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幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜【第二章スタート】  作者: 織子
第二章

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第36話ーアリアナの行方②


「ライネル卿、お兄様とノクティスは西部にいるのよね?」

「はい。私がこちらに発ってすぐ、閣下も皇太子殿下と合流される予定でしたので」


(騎士を送ってほしいけど、西部からだと馬で休まず走って丸二日かかる。それでは遅いわ)


アリアナを捜索するのに人員が足りない。ロワナの部下は二十人しか連れて来ていない。ロワナは悔やんだ。

(もっと大勢連れてくれば良かった)



「ライネル卿、今動かせる騎士はどれくらいいますか?」

ロワナの問いに、ライネルは思案した。暗部の部下も入れるか迷ったのだろう。ヴァルグレイスの暗部の存在は公にはしておらず、知っているのはノクティスだけだ。

「五十ほど」

ライネルが迷ったのは一瞬だった。


(暗部も人数に入れてくれたのね)

ロワナは感謝した。



◇◇


「アスラン殿下!」

騎士達に指示を出していたアスランは振り向く。表情には余裕がなかった。


「何だ?」

「湖側の入り口を教えてください。おそらく姉さまを拉致した奴らは、目立つので橋は使わないでしょう」

「待て。私も行く」

そう言うとアスランは近くにいた騎士から剣を受け取った。足早に階段を降りて行く。ロワナとライネルはアスランに続いた。



駆けながらロワナはアスランに聞いた。

「殿下も行くのですか?指示をされていた方が‥‥」

「6年だ」

アスランはロワナの言葉を遮るように言う。

「はい?」

「私がアリアナに好意を寄せるようになり、陛下からの婚姻の許可が降りるまで6年かかった」 


なんと。それは初耳だ。

「ガルシアの奴ら‥‥絶対許さん」

アスラン王太子の殺意の孕んだ呟きを聞き、ロワナは少し安心した。


(カスティヤに嫁げば姉さまは大事にしてもらえそうね)

しかし今はそれどころではない。


「アスラン殿下、湖側の入り口は何箇所ありますか?」

「なに?」

「ネルサン殿下は一箇所と言われていましたが、そんな訳ないですよね?」

こんな大きな城の地下からの入り口が一箇所な訳はない。王族を逃がす秘密ルートも合わせると、少なくとも三箇所はありそうだが。


アスランは少し思案して言った。

「王族専用を外せば三箇所ある。騎士隊長は知っているから手分けして行こう」




地下まで降りて行き、ロワナが入城した船つき場に付いた。

「これから奥は公にしていない出入り口がある。廊下も入組んでいて迷い易い。一つのルートは、地下を歩いて地上に出るルートだ。この湖は思いのほか、深くないからな。だがこのルートが一番迷い易い。私がそこへ行くから‥‥」

アスランは騎士達を見渡した。道を知っている部隊長クラスの騎士は数人いる。

「いえ、殿下は王族用のルートを念のため見てきてください!そこは私が」

ロワナは声をあげた。

万が一にでもそのルートで逃げられてしまっては後が追えない。


アスランは眉根を寄せた。

「む、しかし‥‥」


「私が地上へのルートに向かいます!」

後ろから走ってきたネルサンが叫んだ。


「ネルサン!お前、花の処分は?」

アスランが声を上げる。

「引き継いで来ました。今はこちらの方が大事でしょう」

肩で息を整えるネルサンと目が合う。最期に見た決意の籠もった瞳と重なった。


「分かった!では残りの道は第三騎士団に任す!行くぞ!」 

アスランの号令でそれぞれの入り口へ走った。



 ◇◇


ネルサンに続き、ロワナとライネルは走っている。後ろに騎士達が続く。


「先程は驚きました」 

ネルサンは視線を前に向けてロワナに向かって言った。


「ああ、ドレスの事かしら?私のドレスはほとんどが()()なの」


()()とは、皆が散り散りになってすぐ、ロワナは動きにくいドレスのスカート部分を切り離したからだ。


ロワナのドレスはほとんどが特注で、同じデザイナーが作っている。スカート部分と上衣が切り離せるようになっており、都度上衣に合うズボンを履いている。ファスナーで外せる仕様になっているものもあれば、特注の金具だったり、ボタンの場合もある。


回帰前に王宮にアルカダイアが攻め入った時、動きにくいドレスに辟易したのだ。もうあんな事は起こらないとはいえ、身に染み込んだ感覚は消えなかった。切り離せるドレスを作ってくれたデザイナーと出会ってからは、これを着ていないと逆にストレスになるほどだ。


そういう訳でロワナは颯爽とネルサンの後に続いていた。


地下回廊の入り口まで来ると、ネルサンは言った。


「いくつか別れ道があります。アリアナ殿下を連れ去った者たちも道に迷っている可能性もあるので、別れ道ごとに騎士を送りながら行きましょう」


ロワナは頷いた。

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