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幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜  作者: 織子
第二章

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第41話ーロワナの療養


翌日からカスティヤ王家と連携をとり、出来る限りの人数を動員し王都内のイデアルの雫を探し撤去した。ネルサンが表だって街の人に声をかけてくれたので、撤去は三日で完了した。


「ここには野生で生えることはないだろうし、今回の件でかなり知れ渡ったから、新たに見つけたら報告が来る」

ネルサンの言葉をベッドの上で聞き、ロワナは安堵した。


(良かった。これでもうカスティヤで疫病とスタンピードが起こることはないわ……)


「ところで…本当に怪我をしてる訳ではないんですよね?」

「ええ」

ロワナは頷いたが、ネルサンは納得していないようだ。ロワナだって心苦しい。矢傷を負ったネルサンでさえ、街へ行き手伝っていると言うのに、擦り傷しかしてないロワナはベッドから出ることを禁じられているのだから。


「本当に大丈夫よ。今日一日、ベッドにいさえすれば明日からは好きに動いて良いと言われてるの」

「医者に?」

「いいえ。ノクティスに」


それを聞き、ネルサンは納得した。

「なるほど。では私がここに長居をしてはさらに機嫌を損ねそうですね」

「えっ」


立ち上がるネルサンに、ロワナはがっかりした。今日は皆忙しく、部屋にメイドはいるが、カスティヤ城のメイドなので親しくはない。ロワナはほとんど1人でベッドで留守番をしているのだ。


「もう少し居ても良いんじゃないかしら?ネルサンこそ休養が必要よ」

「いや、公爵を怒らせたくないし……」


渋るネルサンの裾を掴みを引き留めていると、扉を叩く音がした。


扉が開き、不機嫌そうな顔をしたノクティスが入って来た。入るなり、ノクティスはまた口角だけを上げて言った。


「――殿下、暇つぶしなら私が付き合いましょう」


(機嫌が悪い時に笑わないでと、前も言ったのに)


大股でこちらに向かってくるノクティスの視線に気づき、ロワナはそっと手を離す。なぜだか少し冷や汗が出る。


(いえ、やましい事なんてないのだけれど)



「公爵が来てくださったので私は不要ですね」


ネルサンはそう言って素早く部屋を出て行った。



ネルサンが出ていくと、ノクティスはベッドの脇の椅子に腰かけた。いつもよりも少し低めの声でロワナに言った。


「姫、ネルサン殿下と距離が近くないですか」

「えっ。そうかしら……昔の友人に会えるのが嬉しくて……」


じろりと赤銅色の瞳がロワナを射る。


(あ…)

「そうね。ネルサンも私も立場があるし、気を付けるわ」

「……そうではありません」

ノクティスの表情が怒りから呆れに変わる。


「シンプルに考えてください。……嫉妬してるんです」

「そう…し…っと?」


思わず声が裏返る。ノクティスにまた睨まれた。今は怒りでというより、照れて睨んでいるように見える。

「何を驚いているんですか。当然でしょう。私は貴女の婚約者ですよ」


「うっ」

ノクティスの拗ねたような物言いに、ロワナは思わず胸を押さえる。

(可愛い)


本当に心配しているノクティスには申し訳ないが、ロワナとネルサンの間にそのような感情は一切ない。


(でも、そうよね。私だって……ノクスが友人とはいえ、異性との距離が近かったら嫌だわ)


ロワナは自身の態度を恥じた。そして真摯に言った。


「ごめんなさい。もうしないわ。でもノクティス。私とネルサンはそう言うのじゃないからね」


反省と、否定も入れておいた。不服そうな顔のノクティスが呟く。


今世(いま)ではそうでしょうが……」

「え?」


消え入るような声だったので聞き返した。ノクティスは首を振る。


「いえ。姫も大変ですね。婚約者が狭量な男で」


自虐か冗談か。他人事のように言うノクティスの言葉を、ロワナは笑って否定した。


「いいのよ。婚約者の嫉妬なんて、愛しさしか感じないわ」


ノクティスが目を見開く。


「はあ……」

ため息とともに項垂れた。

「貴方と言う人は……」


ノクティスはしばらく下を向いたまま動かなくなった。






「では、結婚式は延期にならないの?」

「はい」


数日大人しくしていたロワナは、ベッドから出て、お茶を飲むことを許された。場所は部屋のバルコニーのテーブルを希望した。三日間部屋に籠っていたのだ。外の空気が吸いたい。


「カスティヤの兵力ではガルシアには敵いません。今回の件で、ガルシアは手を引くでしょうが……。アリアナ殿下が正式に王太子妃になれば、二国で同時に攻める事が出来ますから。ガルシアもそれは望んでいないでしょう」


(延期するより、結婚式をして他国にも認知させる方が良いと言うことね……)


カスティヤを脅かすのは、アルカダイアに喧嘩を売るも同義な事。他国への牽制にもなるのだろう。


「結婚式は予定通りだと五日後よね?兄さま達も間に合うのかしら?」

「ええ。明日、明後日には到着されるでしょう……さて、姫」

「ん?」

ロワナは紅茶のクッキーを口に運んだ。パキリと小気味よい音が鳴り、クッキーは割れた。その様子を愛おしそうな瞳でノクティスが眺める。


「数日間、退屈な中、大人しく療養されましたね?」

「……!ええ」

ロワナは大きく頷いた。


「では明日は朝から街へ出かけましょう。行きたいお店を考えておいてください」

「……!もう十か所は考えているわ」


ロワナの勢いにノクティスが笑う。


「一日で回るのは難しそうですね」










読んでいただきありがとうございます。


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