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え、あ、はい、ワームですよ?  作者: 素知らぬ語り部
祝福された呪い子

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80、七転び八起き






「何をしているのですか!」


 私の声が、街に響きます。

 ベイラと黒ローブを着た人々は驚いて私を見ますが、ただ一人、騎士だけは冷静に振り返りました。

 その大きな身体が動いたおかげで、囲まれている子どもが見えやすくなります。


 艶やかな黒い髪に、ダークエルフのような褐色肌。特筆すべき身体的特徴はそれだけで、それ以外は普通の少女のようにも思えます。

 着ている服がかなり古くなっていることと、右腕がないことを除けば。


「その血跡を見れば分かります。その怪我は、今日ですよね?」


「どうやら、暴漢に襲われていたようで」


 私は少女に質問したつもりでしたが、その子が口を開く前に騎士が応えました。それも、全くの嘘で。

 こちらを舐めているか、敵視しているか。サイルガ家は、敵対している組織など両手で数えても足りません。


 だからといって、貴族の責務を無視する理由には、なりません。


「この目に映った以上、見過ごすことはできません。その子は、こちらで手当てしましょう。回復魔術の使い手もいます」


 私の言葉に、背後のベイラが首を横に振る気配がしましたが、無視します。

 こんな子どもを無視するとは、回復術士としての矜持はどこへ行ったのでしょうか。


 とにかく、涙目の少女に手を伸ばし、こちらへ移動させようとしますが、黒ローブの人々に遮られました。

 睨むと多少は退いてくれますが、それでも私と少女の間に入り続けます。


「いやいや、貴族様にお手を煩わせるわけにはいきません。我々で処理できる事案ですので、こちらは気にせず外出なさってはいかがでしょう」


 もう、言葉の最後すら疑問形になっていません。言外に関わるなと言われています。

 しかし、このような状況で気にしない貴族など、叔父様方を除いて存在しないでしょう。

 ここは、強引に行きます。


「上席貴族の名の下において命じます。その子を引き渡してください」


「………ほう? そこまでですか」


 ベイラの首を振る速度が上がった気がしますが、振り返らずに騎士を見つめます。


 上席貴族とは、国の政治に直接関わることのできる貴族の中でも、特に発言力の高い貴族のことです。

 お祖父様の働きぶりもあって、叔父様方の慇懃無礼な態度でもその席に座ることを許されています。

 そしてその権力は、司法をも公的に捻じ曲げることのできるほど強いもの。だからこそ、その権力を行使した結果の責任は厳しく追及されます。


 ………あとでお祖父様からのお叱りの手紙を受け取ることになりそうですね。


「………なるほど。それであれば、私達は従わねばなりませんね」


 騎士は特に驚いた様子もなく、少女をこちらへと押しやります。

 そのせいで転びかけた少女を受け止めると、ベイラが代わりに支えてくれました。

 子どもの救出はこれで終わりです。次は、この方達が何をしようとしていたかの追及の始まりです。


「一体何をおっしゃるのです? 私はあくまで助けた側に過ぎません。それより、このままでよろしいので?」


「………どういう意味ですか?」


「では、少し周りを見てはいかがでしょうか」


 そう言われて気づきます。

 すでに騒ぎになっているのか、私達を囲むように人だかりができていました。

 その中には、街警団の姿もあります。私が貴族なので、出るべきか悩んでいるようです。


「さて、ここでお開きとしましょうか。では、また会わないことを願っております」


「あっ………」


