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え、あ、はい、ワームですよ?  作者: 素知らぬ語り部
祝福された呪い子

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78、巣から落とされた雛は







「で、きません。あの子はもう、私達の一員で………」


「確かに、それは否めません。ですが、あの領主ならば約束を違えることはないはずです」


「ええ、褒賞は遅れていますが、あの領主なら間違いなく………」


「………な、ぜ、そのようなことを?」


「その理屈は分かりますし、事情も理解できます。ですが、それとあの子にどのような関係が………」


「それだけ、なのですか? それだけで、このようなことを?」


「脅すつもりなのですか? ですが、私達は子どもを売り渡すようなことは………」


「………子どもではなくとも、あの子は私達の一員です。あなた達には渡しません」


「まさか、褒賞を渡さないと、おっしゃるんですか?」


「………取引、ですか。それは体裁だけでしょう?」


「実態は、ただの脅し。それも、武力を伴った悪質なものですか」


「本当は、私の返答も必要ないのでしょう? 女子どもだけの私達に負ける道理もない」


「………機会、ですか。私はそれに、感謝すべきなのでしょうね」


「ええ、リムンディア様の信徒は私達だけです」


「縁を切るべきでないと、言いたいのですね」


「………………ええ、それを飲みましょう」


「ですが、本当に褒賞の届けを早めてくれるのですか?」


「はい? 二倍の褒賞に教会の修繕? それに食料も、ですか?」


「今の惨状に痛める心があるのなら、子どもを寄越せなどという非人道的な要求などしないはずですが」


「それで、あの子をどうするつもりですか? 導紡師である私は、それを知る義務と責任があります」


「………見せしめ、ですか」


「治癒して帰す、ですか。傷つけるつもりなんですね」


「………その言葉を、信じます。私には、それしかできませんから」


「慰めているつもりですか? 原因はあなた達なのですがね」


「ええ、そうですね。これで話は終わりです」


「では、明日のここで、ですね」


























「ふう………めっちゃ時間かかった………」


 穴に対して実が大きかったのか、全て出すまでに相当な時間がかかってしまった。

 その時間、一つの個室を貸切状態にしてしまったのは心痛い。まあ、結果的には誰も来なかったが。

 ちなみに、トイレットペーパーはなく、雑巾のようなタオルで穴を拭くシステムのようだ。案の定、物凄い汚れている。


「なんかこう、身体を綺麗にする魔術とか………いや、無理か」


 あるアニメではそういう魔術があった気がするが、どういう原理で綺麗にしているのかなどの疑問が残ってしまう。

 逆に言えば、それを解決できれば作れそうだが………


「そもそも俺は使えんか。りゅか姉ちゃんに言ってみようかな」


 とりあえずズボンを履き、個室を出る。

 手洗い場という名前である以上、ちゃんと手を洗う蛇口はあったが、公園にある手を洗うだけのものと同じく、流し台はなくそばにある溝から外へ排出する仕組みのようだ。

 もちろん、石鹸はない。


「蛇口があるってことは、ポンプとかも開発されてるんかな………」


 俺には知りようのない疑問を抱きつつも、手を洗って手洗い場を出る。

 すると、大広間が騒がしいことに気づいた。

 子ども達が口々に「お帰りなさい」と言っているので、ビューリさんが帰ってきたようだ。

 とりあえず状況を把握するために、大広間に移動する。


 大広間には子ども達に囲まれた導紡師達が話しており、特にアイさんは何かを嫌悪するような表情をしていた。


「それで、どこ行ってたの?」


「褒賞について、領地管理官の方と」


「………嘘つき」


「あ、ちょっと、アイ!?」


 大広間に入る俺とすれ違うように、アイさんが早足で台所へと入っていく。

 その後、バン!と大きな音を立てながら、台所のドアが閉められた。


「あ、マレちゃん。どこ行ってたの?」


「ちょっと、トイレ………手洗い場に」


「ああ、マレさん。あなたに伝えなければならないことがあります」


 シーエさんとビューリさんがこちらに気づき、子ども達の囲いから出て近づいてくる。

 軽い様子のシーエさんに対して、ビューリさんは一層真面目な表情で俺を見つめてきた。


「明日の早朝、私と一緒に街へ出ます。そのつもりで準備していてください」


「え? でも、マレちゃんは体調が………」


 シーエさんの言う通り、俺は外出できるほどの体調だとは思えない。

 無理すればできるのだろうが、それほど大事な用事があるということなのだろうか。


