表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRPGをベースにしたAI管理RPG。クリア後に竜の力を手に入れ転生した俺。TRPGの知識で生き延びて必ず現実世界に帰って見せる!!  作者: 春の小川


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/10

第5話「宿とこれからの事」

“光の胎内”は、超巨大な大樹で構成されている。


その周囲にも、アメリカ杉を二回りも三回りも太くしたような巨木が立ち並び、

枝葉の間には家々が築かれ、森そのものが街となっていた。


木々の上にも小屋があり、枝から枝へといくつもの吊り橋が渡されている。


――なんてファンタジックなんだ。


これほどの大樹があるというのに、頭上からは柔らかな陽光が差し込んでいた。

まるで木そのものが光を生み出しているみたいだ。

“光の胎内”という名にふさわしく、魔法的な力が働いているのだろう。

日差しは暑すぎず、眩しすぎず、ちょうど心地いい。


「さっきからきょろきょろしてるけど、この街は初めてなの?」


「ええ、そうです。気候もよさそうだし、活気があっていい街ですね」


「……そうだね。でも、私が生前に訪れた頃と、あまり変わってないなぁ」


「それって、数十年前からってことですよね?」


「そうだよ。もし変わっていなければ――そこの角を曲がったところに、魔石や素材を専門に買い取ってくれるお店があるはずだよ」


たしかに、エルシナーデさんの言った通り、買い取り専門らしき店があった。

さすがに店主は代替わりしていたようだが、魔石と《キラー・ウッド》の木材を無事に買い取ってもらう。


結果、手に入ったのは250G。

もしゲーム内の金銭レートどおりなら、宿屋一泊が30G程度。

日本円に換算すると、1G=200円ほど。

つまり250G=約5万円ってところか。


数日の宿泊費なら何とかなるけど、装備や探索道具をそろえるとなると……ぜんぜん足りないな。


地面に数字を書きながら売上の内訳や今後の支度金を計算していると、エルシナーデさんがそれを覗き込んでくる。


そのとき――


ぐぅ~~……。


しまった、腹の虫が鳴った。

そういえば、この世界で目を覚ましてから何も食べていなかったな。

戦ったり、担いだりしてたから、そりゃ腹も減るか。


「ふふっ。動きづめだったから、しょうがないね。

宿でも取りに行こうか。料理も出してくれる、安くて冒険者に人気のところがあるんだよ。

“草笛亭”っていう宿屋なんだけど、今でも冒険者の話に出てくるから、きっと残ってるはずだ」


なんだかエルシナーデさん、張り切ってるな。

久しぶりに故郷へ帰ったときの自分みたいだ。

懐かしい場所を巡るあの感じ――わかるなぁ。


「あった、あった! わ~、全然変わってない!」


「へぇ……こじんまりとして、落ち着いた感じの宿ですね。俺、こういう雰囲気、好きですよ」


切り株をくり抜いたような造りで、外壁をツタや花々が覆っている。

まさに“森の宿”という言葉がぴったりだ。


「見た目も可愛いでしょ? 私のお気に入りの宿だったんだ。当時と変わってなくて、うれしいよ」


宿に入り、カウンターで手続きをしようとしたが――

字が読めない。

ペンを持ったまま固まっていると、エルシナーデさんが首を傾げる。


「ん? 君、もしかして読み書きできないの? さっき地面にいろいろ書いてたじゃない」


「いや……あれは俺の故郷の文字で。この世界の文字は、まだわからなくて」


「……そっか。じゃあ、私が読んであげるね。ええと……」


「《一泊20G(朝食込み)/昼食2G/夕食4G ※内容は日替わりです

 一週間利用:120G/一か月利用:550G/馬小屋:2G

 ※盗難などの被害に遭われても、当宿では一切の責任を負いかねます》――だってさ」


「……なるほど。馬小屋でも泊まれるんですね(泊まりたくないけど)」


「あはは。私が泊まってた頃は、こんなのなかったのになぁ」


彼女に読んでもらい、手持ちを考慮して一泊に決めようとしたそのとき――


「ちょっと兄ちゃん、いつまで眺めてんだい? もしかして字が読めないのか? 読み聞かせと代筆が必要だったら言ってくれよ!」


(あ、じゃあお願いします)――そう言おうとした瞬間。


「待って、アキラ! 読み書きできないなんて言っちゃダメ!

『ちょっと考えていただけです、大丈夫です』って答えて!」


(うわっ、びっくりした……なんか必死だな。ここは言うとおりにしておこう)


「よし、一泊でいいんだよね? 私が指でなぞるから、それに沿ってサインして」


俺が彼女の誘導でサインを書き終えると、宿主の旦那が20Gを受け取り、

木製の部屋番号が刻まれた鍵を手渡してくれた。


部屋に行く前に昼食をとることにした。

ギリギリ間に合ったようでよかった。


出されたのは、真っ黒な大きなパンと、ドロドロの豆のスープ。

見た目はちょっと“アレ”だけど、香ばしい匂いが食欲をそそる。


おそるおそるパンをかじってみる。


もぐもぐ。


もぐもぐもぐ。


――うん、おいしい!