 私が止める暇もなく、まあもっとも声をかけたところで止まらないんでしょうが、騎士とそれに付き従う黒ローブ達は人だかりの中へ消えていきました。

 野次馬も、事態が収拾したと見るや否や、蜘蛛の子を散らすように散開していきます。


 残ったのは、まだ目に涙を浮かべている少女と、その少女をなぜか嫌そうに支えるベイラ、そして私だけです。


「とりあえず、話を聞くために中に入りましょうか」


「え、入れるんですか………?」


「むしろここで話を聞く気なんですか?」


「ここで解放でいいんじゃ………」


 やはり今日の、というより先ほどからのベイラの様子がおかしいです。

 確かにこの少女の身なりはあまり見たくないものですが、そんなものは叔父様方の奴隷で見慣れているはずです。

 そのときは、こんな苦虫を噛み潰したような顔もしませんでしたし。


「とりあえず移動しましょう。雲があるとはいえ暑いですからね」


























「アイレー、お風呂は無理だったけど、シャワー出すまほ………魔術できたんだけど………何かあったの?」


「私、ずっと教会の裏で練習してたから、あんまよく知らないんだけど………」


「ねぇ、あのシスター………えっと、シーエさんだっけ? なんか呪文唱えてない? あ、おばあちゃんに止められた………」


「ねぇ、本当に何が………まあ、聞いても分からないか」


「って、え? 泣いてる? 大丈夫?」


「マレ、マレって………稀君のこと?」


「っていうか、稀君はまだ帰ってないの?」


「わっ、びっくりしたぁ。来客かな?」


「え、あれって騎士ってやつ!? 初めて見たんだけど! しかも後ろに魔法使いっぽいやつもいるし!」


「って、え? あれって、野菜? うわ、あんなにいっぱいに………しかも、あの袋に入ってるのってお金だよね? あの袋、小さい子ども一人分くらいの大きさだよ?」


「あれ、ここって貧乏だよね? 野菜買うお金はないし、あんなにお金貰う理由も分からないんだけど………」


「………ねぇ、なんで今マレって言ったの?」


「ねぇ、なんで稀はまだ、帰ってこないの………?」






























『あんたは運が良いね。最悪、あたしが痛みを全部肩代わりしようかと思っていたが………それはしなくて済みそうだ』


 頭の中の声は呑気にそう言うが、俺はそれを気にする余裕がない。

 そんな余裕があれば、男として終わっている気がする。


 年端も行かない少女と混浴するなど、意識しないわけがない。


「………あの、そんなに恥ずかしがることはないですよ?」


 ライムのときも同じことなので慣れたと思われそうだが、今回はそうもいかない。

 なぜなら、今の俺の身体からはサンドワームが抜けてしまっている。

 つまり、のっぺりとしたマネキンのような身体ではなく、ちゃんとした人間の身体だ。なので、胸の突起も、股の割れ目もある。

 すると、亜人のときにはなかった羞恥心が生まれてしまい………


「あの、同性ですし、そこまで気にしなくても………」


「普通に無理です………」


 少女に背を向けながら、風呂場の隅っこにて湯気で身体を温める。


 ライムやその他のときは見てしまうことが嫌だったが、今は見られる方が嫌になった。

 それを考えると、あの亜人の身体も、自分の身体として認識できていなかったということなのだろうか。

 この世界で生きると決めたはずだが、気づけば現実逃避している。自己嫌悪に陥ないわけがない。


「お嬢様? 大丈夫ですか?」


「大丈夫です、気にしなくていいです! 全く、何回聞くつもりなんでしょうか………」


 暖かみを感じる木製の風呂場の外から、赤髪の女性(ベイラさん)の声が響き、少女がうんざりした様子で応える。

