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多分非モテ男の妄想世界に転生してしまった 〜【男1:女5】の自分が主人公ではない貞操逆転世界〜  作者: ながつき おつ


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第三十九話 我等白組


 ぱんっぱんっ。


 二礼二拍手一礼。


「(今日もこの世界が崩壊しませんように)」


 去年の体育祭を経験して、考えたんだ。次の体育祭で俺がどうすればもっと楽しめるのかって。


 別に去年が楽しくなかったわけではない。特に準備期間は楽しかった。


 ただ、本番でのみ、頭の片隅で「どうせ勝てないのに」なんて、どこか冷めた部分もあったのは事実だ。その反省を活かし、今年はもっと全力で楽しむつもりだ。


 そのために、俺は主人公君に遊んでもらうつもりなんだ。だって、現状ではそれが一番全力で青春できそうだからさ。


 ただし、そうやって遊んでもらうという「逃げ」は今年までだ。来年の体育祭ではそうはいかない。


 というのもさ、普通っ子と体育祭について色々話し合ったんだよ。その結果、大規模に小細工を散りばめれば、もしかしたらワンチャンあるのかもしれないと結論が出たんだ。


 どうせ勝てないなんて諦めずにこんな風に話し合えたのは、勝ち負けにこだわる可愛い後輩のおかげだ。今年は小細工をする暇がなかったのが悔やまれるが、来年の体育祭ではちょっと頑張ってみようと思う。


 てか、今からもう来年の体育祭に向けて動いているといっても過言ではない。小細工はもう始まっているのだ。


 高校生活中に一回くらい主人公君に勝って、愛しい後輩に先輩らしいところを見せてやるからな。


「うし、普通っ子、行こうか」


「うん」


 さあ、今日はどんな一日が待っているだろうか。



◆◆◆



 この体育祭には親などもたくさん来ているので、いつもの学校とは違う賑やかさが溢れていた。


「赤組、ファイトー!!」

「白組、敵は全員ぶっ殺せ!!」

「青組、正々堂々、とにかく楽しもう!!」


 体育祭の開催宣言など諸々が終わり、本格的に競技が始まる前に、それぞれの組で円陣を組むことになった。


 円陣一つとっても、チームの色が出る。


 赤組はキャピキャピと今しかできない青春を楽しむような雰囲気、青組は頼れるリーダーを中心としたまとまった雰囲気に対し、我等白組だけはやたら殺伐としている。


 白組のテーマは「本能を解放させよう」ということで、自然とこうなった。背後にそびえ立つ大旗にも、今にも飛び出してきそうなライオンの絵に加え、力強い字で「蹂躙」とデカデカと描いてある。


「白組! もっと気合入れろ!!」

「おおおおお!!!!!」

「もっと、もっとだ!!!! 臓物がちぎれるくらい声出せ!!」

「うおおおおおお!!!!!」

「私達は敵を倒しにきたんじゃねえ! 殺しにきたんだ!」

「Ruin on the kingdom!!(王国に破滅あれ!!)」


 とにかく腹から声を出し、迫力を出し、熱気により相手をビビらせる。この後の色別応援合戦でだって、俺達は迫力満点のハカを披露する。他の組が男女制服入れ変え応援団とか、創作ダンスとかしているのなど関係ない。とにかく相手を威嚇するのだ。


 我等白組にこれだけ熱量があるのは、ぶりっ子先輩が準備期間中に、とにかく嫉妬の炎を煽ったからだ。逐一「赤組は翼君とこんな風にイチャコラしている」という“羨ま情報”を伝えただけで、この世界の女子高生はこんな悲しき戦士になるらしい。


 そんな熱意もあり、我等白組はかなり腰を入れて事前練習を繰り返しているので、相当強い。騎馬戦の戦術論や、午後のお弁当の栄養メニューなどまで、徹底的にシミュレーションしている。


 主人公君だろうがヒロインだろうが、かかってきやがれ。


 そんな熱い空気の中、淡々と競技は進んでいく。


 午前の部はエンタメ性の強い競技が多い。滅茶苦茶なお題の借り物競争、異性との二人三脚などに、かなり時間をかける。



 借り物競争が始まると、


「ねえ、そのお題、なんて書かれてたの?」


「えっ!? ひ、秘密!」


 という主人公君とヒロイン達とのやり取りを百万回見させられた。どうせ「好きな人」って書いてあるんだろ、見なくても反応で分かるわそんなこと。けっ、羨ましいこって。


 俺も一度だけ目の奥で闘志がメラメラと燃えている元気っ子後輩に借りられた。その時のお題は「倒すべき宿敵」だったので、油性ペンで上から「尊敬すべき大好きな先輩」に強引に変えておいた。