「すみません。無理を言っていることは分かっています」


「大丈夫です。えっと、明日の朝ですよね?」


「ええ? ダメだよマレちゃん。ちゃんと休まなきゃ」


「まあ、多分大丈夫です」


「多分って………」


 こちらとしては孤児院に入れさせてもらっている身だ。

 その孤児院の管理をしている人から要求があるのなら、それに従うべきだろう。


「オババ、そこまでなの? 体調悪い子を連れ出すなんて………」


「………私達には、それしかできないのですから」


「え? オババ、それってどういう………」


 俯くビューリさんにシーエさんが問いかけようとしたとき、子どもがシーエさんの裾を引く。

 その手は赤く染まっており、もう一方の手にはその原因と思われる鋭い枝が握られていた。


「え!? ちょっ、どうしたのこれ!」


 シーエさんはすぐに懐から布を取り出し、その子の手当てを始める。

 ビューリさんも慌てて台所へ向かった。そこに治療器具があるらしい。


 そして、俺とすれ違うとき、ビューリさんはどこか諦めたような目で俺を一瞬見た。


「………なんかあったんかな」


 治療の邪魔にならないようにするため、寝所に向かう。

 しかし、途中でアイさんとビューリさんが台所にいることを思い出し、それとなく耳を傾けた。

 アイさんとビューリさんは先ほど、少し険悪な雰囲気になっていた。しかしすぐに向かい合うことになれば、人付き合いの浅い俺でもマズイことは分かる。


「───ので、マレさんには───」


「何を───裏切り───」


「───が、あの自警───武力を───」


「───信じて───でも、私は───」


「アイは───分かります。しかし───」


 そこまで聞こえた瞬間、ドアが勢いよく開かれ、ちょうど目の前にいた俺とアイさんの目が合う。


「なんっ、聞いてた?」


「あいや、寝所に行く途中ってだけです………」


「………そう」


 あちらから聞いてきたが、アイさんは俺の返答を興味なさそうに聞き流し、大広間へと向かった。

 それを追うように、ビューリさんも台所から出てくる。

 そのときにまた俺を見たが、よほど切羽詰まっているのかすぐに走っていった。


「………厄病神、かな」


 二人があんな関係になっているのは、十中八九俺のせいだろう。

 どうやら俺は、いくつものトラブルを引き寄せる体質のようだ。


『あれ、そんなとこで何してるの? 台所は入っちゃいけないよ?』


『あ、ただ通りがかっただけ』


 外から帰ってきたらしいりゅか姉ちゃんに注意されるが、台所に入るつもりはない。

 一応、開けられたままのドアを閉じ、寝所へ向かう。りゅか姉ちゃんはその後を追ってきた。


『魔術はいいの?』


『いや、それより稀君のことが気になるから。お昼ご飯も食べなかったでしょ? ちゃんと休んでるか見てないと』


『ちゃんと休むよ………』


 いつの間にか入れてくれていたのか、俺のベッドにはすでにマットレスが用意されていた。

 その上に寝転がりながら、メモを眺める。りゅか姉ちゃんは昨日と同じように隣のベッドに腰掛けた。


『………寝ないの?』


『まだ眠くないから。りゅか姉ちゃんは?』


『私はさっきまで動いてたからねぇ。あ、膝枕する?』


 りゅか姉ちゃんはそう言って、自分の太ももを軽く叩く。

 確かにこのベッドに枕はないが、それでも十分眠ることができる。わざわざりゅか姉ちゃんの膝枕を使う必要はない。


『そう? 私はやってみたかったけどねぇ』


『別にいいよ………』


 ほんのり眠気が来たので、メモを閉じて目を瞑る。

 その瞬間、ベッドが軋む音とともに少し沈んだ。どうやら、りゅか姉ちゃんがこちらのベッドに移ったようだ。


『りゅか姉ちゃん………?』


『ん? いいよ、寝てて』


 なぜこちらに来たのか分からないが、そう言っているので気にせずに眠気に身を任せる。


 とりあえず夜には起きて、夕食を食べて体、力を………


『ん、おやすみ』
























「───レさん、マレさん、起きてください」


「………………んぅ?」


 ビューリさんの声が聞こえ、心地よい暗闇から引き戻される。

 目を開けると、薄暗い中で俺を覗き込むビューリさんと目が合った。

 夕食にしては、少し遅い気もする………が………


「あれ、これ………」


「ええ、朝です。昨日はいくら揺すっても起きなかったそうです」


「そう………なんですか」


 窓からは登り切っていない朝日のほのかな光が差し込み、空は薄紫色に染まっていた。

 体力回復のため、長時間寝たと思われるが、さすがに腹は───


「───減ってない? どうなってる………?」


 それどころか、満腹になっているような感覚がある。

 しかも、それには覚えがあった。サンドワームから人へ変わったとき、何も食べずとも常に満たされていたような、あの感覚が。


