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彼岸花の香り  作者: 桜鬼
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赤蔦の嫉妬 3




「ねぇ、ロゼリオ⋯⋯もう⋯⋯ほんとに、ムリ⋯⋯」




声にならない囁きは、甘い吐息に変わって天井へと溶けていく。

脚が、震えて動かない。いや、そもそもまともに立ち上がれてすらいない。

紗凪はシーツにくるまれたまま、ぼんやりと窓の外を見つめていた。



──もう、お昼すぎ。




「今日はもう、外には出られませんね。ふふ。もちろん、出しませんけど」




低く囁く声と共に、赤髪の男がベッドに寄り添う。

紗凪の頬にかかる髪を丁寧にかき上げ、指先でその熱を確かめるように触れる。




「だって昨夜、あなた⋯⋯あんなに可愛い声で、何度も──」


「だ、だめっ!! 言わないでぇぇぇ!」




紗凪は枕に顔を埋めた。ああ、身体中が熱い。

なのにロゼリオは、そんな反応すら愛おしいと言いたげに、微笑んで唇を寄せてくる。




「⋯⋯ご安心ください。今日は、何もしませんよ」


「ほんとに⋯⋯?」


「ええ。ただし、口だけは。たくさん、使います」


「⋯⋯ってやっぱり何かする気なんじゃないのぉ⋯⋯!!」




もはやまともに抗議する気力もなく、ぬくもりの中でただ甘く蕩けていく。

ロゼリオの指が、まるで花を撫でるように繊細に、優しく彼女の髪を梳く。




「あなたが、私だけを見てくれればいいんです。他の誰にも、笑わなくていい。目を合わせなくていい」


「ロゼリオ⋯⋯」


「私が、あなたを閉じ込めてしまいたくなるのは⋯⋯嫉妬深くて、独占欲が強すぎるせいなんでしょうか」




そう言って、彼は軽く紗凪の指にキスを落とす。

一輪の蔦がそっと手首に絡まり、まるで目に見えぬ誓いのように彼女を包んだ。




「でも⋯⋯それも全部、あなたが可愛いせいですよ」


「⋯⋯ズルい⋯⋯ほんとに、ズルい⋯⋯」




囁くように呟いた紗凪を、ロゼリオはぎゅうっと腕の中に閉じ込める。

胸の音が、彼女の鼓動と重なってひとつになる。




「しばらくこの部屋からは出られませんから⋯⋯覚悟してくださいね、紗凪さん」


「それ、もう昨日言ったよねぇ⋯⋯っ」


「ふふ。では繰り返します。“もう二度と、離しませんからね”」




天蓋の向こうに広がる、午後の光。

世界は静かで、甘く、どこまでもふたりだけのものだった──。




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