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幸せな10年でしたが、なかったことに致します。〜だから私に関わらないでください〜【第二章スタート】  作者: 織子
第二章

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第25話ー皇太子の呼び出し


『いつでも来ていい』なんて危険な事を。自慢の忍耐力でなんとか耐えて額へのキスだけで済ます。


ノクティスは寝ているロワナの髪を掬った。久しぶりに出た夜会。何度も夫人達を撒こうとしたが撒けなかった。部下に聞けば、それが原因でロワナはお酒を飲んだと聞いた。


「――はぁ」

嫉妬したのか?可愛すぎる。


(全く。怒るに怒れないじゃないか)

しかし次からは同じ事がないようにしなければ。あってはならない。自分がいない所でロワナが酩酊するなんて危なすぎる。今回も相当危なかった。シオンがいなければどうなっていた事か。


「ネルサン・カスティヤか····」

回帰前のロワナの王妃時代。知らない事が多すぎる。自分以外の妻であったこと、自分が無力だった証。出来れば避けていたいがそういう訳にはいかない。

(あの藍色の髪、見覚えがある)

回帰前、ロワナの死後。アデラジャ城で喚いた奴がいた。一番暴れていたのは自分だが。牢の中から見えた奴の髪色が、ネルサンと同じ物だった。


(つまり、姫が殺された事で暴れて投獄されたのか?隣国の第二王子が?それはどう考えても···)


「閣下」

暗闇から声がする。

「何だ」

「皇太子殿下がお呼びです」

「·····分かった。行こう」

早いな。本当に。妹の事になると。

回帰前と別人のようで、だが本人であることには違いない。どこかで間違えれば、同じ事が起こる可能性がある。


名残惜しいので、掬った髪にもキスをする。


ノクティスは扉ではなく、侵入者同様、ロワナの部屋の窓から飛び降りた。



◇◇


「皇太子殿下、お呼びでしょうか」

「入れ」


入室してすぐに気付くほど、オーガストは不機嫌だ。


「用意した部屋にいなかったようだが、どこに行っていたんだ?」

口元は微笑っているが、目が全く微笑っていない。この男に殺意の様なものを向けられると、左目が疼く。


「眠れませんでしたので、少し散歩を」

「ふむ。皇女宮によからぬ輩が忍びこんでいると聞いた。警備をもっと強化した方が良さそうだな?」

「それはあってはならないことです。もちろん強化なさってください」

シレッと言ったので、オーガストのこめかみが少し痙攣している。分かっているのなら言わなければいいのに。


オーガストは短く息を吐いた。

「――はぁ。まあいい。今日の事は聞いただろう?カスティヤの第二王子の件だ。お前はあの二人に面識があると思うか?」

「····いいえ」

「そうだろう?カスティヤの第二王子がアルカダイアへ来るのは初めてだし、ロワナは国内から出たことがない」

「その通りです」


オーガストのオッドアイがノクティスを睨む。

「····ふん。お前とロワナには昔から何かあると思っていたが。この件に対しお前が淡々と答えると言うことは、思い当たる節があるということか」

「······」


オーガストが無言で睨む。ノクティスは居心地の悪さを感じた。想い人の兄と言うのは、なんとも扱いが難しい。オーガストがずいっと前に出て口を開いた。


「気に食わないな」

「は?」

「お前が知っているのに、兄の私が知らない事などあってはならんだろう。吐け」

「無茶言わないでください」

オーガストの子供の様な物言いに、呆れるしか出来ない。気心が知れているとはいえ、ノクティスの前で威厳をなくしすぎではないだろうか。


「それともロワナに聞いた方がいいのか?」

「ロワナ殿下がお困りになるだけですから、おやめください」


納得いかない顔をしているオーガストだが、ロワナを問い詰める事はしないだろう。

兄の嫉妬を一身に受けながらノクティスは言った。

「ロワナ殿下も酔われていたようですし」

「そのような言葉でごまかせるとでも?シオンの報告によれば、ロワナがだいぶ親しげに声をかけたと聞いたぞ」


ピキッと眉間に力が入る。

(親しげだと?)

ふつふつと怒りが込み上げる。その場にいなかった自分を呪う。

「ふっ。余裕に感じていると足元を掬われるぞ」

煽られているのは分かっている。舌打ちをしてオーガストを睨む。

余裕のなくなったノクティスを見て、オーガストは少し気が晴れたのか声色を変えた。

「ネルサン・カスティヤをどう思う」

「まだ何とも言えません」

 

オーガストはにやにやと言った。

「早急に調べ尽くす事だな。ひと月後にはロワナは我々と一緒にカスティヤに発つ」


「···は?」

思いもよらない言葉に、一瞬固まる。

「ん?なんだ聞いていないか?ロワナはどうしてもアリアナの結婚式に出たいと言うから、ロワナも連れて行くことにしたぞ」

オーガストのニヤニヤが止まらない。水を得た魚のようだ。皇太子であることを忘れそうになる。

「まぁ大公は先一年多忙を極めているようだから、付いて来ることは叶わんだろう。土産を期待しておけ」


(全くこの男は···)

今世も前世も腹が立つ。まぁ回帰前は今と比ではなかったが。

ノクティスはため息と共に言った。

「御心遣い感謝致します。ご用は終わったようなので、私はこれで」


「ああ」


廊下へ出ると、ノクティスは大股で歩いた。


(何故失念していた?姫がアリアナ殿下の輿入れに付いて行く事など、考えればすぐにわかったはずだ)


浮かれていたのだ。ロワナとの婚約に。


ノクティスは背後にいるライネルに歩きながら言った。

「向こう半年の私のスケジュールと、カスティヤへの回路、ネルサン・カスティヤについても早急に調べろ」



読んでいただきありがとうございます。

第二章スタート、今日も何話か投稿します。

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