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多分非モテ男の妄想世界に転生してしまった 〜【男1:女5】の自分が主人公ではない貞操逆転世界〜  作者: ながつき おつ


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第八十三話 お姫様抱っこ

作者のツイッターアカウントが何故か凍結され、復旧に手間取っているため別アカウントを作りました。

Twitter事情に詳しくないため、復旧できるかは不明。もとに戻らなかった場合、今後はこのアカウントを使っていきます。

復旧できた場合、このアカウントは使用しません。

一応一次避難用のサブアカウントのアカウントを置いときます。


貞操逆転 TS作家 ながつき おつ

@41obcd



 ぱんっぱんっ。


 二礼二拍手一礼。


「(今日もこの世界が崩壊しませんように)」


 気だるげの家に行った時もそうだが、どうも最近セクハラをされることが多くなってきた気がする。


 人によってはそのこと自体を「俺、モテてきたんじゃね?」なんて思い上がる人もいそうだが、俺はあまり喜ばしいことだとは思っていない。


 この世界じゃある程度男は自衛能力を求められるので、俺にも悪い部分はあるのだ。


 首輪の色や、この世界の男女比のせいにしたいところだが、俺の親友の不健康なんて全然セクハラされない。首輪だってあいつはグレー、つまり三人の妻持ちなのにだ。


 だから、やりようはいくらでもあるはず。


 ……でもなあ、俺ってある程度仲良くなった人には、何されても基本的に許しちゃうんだよなあ。


 実際、あんなことされても気だるげへの好感度は下がらなかった。なんなら、本心を晒してくれたのが嬉しくて、ちょい上がったくらいだもん。


 そんな俺向けの自衛方法、なんか考えなきゃなあ。今のところデコピンが第一候補だが、それだけだと少し弱い。ほんと、どうしたものか。


「うし、普通っ子、行こうか」


「うん」


 さあ、今日はどんな一日が待っているだろうか。



◆◆◆



 今日はバスケ部との合同基礎練習だ。


 バスケ部は比較的仲の良い人が多い。俺のクラスメイトで言うと、ツンデレ美少女と、外国人美少女が所属している。


 練習の前に体育館で軽くキャプテン同士で挨拶する。


「そういやツンデレ美少女がキャプテンなんだな。でも、なんか前に『このままだとレギュラーも危うい』って言ってなかったっけ?」


「ウチのバスケ部は後輩がめちゃくちゃ優秀なのよ。二年で少し実力が抜けている私とエミーに、後輩の何人かがもう並びかけてるって言えば伝わるかしら」


 エミーというのは、外国人美少女のあだ名だ。確か本名からもじった名前だった気がするが、俺はちゃんとは覚えていない。


 俺は軽くバスケ部の面々を見渡してみた。


 元気っ子後輩の周りでは、バスケ部の二年生がキャッキャとウチの後輩の面倒を可愛がってくれている。


 普通っ子の周りでは、外部生達や大人しそうな子を中心に穏やかに話している。


 ぶりっ子先輩の周りでは、おそらく一年であろうバスケ部女子の五人くらいが、何故かぶりっ子先輩の話を目をキラキラさせながら、メモまで取って話を聞いている。


 ……ほんほん。


「ふむ、あのぶりっ子先輩の周りにいるグループの人達が、ツンデレ美少女と同じくらいの実力者でしょ」


「ええ、よく分かったわね」


「まあね」


 俺が実力を見抜けた理由は簡単だ。パッと見の印象で、頭一つ抜けて垢抜けたキラキラ女子が集まっていたから。なんとなーく、ヒロイン力高そうだなって。理由はそれだけ。


 そういう人は、今まで人一倍努力してきた人である可能性が高い。きっとあの子達は来年、翼君と同じ二年A組になるのだろうな。


「で、外国人美少女と、ツンデレ美少女のキャプテン争いの上で、ツンデレ美少女が勝ち取ったと」


「別にそんな大したものじゃないわ。実力は拮抗していたから、最終的に声の大きい私がキャプテンになったってだけよ。あとは……人望の問題ね」


「ああ、確かにツンデレ美少女の声はよく通るもんなあ。それに、ツンデレ美少女の性格はお世辞にもいいとは言えないし」


 俺はあの性格が悪いところも含めて、可愛らしく思えるのだがなあ。


「そういうこと。てことで、お互い実りのある時間にしましょう」


「おう!」


 固い握手を交わしたのち、バスケ部顧問に指示された場所へ移動する。


 さあ、練習開始だ。



 俺達は和やかな雰囲気の中、軍隊のような過酷な練習を続けていった。


「声出してけ!」


「「「「はい!!!」」」」


 メニューは周りを鼓舞しながらの、インターバルダッシュ、フットワークが主だ。


 柔道部とバスケ部で争わせながら、罰ゲームを交えて繰り返された。その過酷さは、部内の数人が吐いてしまうほど。


 バスケ部の中ではこれが日常らしい。


 そのせいか、序盤は柔道部、その中でも俺と普通っ子が少し遅れを取っていた。


 とはいえ、柔道部だって過酷な練習を日々頑張ってきた人ばかり。


 最初こそ切り返しの多いインターバルダッシュなどに手こずったものの、後半にはしっかり食らいつき、五分五分の争いを繰り広げた。


 ぶりっ子先輩と元気っ子後輩は……まあ、あの人達は例外。元気っ子後輩の基礎身体能力が高いのはもちろんだが、ぶりっ子先輩も全てにおいて優秀な人なんで。


