか平静を装ったティアはレノに送られて上級市街地《王城》へと帰った。但し大人しく帰った訳ではないのだが。




 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆




 ――レノが孤児院でティアと話していた頃、王都の治安のよろしくない区画


「ぐぁああ」

「ハッハッハ、テメエら誰に手を出そうとしてんだぁオラァ!」

「フ、フフフ、罪とは如何にして償えるか、その体に刻み込んであげるわよ」


 二匹の獣が暴れまわっていた。


「しかし、因果な話だ……」

「ええ、姐さんから連絡を受けても“まさか”としか思えなかったわ――な血を引く」

「よせ、あの方はそんな事は望まん」

「そうだけど、心配だわ」

「問題は……約束より早く伝えるかどうか――」

「それは――」

「難しい話だろ」

「そうね」


 その日、とある犯罪組織が殲滅され、そしてその余波は多数裏社会の組織へと波及、それから数日で王都にあった幾つかの闇の組織が被害を受け、再度“竜殺し”“虎狼”の恐怖が浸透することとなった。




 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆




「父さん、これ寄付」

「はっ? っておいこりゃ」

「あーうん、ティアって今日の子が最初は報酬で渡そうとしたお金だよ」

「まっ、いや、命の代金としちゃ妥当かもしれんが――」


 ティアは帰る間際になって報酬の話をし、持っているお金を全て渡そうとした。

 在り得ないような、そう半金貨だけでなく、なんと半白金貨と金貨を報酬として渡したいと告げたのだ。一瞬、それまでの常識訓練が全て意味が無かったのかと思った程だ。


 だがティアの言葉がそれを否定していた。

「もし、あの時レノが私に声を掛けてくれていなければ私の命も怪しかったわ――これが高額なのはわかるのよ、でも私の命の代金だと思えば足りないのよ」

 それでも一日の護衛代金にしても多すぎるというと、ティアはこう続けた。


「なら、半金貨はこの訓練も含めた授業料、これからもお邪魔していいでしょ? 残りはそうね、施設を利用させてもらうのだから、孤児院へと寄付するわ、私たちのような立場の家が孤児院に寄付するのは云わば義務よ?」

 こう告げられてしまうと何とも断りきれない。それに、ティアと話すのは今までに無く――楽しかった。



「――という事なんだ」

「いや、うーむ、間違いでも無いが」

 実際、貴族が孤児院などに寄付するのは問題は無い……

 だが、相手が王女となるとどうか。普通ならばありがたい話だし、特に今回はまだ問題は無いだろう、王女が個人的に行った事だからだ。だが、存在しない組織としては王族が近づく事は本当ならば好ましくない。


 現在のシュラン孤児院は主家に恩のあった一部の貴族の秘密の援助で成り立っていた。勿論レノの存在など明かされていない。それはレノにジークが全てを話した後にどう決断するかに影響を与えるだろうからだ。

 故に言い淀むジークだが、再度冷静に判断する。


 ――これも運命、レノが彼女に惹かれるのも宿命なのかもしれないと。


「まあ、頂けるならば在り難く頂くがな、レノ、いえレノ様」

 口調を変えると言う事は“裏”の話である。こんな事では恐らく何も変わらないだろうが、知るべき内容だけは告げた。例え真実を知る前であろうが、知っておくべきだからだ。


「レノ様と一緒に居られたのはティアナフィア王女殿下です」

 普通にあの人はこういう立場ですからね、と執事が主人へと知らせるだけのように、ティアの正体は伝えられた。

「そうか、王――はあ? 王女」

 ふむふむと事実はそう簡単に信じられなかったようだ。確かに普通よりも()()ていたが。


「ええ、本物の王女殿下ですな」


 そう重ねて言われても、ティアはレノからすれば世間知らずの貴族の子女程度の認識だった。と言えど王女がアレかという扱いに変わっただけなのだが。


「ク、プフッ、アハハハハ――」

 駄目だった、今日一日の遣り取りを思い出し余りの酷さと、そして楽しさを思い返すと笑わずに居られなかった。

「私が言うのもなんだが、アレで王女プフ、ククク、いやぁ、この国の未来は明るくて問題なさそうだよね」


「現在の王も中々の人物ですから」

「うん、確かにね」

 不敬罪でも問われるように評するが、ティアの父親は善政をしいている。ただこうして評していたとしてもジークの評とレノのそれは違ったものだが。



 結局その後、レノは一切態度を変えないでティアに接する事になる。そしてティアも一週間に一度は必ず孤児院へと訪れるようになるのだった。

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