番外編3・泰平とは決して交わらない女性
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三人目・量産型視点
目の前のテレビではバラエティが輝かしい盛り上がりを見せている。
ただ、部屋が「おかしくなるくらい静か」だから付けているだけの私にとっては内容は関係ない。
ベッドの上で寝転びながら、ワンカップ大関をちびちびと飲む。多分これで三カップ目……いや、四? 五? うーん、まあどうでもいいや。
「つまんねぇ」
私はこの世界の男という存在に心底辟易していた。
男は歳を重ねるほど糞になっていく。それはこの世の摂理だ。
男は金のある女か、放置してくれる女を求める。そんなクソ男ばかりでも、マッチングアプリでは男の需要はとどまることを知らない。
クソ男と結婚できたところで、幸せになどなれないというのに。可哀想な奴らだ。
一応「数少ないまともな男」もいないわけではない。
ただし、まともな男は女によって隠されることが多い。そういう家庭のまともな男は、あまり表に出ず、影でとにかくパートナーを支え、その活躍や魅力を引き立てることに徹するそうだ。
また、最近ではまともな男がひっそりと家で仕事をして、外に出ずお金を稼いで生きていることも多い。リモートワークだとか、インドアビジネスだとか、オンラインキャバクラなんてものまで、昨今では家からでなくとも稼ぐ方法はいくらでもあるのだ。
いずれにしろ幼い頃からまともな男と縁を繋いでいたラッキーガールか、資産力により一発逆転を果たした金持ちレディにしか、そういう男は得られない。
「ショタと結婚してぇ」
小さく独り言を呟きながら、お酒でほんのり舌を濡らす。もはや酒の味など分からない。それでもいい。私は酔うためだけにアルコールを嗜んでいるのだから。
あーーーーーお酒うめえええーー。味なんてよく分かんないのに、美味しくて飲む手が止まんねえわ。
「ショタと結婚したいんですけど」
また独り言をいいながら、酒を流し込む。
一方ショタはいい。何度でも言おう。ショタはいい。ショタはいいぞ。
ショタってさ。そこにあるだけでもう「美味しい」じゃん。
醜悪な思想に染まらず、美しいままでそこに「ある」色気。そして、真っ白な純白を遠慮なく汚す私という存在。
ぐへ、ぐへへへへ。そんな叶わない妄想を繰り広げるだけで、酒の味に深みが増すってものだ。
「あー、ショタの食レポの仕事してぇなあ」
なぜこの世界にはショタをテイスティングする食レポの仕事はないのか。世の中おかしい、私がこんな歪な世を是正しなければ。
「んだよくそ。酒がうめえわ」
さて、私はショタと体の関係を目指す、ただの量産型の女である。今年で三十四歳。普通のサラリーマンで、普通の容姿、普通の性癖。
これほどごく普通の女なのに、私の元にショタは降ってこない。
おかしい。普通の女の元にはショタが降ってくるのは、物語の定番ではないのか? もはやこれは現実ではないのでは? うんそうだ絶対そうに決まっている。
「ショタと結婚してぇよ。それが無理なら、ほっぺたを跡が付くまで吸い込むだけでいいからさあ」
ムカつくことに、この世界には男を守る法律がたくさんある。青少年保護法、淫行条例、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪、ストーカー規制法、名誉毀損、エトセトラエトセトラ……
私達は様々な法律で縛られている。ああ、法律が憎い。
「法律は私を助けてくれないくせによぉ」
こんな一般的で量産型の女のどす黒い欲望からショタを守るために、法律が存在しているということも分かっている。
それでも酒を飲んでいる時くらい、世間のしがらみから解放されたいのだ。
「はあ、何にも食生活が変わってねえのに太ってくるわ、月がくっそ綺麗だわ……ムカつくわ」
私が嘆いていると、ベッド脇に置いていたスマホが震えた。母からラインが来たようだ。
「……そろそろ結婚しろだと? できるのならやってるわハゲ。母親でも言っていいことと悪いことの区別もつかねえのかよクソが」