 その間、俺は未だ湯気で身体を温めていた。シャワーは少女が使っている上、まだ身体を洗えていない。まず清潔にしてから湯船に浸かるのが、一番の入り方だろう。


「………ちょっといいですか?」


 そう決め込んだ俺の背に、少女が引っ付いてきた。


「あ、あの、何ですか………?」


「いえ、だいぶ手間取っているようなので」


 確かに、利き手である右腕がないので、何をするにも時間がかかってしまう。

 だが、だからといって一糸纏わぬ少女の身体を見ながらその少女に手伝ってもらうのは、非常に心臓に悪い。

 というか、貴族なのだから護衛に洗わせればいいはずなのだが、少女は頑なに俺と二人だけで入ることにこだわり、その結果がこれだ。

 ただ身なりを綺麗にするだけの話のはずだが。


「はい、手を上げてください。ここの砂漠の砂は大変細かいらしいですから、色んなところに入り込むんです」


「あの、自分で………」


 少女は俺の言葉を無視し、俺の腕を無理やり上げ、泡立てた石鹸でゴシゴシ洗ってくる。

 その手が脇に触れた瞬間、言い知れぬ感覚が襲ってきた。


「うひゃあっ!?」


「あ、す、すみません、ここは敏感なんですね」


 謝りながらも、少女は手を止めない。

 それどころか、わざとと思えるほど色んなところを触り始めた。


「ちょっ、お尻は、なんで………」


「奴隷の人とかで慣れているので、身を任せて大丈夫ですよー」


「いやだから、自分でできる………な、首!?」


「普通の人でも、意識的に洗おうとするところではないですからね」


「あの、そこは………んっ………!?」


「いつも洗えていると思ったところでも、意外に洗えていないこともありますからね。他人が念入りに洗うことで、ちゃんと綺麗にできます」


「だからってなんで………!」


 いや、この接し方、覚えがある。

 それも、自分に。


「ん、大人しくなりましたね。そうです、あなたは休んでいてください」


 弟と一緒に風呂に入ったとき、まだ風呂に不慣れだった弟を洗った。

 そのときの俺も、こんな感じだった気がする。

 もしかすると、あのときの弟もこんな思いをしていたのだろうか。


「えーと………はい、できました。右腕はちゃんと回復されているようなので、全身浸かっても大丈夫ですよ」


 少女はそう言いながら、俺の身体を持ち上げて湯船に入れる。

 少女は俺より少し小さいくらいなのだが、意外に力があるらしい。

 そして、その少女の言う通り、俺の右腕の断面は新たな皮膚が覆っており、指でつつくとどこかスライムじみたぷるぷるとした感触が返ってくる。


「あとでその腕の話も聞きますが、今はゆっくりしてください。あの人数に詰められて、怖かったでしょう?」


「んぅ? あ、はい………」


「………なんか溶けてますね」


 湯の温もりが身体の芯を温め始めると、思考に靄がかかり始めた。

 しかも、この状況をどこか他人事に見ている自分も、どこか………


「はぁ〜………」


「気持ちよさそうですね。あんなに警戒していたのに………」









「すみません、服は私のお下がりで少しよれてしまってるかもしれませんが………」


「あ、い、いえ、ありがとう、ございます………」


 私達が滞在している豪華絢爛な部屋の中で、やはり少女はまだ緊張しているのか、どこかぎこちなくお礼します。

 一緒にお風呂に入っていくらか緊張をほぐせたと思っていましたが、まだまだだったようです。


 飼育蜘蛛の真っ白な糸で編まれたシャツとズボンを着た少女は、その肌色と相まって芸術品のような美しさ、というより可愛らしさを醸し出します。

 しかし、何かを怖がるように周りをキョロキョロと見回し、萎縮してソファの上で縮こまっているその姿は、『暴漢に襲われた』だけとは思えません。よほど辛い思いをしたのでしょう。