フランスパンのような硬めの食感で、中には栗やアーモンドのようなものが練り込まれていて、噛むほどに味が出る。

スープも、豆を長時間煮込んだような濃厚さで、栄養もありそうだ。


「ねえ、おいしい?」


「はい。見た目の割に味はいいですね。噛み応えがあって腹持ちもよさそうです」


「ふふ、でしょ? ここは安くてお腹いっぱいになれる食事を出してくれるから、今でも冒険者に人気みたいなんだ」


空腹だったこともあり、パンもスープもあっという間に平らげてしまった。――その時だ。


「おっ、兄ちゃん! いい食べっぷりだな。こいつはサービスだ!」


そう言って店主は、ドカッと巨大な黒パンを俺の目の前に置いた。


「頂いちゃってもいいんですか?」


「おうよ! 兄ちゃん冒険者だろ? 冒険者は体が資本だ! がっつり食ってしっかり働きな!」


「ありがとうございます。お言葉に甘えます」


正直、まだ少し物足りなかった。普段ならこれだけで十分なはずなのに……。

体が変わったせいで、代謝まで違うのかな?



◆◆◆



食事を終え、部屋へ。

一人用の部屋には、藁を敷いた簡素なベッドがひとつ。


うーん、ワイルドだな。


「お腹も満たされたし、ようやく落ち着けるね」


「はい。エルシナーデさんがいなかったら、今ごろまだ素っ裸で街を門前払いにされていたでしょうね」


「……そのことなんだけど」


彼女が少し真剣な表情を見せる。


「君、最初に“この世界に飛んできた”とか“異世界転移”とか言ってたよね?」


「はい。(お、なんか真面目な話になりそうだな)」


「私はてっきり、君が何かに襲われて気が動転してるんだと思ってたんだ。

でも――君は最初から本当のことを話そうとしてたんだね?」


「えっ、信じてくれるんですか?」


「うん。拳から鉤爪を生やしたり、あんなに跳び回って戦う“武位”なんて見たことも聞いたこともない。

複数のモンスター相手に遅れを取らないし、それに“竜人魔法”という私の知らない加護も受けているようだし――信じるよ」


おおお……! エルシナーデさんに信じてもらえた!


「それに……私が“胎内”から出られたのも、きっとアキラの“特別な力”のおかげなんだと思う」


「またこうして、外の世界を見られるなんて……本当にありがとう、アキラ」


おおう……その言い方、ドキッとする……。


「ど、どど、どういたしまして!」


噛んだ。やばい、噛んだ。


「ははっ、急にどうしたの?」


「さて、それじゃあ私からの感謝の気持ちはここまで。今度はアキラが、最初に言いかけた話を聞かせて?」


「は、はい……」


ごほん、と咳払いをして、俺はこの世界が《真・ソード&マジックワールド》のゲーム世界かもしれないということを、ぼかしながら話した。


俺は“地球”“日本”という別の世界から来たこと。

この世界で、六属性に対応する各“胎内”のこと。

そして、最奥に潜む“胎主”と呼ばれる強力なモンスターを倒したこと。

最後に“竜王バハムート”と共に“大胎主”を討ち果たしたこと。


その後、竜王バハムートにより“竜人魔法”を授かり、“竜人”として転生したのではないかと考えていること。


そして、“光の胎内”の周囲が発展している今と違い、かつて俺が訪れたときには街など存在しなかったこと――。


最後に、俺は自分のいた世界に帰りたいと打ち明けた。


「……なるほどね。“異世界”に“大胎主の討伐”、そして“竜王バハムート”に“竜人魔法”、それに“発展した街並み”か」

「その話からすると…アキラが”大胎主”を討伐してから何百年いや、もしかしたら数千年は経っているかもね」


「数千年もですか!」

エルシナーデさんは静かに腕を組み、考え込むように続けた。


「私が学んだ歴史では、何百年も前の“胎内”は、世界に災いをもたらす存在だったんだ。

でも、いつからか状況は変わった。

“胎内”は人々に恵みをもたらす、母なる大地のような場所になったの。

モンスターは相変わらず棲んでいるけど、それ以上に得られる恩恵が大きいんだよ。

だから、”胎内”の周囲にはここと似たような街がいくつもあるよ」


「ふむふむ……ということは、やっぱり俺の知ってる世界の“胎内”というのは過去の時代ですね……。

確かに”胎内”の存在が変わってしまうほどの年月。それを考えると数百年から数千年経っていてもおかしくなさそうですね。

思うに俺は、バハムートの力で今の時代に転生したんでしょうね」


「その理由まではわかりませんけど。エルシナーデさんと出会えたこと、そして今の“胎内”――なにか関係がある気がします」


(この謎を解かないと、元の世界に帰る手がかりも掴めない気がする……)


「そうだね。私もアキラも、この世界では“特異な存在”なのかもしれない。

もしその謎を解けたら……私はようやく“解放”されて、アキラは元の世界に戻れるかもしれないね」


「……ですね。そのためにも、まずはこの世界で生きていかないと。

やっぱり、冒険者として稼ぐのが現実的ですかね」


「そうだね。今日の戦いを見た限り、1階層のモンスターには負けないと思う。

しばらくはそこを拠点に生活基盤を整えよう」


「そうなると、冒険者登録はしておかないとですね」


「うん。まずは登録して、その帰りに装備も見てまわろうよ」

第5話も読んで頂き有難うございます。

次回第6話は10月30日(木曜日)18:00の投稿を予定しています。


気に入って頂けましたらブックマークや評価、またご意見、ご感想も頂けますと創作活動の励みになります。

前作 「落ちこぼれ召喚士少女、召喚したのはターミネーターだった」もよろしければ是非ご一読下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