 数名の脱落者が出る中、柔道部は無事に全てのメニューをやりきったのだった。



「「「「ありがとうございましたー!」」」」


 軽く休憩したのち、楽しく雑談を交わしながら柔道部の道場へ戻る準備をする。


「泰平! またね!」


「おう! 外国人美少女! 最高に楽しかったぞ! またやろうな!」


 それにしても、今日の外国人美少女はやたら元気で生き生きとしていたな。


 つられて俺まで変なスイッチが入り、意地になって何度もセット数を競い合ってしまった。後半の方は勝手に各々でセット数を増やしてしまったので、くっそ疲れた。


 でも、仲の良い人と競い合うのってやっぱ楽しいわ。ぶっちゃけ勝ち負けでいえば俺の方が少し劣ってはいたが、それでも気分は晴れやか。


 まさに青春って感じだな。




「はぁ……はぁ……柔道部も、先輩達も、元気だね……」


「ふぅー。ね。私達はこんなに死屍累々なのに……」


「体力お化けばっかかよ」


 バスケ部一年の間ではこんな会話が交わされていたとか。



 ◆



 今日は母の都合が悪い日なので、着物未亡人さんが練習を見てくれる日だ。


「泰平さん。お姫様抱っこしてくれませんか?」


 開口一番。


 道場に入ると突然、俺に向かって頭を下げた。


「……はい?」


「泰平さん。私をお姫様抱っこしてくれませんか?」


「いや、聞こえなかったわけではなく……なんで?」


「理由……ですか? 女の子の夢だから、でしょうか」


「でしょうか。じゃなくてですね……」


 うむ、これってセクハラ案件だろうか。なら、デコピンの出番か?


 ……いや、着物未亡人さんのような触ったら折れそうなほど細い人にデコピンは、流石にためらわれる。


 やはり自衛にデコピンという武器だけではダメだな。


「もしかして、お姫様抱っこが分からないのでしょうか? ならば、参考資料を見せますね」


「いや、分からないわけではなく……聞いてないし」


 着物未亡人さんはガサゴソと風呂敷を広げると、一冊の少女漫画を取り出した。


「これです。このページ。こんな感じで抱っこしてくれると助かります」


「いや、あの……」



「あー! はいはいはーい! その漫画知ってます! 知る人ぞ知る名作じゃないですか! そんなに有名じゃないらしいですけど、私も、私の母も大好きですよ!」


「実は私も知ってる。敵国の王太子が失恋で傷ついた主人公をお姫様抱っこでさらうシーン、いいですよね!」


「ユウカ先輩! わっっっっかります!! 隔離されたような世界であるお姫様のお城へ、大胆に侵入して、『自由になりたいと心が叫ぶのなら、俺の手を取れ!』って叫ぶんですよね!」


「あのシーンは最高にキュンと来たね! あっ、でも、その直後の奴隷編の最後も――」


「ふふっ、古い漫画を若者が読んで、面白いと言ってくれるのは嬉しいものですね」


 ……あれ? なんだかここには俺の味方がいない? 


 お姫様抱っこなんて、好きな人にしかやっちゃダメなやつじゃないの?


 それからしばらく、古い少女漫画談義が続いたのだった。



「泰平、それくらいしてあげなさい」


 俺が話に入れず、所在なさげに困っていると、ぶりっ子先輩から顎でクイッと促された。


「いやいや、それくらいって……」


「そうねえ。納得できないのなら、恩返しとでも思えばいいのよ。副道場長には練習を見てくれているだけではない、街規模で恩があるんだから」


「街規模の恩?」


「そう。副道場長って実は、外部生誘致の大スポンサーでもあるのよ」


「……マジ!? じゃあ、俺が外国人美少女とかと仲良くできているのも、着物未亡人さんのおかげでもあるんだ」


「ええ、そういうこと。莫大な金を費やしてくれているわ」


 外部生に関してはトップシークレットなことが多く、学生の身分では分からないことも多いのだが……そうか、着物未亡人さんは、外部生関連に関わっていたのか。


「この街って少し特殊でしょ? それでも大きな問題が表に出てこないのは、一部の聡い大人が、人知れず平和を維持しようと努力しているからなのよ。泰平の知らないところでね」


 ……そういえば俺の母も、謎の用事で出かけることがちょくちょくある。あれはもしかしたら、もしかするかもな。


「さて、泰平さん。話は終わりましたか? 金なら出します。いくらですか?」


「おっと、いやいや、金の問題ではなくてですね――」


「強情ですねえ。指定の額を振り込ませてもらいますよ。悪い話ではないと思うのですが……さあ、どうぞ」


 聞けよ。小切手をすっ、じゃなくて。


「? 学生というのはお金に困っているものでしょう? さあ、遠慮なく」


 いや、困ってるっちゃあ困ってるけど、別に困ってないんだな、これが。


 なにせ俺はミソギ様としての莫大な収入があるからな。


 まあ、その収入を親の同意のもと証券口座にフルベッドしているので、実質、母からのお小遣い制なんだけども。



 ……さて、と。ここには俺の味方はいない。もうやるしかないか。


「よっと」


 俺は相手のリズムに合わせず、強引に膝裏を腕に差し入れ、お姫様抱っこをした。強引にやったのは少しの照れと、少しでも意趣返ししたかったから。


「あん♡ ……こほん。失礼。切ない吐息を漏らしてしまいました」


 だから、頬をポッじゃねえよ。


 ほんと、セクハラ対策、何か考えないとなあ。


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