 だらんと垂れた中身のない袖と、わずかに残る肩に巻き付けられた血痕だらけの布も、それを助長させています。


「あなたの気が向いたらでいいので、何があったのかを教えてくれませんか? 辛いのなら、話さなくても構いません」


「えっと、それは………」


 少女はすぐに応えようとしてくれますが、直後に悩むように言い淀みます。

 応えようとしてくれたということは、やはり助けが欲しいようです。ですが、結局言わなかったということは、この少女自身も後ろめたいことがあるようですね。


「………少し、自己紹介でもしましょうか」


「………え?」


 相手に聞くだけというのは、失礼ですからね。

 相手に聞くなら、まず自分からと言いますし。


「あの悪名高いサイルガ家の唯一の孫、ルルノイ・サイルガです。そして、そちらが………」


「………え、私もですか? えっと、お嬢様の護衛をしております、ベイラと申します」


「そして、もう一人が………」


「同じくお嬢様の護衛をしております、テンです。ですがお嬢様、自ら悪名高いと言うのは………」


「全くの事実です」


 言わなくても、サイルガ家という名前自体が悪名を表していますし。


 少し自嘲気味に笑いながら、少女に向き直ります。

 すると、少女はこちらを信用してくれたのか、口を開きました。


「えっと、サイルガ家………なんですよね?」


「ええ、残念ながら。ですが、それが?」


 少女は少し俯き、直後に意を決したように顔を上げました。


「お………私の名前は、ファドマ・レニアって言います」


「………え?」


 その名前は、私がよく知っている、というより私が作り出した名前でした。

 そして、ここしばらくは、その名を持つサンドワームを探しています。

 しかし、今目の前にいる少女は、どこからどう見てもサンドワームではありません。

 ですが、しかし、いえ………


「ま、さか、ファドマさん………?」


 そう問うと、少女は力なく頷きました。

 この少女を見たときから妙な既視感がありましたが、そういうことでしたか。


「いや、そういうことでも分かりませんけど。えっと、本当にファドマさん、なんですよね?」


 もう一度、少女………ファドマさん、この場合はファドマちゃんですかね?は頷きます。

 信じられません。信じられませんが、嘘をついているようにも見えません。

 ここまで追い込まれた人がまだ嘘をつく理由など、私には思いつきません。『ここまで追い込まれた』が理由になるかもしれませんが。


「ファドマだけならあり得ると思っていましたが、レニアまで知っているのなら………いや、ですけど、ファドマちゃんは人間、ですよね?」


「ちゃ、ちゃん? あ、いや、何でもないです。えっと、今人間なのは───」


 そうして、ファドマちゃんは話し始めます。

 それは、亜人の姿から今の姿になった経緯でした。

 その過程で、どこか聞き覚えのある残虐な行為を聞き取ります。


「………つまり、ある日突然人族になり、さらに身近な人々から理由なく嫌厭されるようになったと………うーんよく知ってますね」


「それをどうにかするために我々は行動していますからね………」


 テンの言う通り、私達はその行為………悪趣味な呪いをかける邪神を、その邪神の加護を得て好き勝手する叔父様方を止めるために行動しています。


 ですが、本当にそうなのでしょうか?

 本当にこの少女が、私の失敗が生み出した、私達が望む探し(もの)なのでしょうか?


「探しているものが、その元凶の呪いを受けてくるなんて、どういう偶然なのでしょうか………?」


「あ、えっと、胸元に紋章が………」


 ファドマちゃんは更なる証明をするためか、唐突に胸元を開けようとしますが、「そういやサンドワームに付いてたんだから、この身体にはないじゃん………」と言って手を止めました。

