アルヴァの街ギルドにて
フォルス王国を発ってから数日。
紗凪とロゼリオは新たな土地、アルヴァの街に足を踏み入れていた。
活気ある市場、すれ違う多種多様な人々──そのどれもが異世界の彩りに満ちていた。
「さて、まずは恒例の⋯⋯ギルドですね」
ロゼリオが微笑みながら、ギルドの扉を押し開ける。
扉の向こうからは、賑やかな声と酒の匂いが溢れてきた。
「なんか、ここ⋯⋯前のギルドより賑やかじゃない?」
「冒険者たちが集まる時間帯ですから。
⋯⋯気をつけて、紗凪さん。変な視線を感じますよ?」
ロゼリオの瞳が一瞬鋭く光る。その視線に気圧されたのか、何人かの冒険者が視線を逸らす。
それでも、紗凪に向けられる好奇の視線は止まらない。
「なんか、恥ずかしい⋯⋯。
ねぇ、ロゼリオ。ちょっと離れ──」
「だめです」
ぴたりと寄り添い、ロゼリオの蔦がぬるりと紗凪の腰に巻きつく。その動きに紗凪は思わず肩をすくめた。
「⋯⋯! な、なにして⋯⋯」
「縄張り主張ですよ。これで無駄な虫が寄ってこないでしょう」
「も、もう⋯⋯」
受付の女性が慣れた笑みを浮かべながら、二人を出迎える。
「まぁまぁ⋯⋯お熱いことで。ロゼリオさん、紗凪さん、ギルド登録の更新ですね?」
「はい。あと、最近この周辺で『禍つ霧』の兆候がないか情報もいただけると」
仕事の打ち合わせが始まっても、蔦はまるで意思を持っているかのように紗凪の腰から離れない。
それどころか、時折こそりと肌を撫でるように動いて──
「ろ、ロゼリオ⋯⋯っ、集中できない⋯⋯」
「ええ、私も⋯⋯あなたから意識が逸れません」
耳元で囁かれた声に、紗凪は思わず身を震わせる。
冒険の始まりにふさわしくない、けれど確かな絆の証。
ギルドという公の場でも、ロゼリオの執着は変わらない。いや、むしろ日に日に強まっているようで──
「⋯⋯私、本当に大丈夫かな⋯⋯」
ふと漏れた紗凪の呟きに、ロゼリオは頬を寄せて笑った。
「大丈夫です。あなたは、私のものですから」
⋯⋯ギルドの空気が、妙に熱を帯びた気がした。




