10の言葉
「そのために俺がいる」
下を向いていた神代の目が大きく見開き、微笑みかける九条を映した。
《私名前を言ってもいいのかな?》
「言ってはいけないと、誰に言われた?」
「...!!」
固く閉じていた神代の口がゆっくりと開く。
「ありがとう。九条くん」
心地のいい風が2人の間をすり抜け、青空に向かって流れていった。
―――――――――
「神代さーん!!大丈夫だった?」
明るい声でバタバタと放課後の教室に入ってきたのは橘だった。
「いや〜まさかハグしただけで倒れちゃうと思わなくて〜」
ごめんねと手でポーズしながら頭を下げる橘を前に、神代が困ったように挙動不審になっているのを見て荷物をまとめ終えた長谷川が申し訳なさそうに声をかける。
「うちの橘が迷惑かけてごめんな!!」
《大丈夫。たちばなさんじゃなくて私が悪いの》
「あー!!」
何か思い出したかのように橘が叫ぶと、神代の持っていたノートとペンを取って書くと神代に見せる。
《橘 琴葉》
「私、橘琴葉!!琴葉って呼んで!」
ニッと明るく笑う橘を見て『友達』という存在を再認識させられた神代は優しく微笑みながら口を開ける。
「わ、私神代紡!!琴葉ちゃん、よろし......」
言い終える前に神代の前に立つ橘と長谷川の驚いた表情を見て急に恥ずかしくなり
橘の持っていたノートとペンを一瞬で取り返し文字を描き見せる。
《よろしく!!それだけです》
文字を見た2人が少し間を開けて「えええええ!!」っと声を合わせて驚いた。
「つむちゃん声!!声!!」
「俺初めて聞いたわ...」
恥ずかしがる神代に興奮した橘が話しかけ、長谷川も驚いた様子でいる光景を九条が微笑ましく見守る。
その様子を同じ教室の女子だけがよく思っていないことに4人はまだ気づかなかった。
―――――――――
「私こっちだけどつむちゃんは?」
《私こっち》
「そっかー、ここでバイバイかー
つむちゃんまた明日ね〜」
大きく手を振る橘とは逆に顔の下で小さく手を振る神代は、前に向き直り人通りのない道を歩き始めた。
見慣れた住宅街を歩いている途中、神代は今日あった出来事を振り返っていた。
琴葉という友達ができたこと、九条が言葉を発してもいいと言ってくれたこと、膝枕されたこと。
思い出し顔が赤くなると早足で帰路についた。
家に帰った神代をいつものように祖母が迎え入れる。
「おかえり〜今日は...」
「ただいま、おばあちゃん」
「.........!!!」
手を拭いてたタオル床に落として神代の肩に手を起きながら、まるで初めて子供が喋った時のように驚く。
「つむちゃん、今...」
《これだけなら、話せる。これからもきっと。》
その文を見て涙ぐむ祖母を優しく受け止めると、神代は優しく包み込んだ。
その様子を開いたままの玄関の外で見ていた九条がいた。
九条は神代家に近づいてきた黒い人影に手を添えて呪文のような言葉を放つと、人影は塵になり消えていく。
黒い人影を消し終えた九条は、音もなくその場を後にするのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!!
この回は神代が沢山話す回だったので、私自身も違和感がありつつ楽しかったです!
今後も趣味の1つとして続きを書いていきますのでよろしくお願いします!!




