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幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜【第二章スタート】  作者: 織子
第二章

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第27話ーロワナのおねだり


アリアナの誕生日パーティーから三日後、皇城ではカスティヤから訪れたアリアナの婚約者、カスティヤの王太子アスラン・カスティヤと、弟のネルサン・カスティヤ。更に妹のサラサ・カスティヤを招待し、親睦を兼ねた晩餐会を開いた。


オーガストの婚約者であるレイチェル・サザーランド侯爵令嬢と、もちろんノクティスも参加している。


ロワナがアスラン・カスティヤと会うのはこの日が初めてだ。誕生日パーティーの日も、アスラン・カスティヤは遅れて来たので挨拶が出来ずじまいだった。


(この方がカスティヤの王太子。姉様の結婚相手。回帰前には会わなかった人だわ。どんな方なのかしら)


焦げ茶色の髪に、ネルサンと同じ栗色の瞳。どこか人懐っこさを感じる。アリアナとの様子を見ていると、悪い人ではなさそうだが、アリアナに相応しいかどうかは話が別だ。じっと見ていると、ロワナの視線に気付いたアスランはアリアナに耳打ちをした。

ふふっと微笑ってアリアナが言った。

「ロワナ。そう睨まないの。アスラン殿下が、ロワナに嫌われているのではと心配されているわ」

「えっ」


慌てて視線を逸らす。

にやりと微笑ってオーガストが言った。

「睨みたくもなるさ。大好きな姉が遠くへ嫁ぐというのに」

「兄様!」

ロワナはからかうオーガストを睨んだ。 


「申し訳ありません、アスラン殿下。そういう意図はなく···」

アスラン・カスティヤに弁明をする。  


「大丈夫ですよ。ロワナ様。聞き及んでおりましたが、アルカダイア皇室の兄弟仲はとてもよろしいのですね」

アスランは微笑みながら言った。


にやにやとオーガストが更に言った。

「ロワナ。もっと睨んでいいんだぞ」


オーガストの悪ふざけをどうしたものか。ロワナとて他国の王族の前で声を荒げたくはない。隣に座っていたノクティスが口を開く。

「このように皇太子殿下は、妹君の婚約者である我々を執拗にからかうのです。お気をつけください」


ノクティスが場を和ませたところで、廊下が少し騒がしくなった。ガチャリと扉が開く。


「遅れてすまないな」

皇帝は入ってくるなり、立ち上がろうとしたアスランを手で制した。

「挨拶はいい。食事を続けなさい」


皇帝の表情が少し硬い。オーガストも気付いたようで、ロワナをからかうのを止めて皇帝に向き直る。

「陛下、顔色が悪いようですが、何かありましたか?」


皇帝は言いにくそうに口を開いた。

「うむ、西部地域で小競り合いが起きている。オーガスト、すまないがアリアナと同じ時期に発つのは無理そうだ」

オーガストは眉を寄せた。

「西部ですか···確かに今の時期に放っておくのは得策ではありませんね···うーん、となると」

オーガストはロワナを見た。

「ロワナ、お兄様は一緒に行けそうにない。アリアナは式の準備や王宮に慣れる為に忙しいと思うし、日程を変更してお兄様と式の前に出発しないか?」


「いいえ!」


ロワナはすぐさま返事をした。

「お姉様と一緒に出発します!1人でも大丈夫です!カスティヤの観光もしたいですし」

何より1人の方が動き易い。調べたい事がたくさんあるのだ。

「うーん···」

オーガストは言葉を濁した。

「私も1人で動くとなると心配だ」

皇帝がオーガストの味方をする。まずい。ノクティスがこの件で味方をしてくれるはずがないし、自分でなんとかしなければ。

「お兄様、私カスティヤの観光を本当に楽しみにしてたのよ。アルカダイアには海がないでしょう?カスティヤの海で遊んだり、海産物を食べたり、とても式の日程だけじゃ足りないわ!」

ロワナはオーガストの袖を掴み、上目遣いでお願いした。ロワナが知る限り、今世のオーガストがこれで落ちなかった試しはない。

「それもそうだけど···」

(もう少しだわ!)

「1人と言っても、エリシャも護衛もたくさん連れて動くから」

まだ「うん」と言わないオーガストに、藁にも縋る思いでノクティスに視線を向けた。

ノクティスは目が合うと、「仕方ないですね」と言うようにため息を吐いた。

「私からもヴァルグレイスの騎士をロワナ殿下に付けましょう。それでも心配ならば、ヴァルグレイスの私兵の騎士団も付けます」

(そ、それはやり過ぎかな)

観光に騎士団を引き連れて行ける訳ないじゃないか。ノクティスは本気の目をしている。騎士団の件は後で阻止しなければ。


「仕方ないな。なるべく早くかたをつけて私も向かうから、危ない事はしてはいけないよ」

オーガストの言葉を聞き、ロワナはオーガストに抱きついた。

「ありがとうお兄様!」

でれっと顔を崩すオーガストをノクティスが冷ややかな顔で見ている。小声で耳元で囁く。

「ノクスもありがとう」


ノクティスは微笑った。

「いえ。私に姫様を止められる訳がありませんか」



話に混じれなかったカスティヤの兄妹が、ホッとしたように口を開く。

サラサ王女が言う。

「良かったですね。ロワナ様。わたくしのおすすめのケーキ屋さんに一緒に行きましょう」

「ええぜひ」

ロワナは嬉しくてにっこり微笑う。

ネルサンも声を上げた。

「私も出来る限りロワナ殿下の護衛を務めます。おすすめの魚料理のお店も知ってますので、ご案内致します」

「ええぜひ」


これにはオーガストとノクティスが顔を歪めたが、ロワナは気付かなかった。


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