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幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜【第二章スタート】  作者: 織子
第二章

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第37話ー窮地


「出口に人は送ってありますか?」

回廊を進みながらロワナは小声で言った。湖の下に位置する回廊は思ったより広く、歩きやすいが音が響く。足音にも気をつけながら進む。


「ええ。兄が騎士と侍従を送りました。ただ、正門の方に多く人員を割いたので、相手が手練れだと止められないかもしれません」

ネルサンは注意深く辺りを見渡している。少し進むと別れ道があった。素早く指示を出す。

「左に二人、右に四人進め。右は少し行くと更に2つに別れている」


(すごい。こんな入り組んだ道を隅々まで覚えているのね)


小一時間、足早に進んだ。ライネルや騎士たちはそうでもないが、ロワナは額に汗が流れるのを感じた。

(やっぱり最近鍛錬を怠っていたわ)


再び別れ道。ここに来るまで何度もあった。都度、騎士達を別れ道に進ませたので、先に進む一行は今やロワナとネルサンとライネルを入れて6人だ。ネルサンは左手で合図をして立ち止まった。


ネルサンが何か拾ったようだ。

「これは‥‥?」

ロワナもみると、青い花の花弁だった。

「イデアルの雫‥‥城内にも植えていたんだわ」


ネルサンは思案しながら言った。

「もう少しで出口です。イデアルの雫を植えた者たちか、アリアナ殿下を攫ったものたちか分かりませんが、ここを通ったようですね。もう地上に出ている可能性もある」

「急ぎましょう」

ロワナが言うと、ネルサンは後ろの三人の騎士を見た。

「ここが最期の別れ道だ。少し進むと三方向に別れている。ここには仕掛けがあるから、壁には触れないように進め」


騎士達は頷き、別れ道に入って行った。


「我々は進みましょう」




出口の階段が視界に入った。階段の先には日の光が入り、よく見たら新しい靴跡がある。


「何者かが通ってますね。騎士団の合流を待った方がいいかもしれません」

ネルサンが言うと、ロワナは首を振った。

「いえ、もし姉さまを連れているなら仲間と合流したらすぐに去るでしょう。後が追えなくなります。出ましょう」


ネルサンが迷っていると、ライネルが口を開いた。

「私が一番に出ます。異常を感じたらすぐに扉を閉めてください」 


三人は目を合わせて頷く。



扉まで近付くと、話し声が聞こえた。扉の前に陣取って座っている。


「ふう。やっと出られたな。しかしこの女は誰なんだ?」

「分からん。花を植えているのを見られたからとりあえず連れてきたが‥‥」


(姉さまだ)

アリアナは土いじりをするため、簡素な衣装を着ていたのだろう。未来の王太子妃とは気付いていない。声を聞く限り、二人組のようだ。


「とりあえずあいつらと合流しよう。もうこんな依頼受けるなよ」


(二人なら制圧できる。合流する前に‥‥)

ライネルに視線を送ると、ライネルも同じ考えらしく頷く。

ネルサンも渋々頷いた。


ライネルが扉を勢いよく開いた。一人の男は盛大に頭を打ち尻もちを付く。

もう一人の男は慌てながら持っていたナイフを構えた。


(構えている手が震えている)

あきらかな素人だ。


「なっ、なんだぁお前ら!」

ナイフを持った男は闇雲に振り回した。ライネルが鋭い手刀を手首に当てると、男はナイフを落として手首を握りしめた。

ロワナの横にいるネルサンに気付くと、サッと顔が青ざめた。

「そ、その顔、ネルサン殿下?」

もう一人の男も慌てて跪く。

「うっ、お、お助けください!我々は何も知りません」


(こんな雇われ傭兵みたいな奴らが二人で城内に侵入したの?)

だとしたらなんて杜撰な警備なのか。――いや、そんなことありえない。

思案しているとネルサンの呟きが聞こえた。


「兄上の送った騎士はどこだ‥?」


サッと何かが風を切る音が聞こえた。ロワナは反応したものの、身体までは動かない。

「ふせて!」

ネルサンが咄嗟にロワナの身体を庇った。途端、血しぶきが上がる。


「ネルサン!!」

ネルサンの肩に矢が刺さっている。ロワナは血の気が引いた。――回帰してから、弓には触れていない。どうしても思い出してしまうからだ。自身に深く刺さった感触を。


「殿下、大丈夫です。急所ではありません」

ネルサンは少し顔を歪めて辺りを警戒した。


(姉さまは?)

ロワナは震える身体を握りしめ、姉の姿を探した。


「ロワナ殿下!扉の中へ!」

ライネルが叫んだが、遅かったようだ。扉の近くに寝かされていたアリアナに、刃物を当てている男が居た。


(いつの間にこんなに近くに)

気付かなかった。ネルサンの表情を見ても同じだった。相当な手練れだ。


「動かないでくれよ。我々をそこの雇われと同じように考えるな。一歩でも動けば、王太子妃は無傷で返せない。まぁ、依頼主が王太子妃を返すつもりかは知らないが」

男がそう言うと、奥から更に二人出て来た。どこかに弓矢を構えた者もいるはずだ。


(少なくても4人‥‥)


男は首を傾げた。

「うーん、そこの女は誰だ?ターゲットと似ているが姉妹か?こちらの女で合ってると思うが、面倒だがどちらも連れていくか‥‥」  


ネルサンが左手で剣を構える。ロワナも構えた。手が震える。

(弓を見たくらいで何なの!射られたのはネルサンよ!私じゃない)

震える手に力をいれる。


敵の居場所が分からないままではライネルも動けない。



男は軽快に嘲笑った。



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