「確か、魔化?だっけ。あ、配布Mが減ってるのってそういう………」


 なぜ魔化が起こっているのかは分からないが、配布Mが勝手に減少している原因は分かった。

 しかし、以前の魔化では、このまで不調は出なかったはず。むしろ、欠けた部分がないのではと思うほどに満ち足りた感覚があった。

 では、この身体の数々の不調は一体………


「マレさん、大丈夫ですか? そろそろ出発しようと思っているのですが」


「あ、は、はい、分かりました」


 ベッドから降り、木箱の中身を整理する。

 持っていくのは………身分証と、渡り鳥の祈願でいいだろう。

 渡り鳥の祈願で留めるほどの髪はなくなったが、腕などに巻いておけばいい。


「準備はいいですか? では、出発しましょう」


 手ぶらのビューリさんについていき、子ども達を起こさないように慎重に歩き、大広間に出る。

 すると、大広間から外へ出る大きな両開きのドアの前には、アイさんとシーエさんが並んで立っていた。

 そして、そのどちらもが、険しい表情をしている。


「………オババ、本当に行くの?」


「ええ、私達にはそれしか、できませんから」


 ビューリさんの返答を聞き、シーエさんは複雑な顔をしながらも一歩退く。

 代わりに前に出たのは、アイさんだ。


「ねぇ、これだけ聞かせて。本当に………守るため、なんだよね?」


「………ええ、皆を、ここを守るためです。嘘偽りはありません」


「………分かった」


 アイさんはそれだけ言うと、ドアの前から退いた。シーエさんもそれに合わせて、横にズレる。


「………二人が疑うのは分かっています。ですが、私達は導紡師です。導紡師なのです」


 そっと、俺の頭に手が置かれる。

 少し驚いて上を見ると、優しそうな、それでもどこか諦めたような瞳のビューリさんがこちらを見つめていた。


「守り手では、ないのです。ただの、導き手なのです」


 頭を撫でていた手が返され、俺に何かを望むような形になる。

 これは、手を繋ごうという意味だろうか。


 その予想は当たったらしく、犬のようにビューリさんの手に自分の手を重ねると、そのしわだらけの大きな手が、俺の小さな手を包み込んだ。


「私達には誰かを導く責務があり、それを全うしなければなりません。その上での犠牲も、理解しながら」


 ビューリさんが歩き出し、俺も手を引かれて進み始める。

 大きなドアが開かれると、冷たい微風が身体を撫でた。


「マレちゃん、その………頑張ってね」


「え? あ、はい」


 そもそも何をしに行くのかすら聞かされていないが、シーエさんの深刻そうな表情を見る限り、生半可なことではなさそうだ。

 だからといって、今から拒否するなどできはしないが。


「それでは、行ってきます」


「うん………行ってらっしゃい」


 アイさんはもう引っ込んだのか、シーエさんだけが見送り、ビューリさんとともに早朝の街中を歩く。

 足を包んだだけの安物の靴がジャリジャリと砂の地面を踏み、そのたびに街の中心部への距離が縮まっていく。


 やがて、周りの景色はただの空き地から水殿だらけになり、店の用意でもしているのか明かりがついているものもあった。

 この中の一つに仕事しに行くのかと思ったが、ビューリさんは路地裏に通ずる細い道に入る。


「えっと、ビューリさん、これってどこに向かっているんですか?」


「………心配することはありません。あと少しで、着きます」


 少し怪しい気もするが、あと少しで着くとのことなので黙ってついていく。

 道はやがて路地裏となり、水殿も明かりがついていないものだけになった。

 ここに働く場所があるとは信じられない上、あったとしても信用できるか怪しい。経営が厳しいとのことだったので、そういうところの働き場も必要なのだろうか。


「………着きました。ここです」


「………ここ、ですか?」


 しばらく歩いた後に辿り着いたのは、路地裏の奥の奥、水殿の裏口が多く見えるちょっとした広場。

 白い水殿に囲まれる空は、すでに水色に染まっていた。


 辺りを見渡しても、誰かが勝手に捨てたらしい木製バケツや日陰でも逞しく育つ雑草ばかりで、他は何もない。

 仕事を紹介されるのかと思っていたが、ここで仕事があるとは思えない。

 では、こんなところで何を………


「お待ちしておりました、ビューリッヘェンさん」


 どこからともなく、低い声が響く。

 それは聞いたことがある声であり、瞬時に逃げた方がいいと判断できるものだった。


「さて、ビューリッヘェンさんには申し訳ないですが、この場では一旦立ち去っていただきます」


「………分かりました」


「え、ビューリさん………?」


 どこから聞こえるのか、どこから話しているのか分からない声に、ビューリさんは否定もせず従い、この場から去ろうとする。


