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言霊の苑  作者: Mi9ro
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5/10

5つの言葉

「ほんとだって!!昨日クチナシが…」


興奮気味に話す女子たちが、登校してきた神代を目で追う。

トーンを落として続きを話し始める。


「昨日カバン奪ったのに、気づいたらカバン奪い返されて!!ほんと生気!!」

「気づいたらってどーゆーことw」

「気づいたらは気づいたらだよ!!」


キーン コーン カーン コーン


乾いたチャイムが少し暑くなった教室に響く。


席に着いた神代は右隣にいる九条を見るが、九条は昨日何事も無かったかのように前を見ていた。


「っべ!!セーフ!!」


滑り込みで教室に入ってきた長谷川はバタバタと九条の隣に座る。


「九条おはよ!朝練長引いたけどギリ間に合ったー」

「間に合ってはなかったぞ」

「チャイムの余韻があったからセーフだセーフ!!」


そんな会話をしていると先生がいつものように教室に入り朝のホームルームが始まる。


「はーいホームルーム始めるぞー」


ガヤガヤしてた教室が静かになる。


「えー昨日うちの生徒が校内の階段から落ちて、全治2ヶ月の怪我をしました。

最近階段での怪我が増えてるので、みなさんも足元を見て気をつけて昇り降りするように」


先生は休みの人がいないこと確認しホームルームが終わる。


「聞いた?階段で怪我だって」

「最近噂されてるおばけのせいじゃない?」


そんなよくあるような会話を九条は聞いていた。


「九条ー?おーい」


長谷川が九条の肩に手を置く。


「…?……ごめん、何か用か?」

「最初の授業移動だから、一緒に行こうぜ」

「あぁわかった。今準備する」


授業に使う教科書と筆記用具を持って、長谷川と九条は別の教室に向かう。

神代は女子の会話を聞きながら移動教室の準備をしていた。


「第2棟の階段で出るって噂だよね」

「そうそう!!「ナカマさん」って言うんだよ」

「名前ついてたのは初めて知った!」


ナカマさん。5ヶ月ほど前からどこからか出てきた噂。

第2棟の階段の踊り場にある鏡に映る真っ黒な人影。

それを見ると後ろから声をかけられる。

「仲間に入れて」と。

嫌だと答えれば階段から突き落とされるが、いいよと言えば鏡に中に連れていかれるという。

どこの学校にもありそうな、そんな噂。


女子も男子も噂の話をしながら教室を出ていく。

神代もひとり、教室を出た。


―――――――――


1時間目の美術はパステルで絵を描くこと。

クラスメイトが雑談しながらて手を動かす中、神代と九条は黙々と描いていた。


九条は鮮やかな桜の絵を、神代はどこか森に囲まれた村の絵を描く。


神代の絵を視線だけで覗いた九条は驚いた顔をして自分の付箋に文字を書き、神代のキャンパスに貼り付ける。

神代が付箋に目をやると


《なぜその絵を描いてるんだ》


と、書かれていた。

神代はその貼られた付箋の下に付け加えて九条に返す。


《懐かしい感じがして》


その言葉に九条は目を細めた。


―――――――――


授業が終わり帰りのホームルームが終わるといつものようにそれぞれが部活に向かう。


「そういえば九条って部活しねーの?」


せかせかと身支度をしながら長谷川が質問する。


「俺は家が忙しくて部活できないんだ」

「そっかー。一緒にサッカーしたかったのに」

「樹はサッカー部なんだな」

「おーよ!!まぁ気になったら顔出せよ!いつでも大歓迎だからよ!」


用意が終わった長谷川はニカっと笑う。


「わかった。ありがとう」

「じゃっ俺は行ってくるぜー!また明日な〜」

「また明日、頑張れよ」


走って出て行く長谷川を見送ると逆の隣の席を見る。

そこに神代はいなかった。


―――――――――


風が吹く屋上で神代はベンチに座っていた。


「遅くなってすまない」


声を聞いた神代はノートに一言文字を書く。


《大丈夫》


一瞬見せたかと思うと続きを書き始め、できた文をまた見せる。


《早速だけど、昨日の質問まとめたから答えて》


九条が了承すると神代は夜に書いた紙を九条に渡す。


・怪異って何?


「怪異は幅が広い呼び方なんだ。幽霊とか、都市伝説、俺らは妖怪みたいなものも怪異と呼んでいる」


うんうんと首を縦に振る神代。


「まぁ簡単に言ったら、この世ならざるものや現象を怪異と呼んでる感じだ」

《わかった》


納得したような神代の反応を見て九条は続きに目をやる。


・何で私はこんな体質なの?


九条は一息置く。


「体質の原因は生まれつき。としか言いようがないが、その体質が何かはある程度分かるが知りたいか?」


神代は気を引き締めて首を縦に振る。


「君の言葉は言霊が強すぎる。

言霊は言葉に宿る力、エネルギーみたいなものだ。

それが強すぎるがあまり、言った言葉が具現化してしまう。」


神代は目を伏せ自分の予想が当たっていたことを悔やむような顔をする。


「いいことも悪いことも具現化してしまうだろう。

話したいことも沢山あるだろうに。」


九条は神代の頭に手を乗せ、優しく撫でる。

頭に乗せられた手に驚き、神代は目を見開く。



「辛かったな。」



その言葉を聞いた瞬間大粒の涙が神代の目からこぼれ落ちた。

声もなく静かに泣く姿を見て九条の心は締め付けられた。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございます!!


次回以降、毎週金曜日17時に投稿させていただきます

のんびりと投稿しますので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです!

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