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多分非モテ男の妄想世界に転生してしまった 〜【男1:女5】の自分が主人公ではない貞操逆転世界〜  作者: ながつき おつ


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23/54

番外編・泰平とは決して交わらない女性  

ちょびっとだけプロローグを加筆しました。


二人目・レビュワー視点


 

 覚醒は静かに訪れた。


 カーテンの隙間から入ってくる光はまだ少し仄暗い。夜更け頃に急いで仮眠をしたのだが、どうやら少し早く起きてしまったようだ。


 ベッドの上で心地よい背中の反発を楽しみながら、少しの間天井を見つめ続ける。


 それからすくりと立ち、パソコンの前に座る。


 さあ、感情が新鮮なうちに文を綴ろう。




 タイトル:五人の妻持ち意地悪社長様に攻められるだって? こんなの勝てるわけ無いだろ! ☆5


<※このレビューにはネタバレが含まれております>


【あのミソギ様の大人気シリーズの続編だって!? これは買うっきゃない!


 そう思い発売直後、即座に購入。発売から一ヶ月の間はセール価格なのが私のようなヘビーユーザーにはありがたい。


 そして、夢中で私はこの作品の世界へと溺れていく。


 ……気づけば朝になっていた。夜中に聞いたはずなのに、時間が飛んだのだ。


 原因はすぐに判明した。ASMRによる、あまりに深い没入感。そして、耳元から入ってくる致死量を超えたイケボ。二人っきりでの旅行で同部屋という全女子憧れのシチュエーション。耳かきとマッサージと密着添い寝。それが私を時間旅行者へと変貌させたのだ。


 社長と一社員の一夜限りの関係。ダメだ。私にも立場というものがある。これは社長様によるただの戯れだということも分かっている。分かっているのに。


 イケナイ関係のはずなのに、彼から発せられるオス様のオーラに、何度も何度も組み伏せられてしまうのだ。


 時折垣間見える社長様の闇。求められるとしか思えない甘えた声。


「本当はお前のような女と……いや、忘れてくれ」


 とか。とかさあ……


 もうこれ純愛だろ!!!!


 はっきり言わせてくれ。


 ミソギ様に限界はないのか!? エロさにだって限度があるはずだろ! これでR18じゃないってどうなってるんだ! いつもありがとうミソギ様!


 このようにこの作品が最高であることは間違いないのだが、注意点も一つ。


 この作品には「もし嫌じゃないのなら、小さくてもいいからお前の可愛い声を聞かせて」と、返答することを求められる。


 腕まくりしながら、最初は小さい声で「いい」「分かった」「大丈夫」など返事していた私だが――これは罠だ。


 後半には脳みそがトロトロ、いや、ドロドロに溶かされているので、もはや自分が何を言っているのか分からなくなることは不可避だ。


 私のケースでは、気づけば自分の喉奥から雌豚のようなおぞましい声を出していた。本能が意地汚くも彼を求めるため仕方ないとはいえ、近所迷惑にならないように気をつけた方がいいだろう。


 では最後に一言。


 最高の捗り体験をありがとう!!!】




「ふう、こんなものでいいか」


 ミソギ様の作品の新作のレビューを投稿し終えた私は、小学二年生となる子どもの弁当を作り、化粧を済ませ、出社する。以前は車で出勤していたが、最近は健康を意識して徒歩で行くことにしている。


 スマホを操作し、イヤホンをブルートゥースに繋ぐ。音漏れがしていないか念入りにチェックしたのち、もう一度ミソギ様のシチュエーションボイスを聞く。


 やはり何度聞いてもいい。ミソギ様は素晴らしい。もはや四十二歳なんて年齢になってしまったが、どうやら私の性欲は衰えることを知らないようだ。


 信号待ちをしながら、ミソギ様の繰り広げる世界に酔う。


「ぅんっ……失礼」


 おっと、あまりの快楽に声が漏れてしまった。おばさんという存在はどうしたって若者から煙たがられる存在なのだから、もっと気をつけないと。


「ふっ」


 ただし、先ほど私の漏れた声を聞き、私を汚いものを見るような目で睨んだピチピチのJKよ。お前には忠告しておこう。


 君の若さは無限ではない。老いとは残酷な程平等なのだ。いつか君も私のようになるだろう。さあ、お前が落ちてくることを低みで待っているぞ


 脳内でしっかりやり返した私は、会社へとたどり着いた。


 

 無機質なパソコンのタイピング音がオフィス中に響いている。


 仕事は嫌いではない。なにせ私は外資系のエリートだ。世間一般の同世代と比べると、私は成功者というカテゴリーに属することになるだろう。


 そして、仕事内容もそうであるが、なにより収入が多いのがやはり嬉しい。金は人生に自信と安心感をもたらす。自分に自信がないものこそ、お金持ちになる努力をしたほうがいいというのが私の哲学だ。