慣れた手つきで、いつものように私は返信する。
【ショタという存在が私のミッシングピースだから、結婚はできない】
そう。ショタだ。私にだけ懐くショタさえいれば、私の人生は百億点満点になるのだ。
どうせこの後母から長々としたお説教が来るのは目に見えていたので、私はスマホの電源を切った。本当はこの後「ショタっ子パラダイス」というスマホゲーをやるつもりだったのだが、こういうのはもっと純な時に楽しむほうがいいだろう。
「栄光の架け橋へとーーうぇいうぇいうぇーい。逆走~♪」
自分でも意味の分からない替え歌をご機嫌に歌いながら、また酒をあおる。こうして遠慮なく意味不明な言葉を羅列することができるのが独り暮らしの特権だ。
……あっ、これは。うん、いい感じに酔ってきたかも。自分でもどんどん気持ちよくなってきた実感がある。頭のタガが一つ外れた。こうなったらもう止まらない。フィーバータイムだ。
「にゃははー。これくらいの、おべんとばこに、ショタっ子ショタっ子ちょっとちょっちゅねー♪」
「ぶーーーーん!!! 俺のターン、ドロー! ポメラニアンに乗るワイバーンを融合召喚! 相手のポケモンにカーフキックだ!」
「ゲッコウガァ。ゲゲ、ゲゲゲゲゲッコウガァ」
「ふへっ。生麦生米ゴミ卵! ん生麦生米ごめんなさい! あらよっと、生麦生米待たせたな!」
「あはっは。最も弱い言葉で非難してください! だって私は三か月後は誕生日なのだもの」
「んふふ~。えっちょっと待って!? お酒が美味しいってことは、お酒が美味しいってことでは!?」
はー、人生楽し。一人暮らし楽し。アルコールちゅき。来世では男に生まれ変わってお布団とお酒とショタとショタとショタと結婚するわ。
「ん。眠い。寝よ」
私は酔いが急に襲ってくるタイプだ。
エネルギーが切れた私は、一瞬で泥のように眠ったのだった。
次の日の朝。
「ふぅ。なんか妙にスッキリしてる。さあ、今日も一日頑張ろう!」
昨日の夜から記憶が一切ないや。やっぱり私はお酒を飲むと記憶をなくしてしまうみたい。
ついでに言えば、酔い癖も悪いらしいからなあ。同僚によると、酔った私は「終わっている」らしい。実際お酒の席に誘われなくなったので、相当たちが悪いのかなあ。
朝シャンし、メイクし、鏡の前で笑顔を作り、模範的な社会人となる。
模範的……素晴らしい言葉だ。
「さて、マッチングアプリは……音沙汰なしと」
相変わらず金、金、放置、金、金。私のような理想を掲げる模範的な女には厳しい世の中。
ただ、この歳になってショタと結婚したいとか贅沢言ってられないもんね。なので私は合法な少年で妥協することにしている。この国じゃ中学生男子とも結婚できるんだから、中学一年生が狙い目だ。
個人的な話をすれば、中学生は少しだけ旬が過ぎているんだけど……ダメダメ。流石にそれは高望みしすぎだね。模範的社会人である私は、犯罪者になるつもりはさらさらないんだから。
「絶対に中学の内に結婚しておきたい男はいるはず! 諦めずにアピールし続けよう!」
年上の男を狙う分には夢物語だけど、年下の男なら可能性はゼロじゃない
なにせ年上の男でフリーなどそうそういないけど、年下は毎年中学一年までは確実にフリーだからね。
何年かかってでも私は中学一年の青年を手に入れるつもりだ。てか、それまで死ねない。
仕事に行くときは中学一年生のギリギリショタに「いってらっしゃい」と言われ、疲れて帰ってきて、晩酌するときに隣でお酒をついでくれる。そんな理想の生活を手に入れるのだ。
相手に求める条件なんてそれだけなんだから、私って相当お買い得だと思うんだけどなあ。
「うん、今日も空気が綺麗で気持ちいいね! いってきまーす!」
さあ、今日も模範的な一日を始めよう。
次回(あるか不明)
「……いや待てよ? 今から転職して、保育園の先生になる手段もありか? ショタ期待値はそちらの方が高いかもしれない。いやしかし、立場を利用し愉悦を貪る行為はかなりの重犯罪となるが……やるか?」
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