98、間休憩
ごめんなさいね。章の合間に教えると言っておきながら、二章連続で読んでしまって。
あら、気遣い上手なのね。
あなたの言う通り、ちゃんと理由はあるわ。
端的に言えば、彼女が主人公足りえるときまで一気に進めたかったの。
ええ、その疑問は当然のものよ。
これは彼女の物語。でも、この二章の間は主人公ではなく、ただ運命に翻弄されるモブだもの。
ほら、彼女以外の物語も読んだでしょう?
一番主人公として近かったのは、ライムかしら。
マレに負けず劣らずの数奇な運命。そして、過酷な境遇と辛い過去を乗り越え、それでも前を向こうとする彼女は、確かに主人公足りえたわ。
マレはどちらかというと、彼女を支えようとする立場のはずだった。彼女の性格的に、不思議でもないでしょう?
しかし、そうはならなかった。だからこそ、私はマレの語り部として生まれた。
その疑問はもっともね。
でも、考えてみてくれないかしら。主人公のいない物語なんて、面白いかしら?
私は面白くないわ。誰も主人公じゃない物語って、ただの歴史書じゃない。そんなの、この下の追憶書庫に行けばいくらでも見れるわ。
あら、言ってなかったかしら? 下の書庫は追憶書庫よ。まあ、かなり拡張された上に現世に引っ張り出されちゃったから、原型はほとんどないけれど。
でも、この話は今は関係ないわ。早速次の章を読みましょう。
えーと、次の章は………『黒い水産み』ね。この章、私が好きな章の一つなの。
え? それはそうよ。あなたが来る前から、私は何千回と読んでいるわ。
でも、独りで読むのと誰かと一緒に読むのでは、全然違うわ。そこは感謝しているわよ。
この章が好きな理由………ね。あんまり言い過ぎるとネタバレになってしまうから、そう多くは話せないけど………
言えるとすれば、私自身に関係するから、かしら。
ええ、このときにはもう生まれてるわよ。
でも、あのときの私は意識が曖昧で、主観的な記憶は残ってないのよね………
その通り。客観的な記録はあるから、このときに私が生まれたって分かるの。
ある人が注目していたおかげで、生まれてから没するまでの記録もあったし。
あら、ある人が気になる? なら、早く読み進めないと。
次はちゃんと章を言うわよ。そうかっかしないでほしいわ。
それに、次からは主人公らしく、マレも自分から動くわよ。もっと面白くなるわ。
結局分からないことだらけ? 面白くない?
何を言ってるの? そりゃそうよ。これは彼女の記録だけど、だからこそ色んな人々の記憶でもあるの。
ごちゃ混ぜないまぜになって当然よ。
気持ちは分かるけど、我慢してちょうだい。元より、あなたにはこれしかないの。
それに、意味が分かるようになったら、一気に面白くなるわよ。
まあ、個人差はあるから、あなたもそうとは限らないけれど………
ん、もう文句はないわね?
それじゃあ、新しい章をはじめましょう。
でも、まずは間章だけれどね。ここも重要だから、読み飛ばすなんてことさせないわよ。