 しかし、その反応で、ファドマちゃんが言っていたことは真実だと確信できました。

 サンドワームにあの紋章を焼き付けた後は、分厚い皮膚に覆われてすぐに見えなくなったので、別の誰かが見えるはずもありません。


「ベイラのあの反応も、そういうことですか………」


「私も知らず知らずのうちに呪いの影響を受けていたことですね。そう考えると、この感覚が本当に自分のものか自信がなくなりますね………」


 そういうことですね。

 ベイラは以前にファドマちゃんと会っていますから、その影響範囲内だったのでしょう。

 テンは………あまり接点がなかったので、呪いの影響を受けなかったようです。

 私だけは、あの邪神の影響を受けないよう、事前に対策をしています。貴重な魔石を使うので、ベイラやテンにはできませんでしたが。


「信仰を無くした神が闊歩し、問題を起こす時代です。身体が変わることなど、さほど珍しくはないのでしょう。私も、あなたを信じます」


「………え、あ、ありがとう、ございます」


 そこでやっと、ファドマちゃんはほっと息を漏らしました。

 確かに、こんな荒唐無稽な話、にわかに信じられません。

 ですが、私達はその荒唐無稽を可能にしてしまう邪神を知っています。

 まあ、サンドワームから亜人になった経緯は聞いていませんが。そこは、もっと親睦を深めてからなのでしょう。


 なので、次に聞くことは、なぜ騎士と黒ローブ達に詰められていたのか。


「それは………」


 また、ファドマちゃんは言い淀みます。

 ですが、私達のことを信じてきているのか、今回はかなり早く口を開きました。


「えっと、冒険者ギルドの方でお世話になっていたんですけど、その………そこからも追い出されて、それを見た人がいるみたいで───」


 説明はどこ要領を得ないものでしたが、要点は理解できました。

 つまりは、冒険者ギルドと領主の仲を引き裂きたい組織がおり、その一環としてファドマちゃんを見せしめにしようとしていたようです。

 要は、ギルドと関係があるとこうなるぞ、ということですね。浅ましいことこの上ありません。


「………痛かったでしょう。怖かったでしょう。しばらくはここにいてもいいですからね」


「お、お嬢様? その境遇に同情するのは分かりますが、ここは迎賓館で………」


「保護という名目で置くことはできるでしょう。あまり良い顔はされないでしょうが、そんなものはもう、慣れっこです」


「慣れてほしくは、ないんですけどね………」


 私の言葉に一瞬だけファドマちゃんの顔が明るくなりますが、直後に曇ります。

 まだ、気になることがあるようです。


「あ、えっと、その………ギルドに追い出されてから孤児院に入ってて………そこで、その、家族?身内?と会って………その子と仲の良い子に、ずっとあの子のそばにいて欲しいって言われてて………」


「え、えっと? つまりは、孤児院に戻りたいということですか?」


 ファドマちゃんはこくりと頷きます。

 帰りたいのでしたらすぐに帰らせたいのですが、その隙に逃げないとも限らないですし、ギルドに喧嘩を売るような組織がこの程度で引き下がるとも思えません。


「そう、ですね………では、この後すぐに皆で孤児院へお邪魔しましょうか。その後は、孤児院とあなた自身の安全のため、ここに戻っていただきますが、それでいいですか?」


「えっと………はい、それでいいです」


 ファドマちゃんがしたという約束を破ることになるはずですが、それでも帰ることが優先のようです。

 まあ、その前にまずはお昼ご飯ですが。

 この様子から見るに、朝ご飯も食べていなさそうですし。


「ベイラ、お昼にしましょう。人数分のご飯も持ってくれますか? もちろん、ファドマちゃんの分を含めて、です」


「………もう文句は言いませんよ」


 ベイラは深くため息をつきながら、私のお願いに応えてくれます。

 貴族たるもの、甘えてはいけないと理解していますが、ベイラのその優しさが本当に嬉しいです。


「………何ですか。お嬢様の言うことならなんでも聞きますよ。あんな無茶ではない限りは、ですが」


 ベイラはそう言うと、部屋を出ていきました。

 一方テンは、唯一の男性であるが故に居心地の悪そうにしています。

 一応、テンは別室を割り当てられているはずですが、寝るとき以外はこちらの部屋にいます。

 テンも、ベイラと同じくらい優しいです。


 そんな彼らに囲まれた私は、しかし優しくはありません。

 先ほどファドマちゃんに言ったことは全て建前です。

 しかし、あの昏い欲望が理由ではありません。最初から最後まで変わらない、私達の目的のためです。


「それも、私の失敗のせい、なんですよね………」


 誰にも聞こえないくらいの呟きをしながら、目の前の少女を見ます。

 最低でも数年はかかると思っていましたが、こうも早く発見できたことは喜ばしいです。

 ですが、サンドワームが少女になっていたことは、こちらにとって大変な痛手です。

 それとも、あの邪神は分かっててやったのでしょうか。




 なぜなら私達は、サンドワームと叔父様方に()()をさせようと考えていたからです。


 それが最善だと信じて。








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