 私と同世代の友達には、死んだような目をしながら毎日機械のように働いている者も多い。


 その気持ちは分からなくもない。ないが、別にどの会社もブラックではないのだから、もっと全力で仕事を楽しめばいいのに。


 そう偉そうにアドバイスしたくなる気持ちをぐっと押さえ、私は私の人生を生きる。こうも長く生きていれば、自分の感情に対しての折り合いもつくというものだ。


 それに、かくいう私もただ仕事が順調なだけだ。決して人間としての格が高いなどと誇れる自信は持ち合わせていないのだから。

 


 順調に仕事を終え、パソコンを閉じた。家につくと時計の針は五時を指していた。いつも通りの時間だ。


 しかし妙だな。今日は家の中がやけに静かだ。


 玄関の靴を見るに、娘は帰ってきているはずだ。だが、いつもの溌剌とした「おかえりなさい」の声がない。どうしたのだろうか?


 少し心配になった私は、そそくさと娘の私室に向かう。


 ドアは少し開いており、一筋の光が漏れ出ていた。


 勉強でもしているのだろうか? それとも最近の若者らしく、スマホゲームにでも夢中になっているのだろうか?


 娘の部屋のドアをノックしようとしたところ、ふとドアの隙間から娘が何をしているのか見えてしまった。


 なんと、娘は小学生二年生なのにも関わらず、私の部屋に置いていたVRゴーグルを勝手に持ち出し、全裸で頭に装着していたのだ。


 おそらくアダルトビデオでも楽しんでいるのだろう。というより、我が家にはVRゴーグルを活用できる作品はアダルトビデオしか存在しないのだから、確定だ。


 少しの間驚嘆により立ち尽くしてしまったが、しばらくすると冷静になった。仕事で緊急時の対応に慣れていることが、こんな場面で役に立つとは、人生とは分からないものだ。


 さてと、この場合は見なかったふりをするのが最適だろう。


(……ふっ、流石私の子だな)


 私は小さく自嘲の笑みを浮かべた。だが、私の目元は湧き上がる愛おしさにより自然と和らいでもいる。


 親と子がこうまで似るとは、遺伝子とは末恐ろしいな。


 こっそりとあの娘の醜態をパシャリとスマホで撮ったのち、静かにキッチンへと戻り、精の着くものでも作ろうと励むことにした。



 にんにくの皮を剥く包丁の音だけが、静かな家に響いていた。


 料理をしながら自分の人生について物思いにふける。


 私は徹底的に男ができず、人生で一度たりとも異性にモテなかった。その寂しさを埋めるように男の精液を買い、人工授精の末に娘を産んだ。


 それからは仕事と子育てのサイクルの日々だ。


 人によっては、こんな波のない生活は嫌だと貶すものもいるだろう。だが、私は私の人生に概ね満足している。百点とは言えないが、八十点くらいの評価はできるのではないだろうか。


 しかしだ。だからといって、うちの娘には私のような寂しい人生を歩ませたいとは思わない。小学生時点でVRでアダルト動画を楽しめる素質があるのだから、是非男を捕まえて幸せになってもらいたいものだ。


 本当は親である私が男と出会えるチャンスを与えるのが理想なのだが……どうやら私には理想的な母になる資格を持ち合わせていないようだ。


 これは世間で流布している定説だが、理想的な母は、幼いうちから自分の娘に結婚相手として男をあてがうものらしい。だが、残念ながら私には男のツテがない。からっきしない。びっくりするほどない。金はあるのに、男が寄ってくる気配がない。


 それに、もし男が現れたとしても、声をかける勇気などすでに枯れ果てている。喪女というのは総じてそんなものだ。


 私にできることは、ただ無償の愛を娘に授け、愛おしむことだけ。無力な私を許してくれ。


 ああ、このままでは私に似ている娘も、私の人生と同じ轍を踏む可能性が――いや、これ以上考えるのはよそう。


 

 さて、そんな娘に人生の大先輩である母からこんな言葉を送ろう。


「大丈夫。私達にはミソギ様がいる」


 遺書は書いたか? ならば共にミソギ様の作品に酔いしれようではないか。




次回(あるか不明)


「ねえ、お母さん。なんかさあ、かっこよければ女の子でもいい気がしてきたんだ! これって成長かなあ?」


「なるほど、もうその真理に到達したのか。だが娘よ、実はその道は修羅の道なのだ。決して妥協などという軽い気持ちで進んでいいものではない。というのも、それは私も一度通った道なのだ。

 ……ふむ、言葉で聞くよりも、体験したほうが分かりやすいか。よし、今度の休日、行きつけの男装バーに連れて行ってやろう」


読んでくださりありがとうございます!


この小説を読んで


「面白い!」

「笑った!」

「泰平頑張れ!」


と少しでも思ったら、↓の★1〜★★★★★、ブックマークで応援してくれると嬉しいです!




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