 ちょっとだけ運営から怒られたが、最後にはどっちでもいいやと許されたのでセーフ。


 借り物競争で特筆すべきなのはその程度だ。後はつつがなく終わり、気合充分の白組がわずかにリードする結果となった。


「次は、男女二人三脚です。参加する選手の方は準備して下さい」


 放送委員のアナウンスがあったので、俺は白ギャル先輩の元へ向かう。


「白ギャルせんぱーい、俺達のラブラブパワーを見せてやりましょう!」


「おう!」


 お? いつもの白ギャル先輩ならもっとタジタジになると思ったのだが、想定していた反応と違う。


 これはあれか、白組の独特の雰囲気に飲み込まれているのか。


 いや、飲み込まれていると言うより、自ら進んで流されているって感じか。緊張もしていなさそうだし、これなら問題ないな。


「泰平先輩! カエデ先輩! ぶちかましてやって下さい!! ファイトー!」


 遠くから元気っ子後輩のエールが聞こえてきたので、俺達は無言でサムズアップして返す。


 白ギャル先輩と何も言わずとも仕草がそろった。


 へへっ、そうですよね。可愛い後輩にちょっとくらいかっこつけたいですよね。


「白ギャル先輩、せっかくですし、俺の鉢巻をぎゅって結んで下さい。それだけですっごく気合が入るので」


「じゃあ、あーしのもお願いしていい?」


「もちろんです」


 お互いに気合注入して、準備万端。あっという間に俺達の出番だ。


 赤白青から二組ずつ同時に走るので、この六組の中から一位を取ればいい。残念ながら主人公君達のペアとは違うレースで走ることになったが、まあいい。


 それならそれで、ぶっちぎればいいだけだ。


 俺の左半身に、白ギャル先輩の少し高い体温がじんわりと伝わってくる。密着していることで白ギャル先輩の呼吸も伝わってくる。シャンプーのような甘いフローラルの香りに当てられ、俺の身体の芯が熱くなっていく。


「位置について、よーい……パンッ」


 腰をぎゅっと強く手で引き寄せて、練習通り繋がれた足から一歩目を踏み出す。声を出してリズムを取り、お互いの呼吸を感じながら、下を向かずに前へ前へ。


 この世界の女性は小柄で、俺は男にしては大柄だ。身長差がある分息を合わせるのに苦労するが、その程度は練習で克服済み。すいすいと何の違和感もなく、俺達は走りきった。


 結果はぶっちぎりの一位。まあ、ざっとこんなもんよ。


「先輩」


「泰平」


「「いえーい!」」


 俺達は固定バンドを付けたまま、片手で強くハイタッチを交わした。


 一位の旗が立てられているところに座り、この競技が終わるのを待つ。なんとなく名残り惜しくて、まだ固定バンドは付けたままだ。


 それなのに、お互い外そうとは言い出さない。白ギャル先輩も外したくないって思ってくれてるといいな。


「あーあ、もう出番は終わりかあ。まだまだお互い体力は余っているし、なにより白ギャル先輩となら、どんな相手でも勝てるのになあ」


「そうね。泰平が一回しか出られないのは痛いわね。せめてあんたが四回出られればねえ」


 基本的に俺は、柔道部のみんなとならかなりの実力を出せる。ただし、ぶりっ子先輩や普通っ子はどんな男にでも合わせられることや、元気っ子後輩は柔道部の中でも小柄で俺と身長差がありすぎることから、戦略的にこのペアとなった。


「そこの柔道部ペアの二人、固定バンドを回収するので、外して下さい」


 俺達が和やかに話していると、体育祭実行委員の人からそう告げられた。


「えー、俺等ニコイチ最強卍なんで、一生このままでいいんですけど」


「ほら、馬鹿言ってないで外すよ。迷惑になるのはダメでしょ」


「はーい」


 ちっ、運営め、俺達のイチャコラを邪魔しやがって。


 なんて思っても決して口には出さず、愛想よく固定バンドを渡す。ここで悪態をつくのは流石に違うからね。テキパキと動いてくれている実行委員に感謝。


「じゃ、泰平、二人三脚も終わったことだし、席に戻りましょうか」


「あっ、ちょっと待ってください。少しだけこっそり話したいことがあるんで、耳を貸して下さい」


 俺がそう告げると、なんの警戒もなく白ギャル先輩はこちらに身を寄せた。


「(カエデ先輩。体育祭とランク戦が終わって少し暇になったら、俺とデートしてくれませんか。それも、お遊びとかではなく、かなり本気のやつです。どうですか?)」


 白ギャル先輩はそろそろ本格的に受験勉強に入ってしまう。後悔しない日々を送るためにも、次のデートはプロポーズ級に気合を入れて望むつもりだ。


 

 白ギャル先輩は俺の真剣な熱を受け取り、無言で小さく頷いた。その瞳の奥には、うっすらとした期待の色が見えた気がした。


「あっ、やっぱり嘘、ランク戦でシホに一度も負けなかったら考えてあげるっ!」


 白ギャル先輩は俺の二歩程前に立ち、くるりと振り返り、そう言って笑った。


「くっ、可愛すぎる」


「ちょ、泰平! そんなところで倒れないでよ! 恥ずかしいから!」


「致死量の可愛いを摂取して死にそうです。白ギャル先輩、おんぶしてください」


「もう、しょうがないなあ」


 白ギャル先輩におんぶされ、その愛おしい身体をギュッと抱きしめながら思う。


 先輩の期待に背かないように、頑張らなきゃなあ。


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