 逃げた方がいい。そう分かっていても、ビューリさんが何か考えていることは察している。

 俺が逃げることで、その考えを台無しにしたくない。

 そもそも、逃げるほどの体力も残っていない。


「………では、私はこれで」


 そう一言残し、ビューリさんは曲がり角の先へ消えていく。

 それを合図にしたかのように、この広場に通ずるいくつかの路地から複数の人影が現れた。

 その中には、先ほどから聞こえていた声の主もいる。


「………初めまして、お嬢さん。私は下級騎士のハルゴールと申します」


 黒いローブで全身を隠している数人のうち、唯一ローブではなく鎧を纏う騎士が一歩近寄ってきた。

 神無塔の調査の際、俺を疑っていたハルゴールさんが。
























「………あれ? 稀君?」


 騒がしい子ども達の声で目が覚めたら、稀君はもうベッドにいなかった。

 あの広間に行ってるのかな。


「稀くーん? あ、アイレ。稀君知らない? って、分かるわけないか」


 広間の方でアイレを見つけたけど、アイレも何かを探してるみたいで、高齢のシスターに詰め寄ってた。

 私の言葉はそもそも聞いてないみたい。


『あの子は、マレはどうしたの!』


『ですから、じきに帰ってきます。そう心配することでもないですよ』


『今まで、街組以外で仕事に行ったことってないじゃない! しかもあの子は病人よ!? なんで連れてったの!』


『それは………マレさんにしかできないことだからです』


 ほとんど怒鳴ってるみたいに叫ぶアイレと、それを宥めるシスター。

 子ども達が騒いでたのは、このせいみたい。言葉が分かれば、何の話してるのか聞けるのになぁ。

 稀君の名前が聞こえるから、稀君についてなんだろうけど………


『病人にしかできないこと? まさか、そういうやつに売ったとか………!』


『そのようなことは断じてありません。ですから、マレさんはちゃんと帰ってきます』


『………本当でしょうね?』


『ええ、リムンディア様に誓って』


 シスターがチラッと、女神像の方を見る。

 アイレもつられてそっちを見て、渋々みたいな雰囲気で引き下がった。


「………言葉が分かればなぁ」


 会話の内容も分かるのに。

 とりあえず、稀君を探さなきゃ。


「稀くーん? どこ行ったのー?」


 体調がだいぶ悪かったはずだけど、どこに行ったんだろ?


 そうキョロキョロしてたからか、アイレが私の腕を掴んでくる。

 びっくりしてアイレの顔を見たら、いつものような慈愛の表情にちょっとだけ、嘘が混ざっている気がした。


「アイレ………?」


『心配しないでいいらしいわよ。そのうち、帰ってくるそうね』


「だから分からないって………」


 うーん、でもこの感じ、大丈夫そう?

 でもやっぱり、あの子がベッドで休んでないのはちょっと心配………


『だから大丈夫って。魔術でも使ってなさい』


「あ、ちょっと………」


 アイレに手を引かれて、無理やり外に連れ出される。

 外は暑い日差しが出ていて、とても眩しい。だけど、もうこの明るい光には慣れている。

 暑さはまだ嫌だけど。お風呂がないから、汗を流すこともできないからね。


『ほら、昨日みたいに魔術で遊んだら? ちゃんと使えるようになったら、ヘネレンシー教授みたいに有名になれるかもよ?』


「………あ、お風呂作る魔術とか作ってもいいかも」


































 正面に集中していると、突然両腕を捕まえられる。

 咄嗟に振り向くと、俺を囲む人々のように黒いローブを着ている男が二人、逃がさないようがっしりと腕を掴んでいた。


「手荒で申し訳ありません。ですが、これもこの街のため。あなたには少々協力してもらいたいことがあるのです」


 ハルゴールさんがさらに近づき、身動きのとれない俺の頬を撫でる。

 それだけで、敵わないと直感的に理解した。


 この人には、絶対に勝てない。


「快く了承してもらい、感謝します」


 俺はただハルゴールさんを、騎士道精神の欠片もなさそうな騎士を見ていただけだが、勝手に了承したことになった。

 そして、話は勝手に進んでいく。


「この街を見れば一目瞭然ですが、現在は冒険者ギルドと領主が仲違いをしているようなのです」


(………そうだったの?)


 雰囲気が悪いことは分かっていたが、まさかギルドと領主の仲が悪くなっているとは。

 いや、轟雷龍の襲撃の際、俺を匿うためにギルドマスターは領主と対立するような言動をしていた。それが尾を引いたということなのだろうか。


「実質営業停止状態になった冒険者ギルド………そこから出てきた人物が一人、いるのです」


 俺のこと、なのだろう。

 だが、それにどういう意味があるのだろうか。


「我々の目的は、領主様の敵を全て消すことです。ゆえに、冒険者ギルドにはこのまま自然消滅していただきたいのです」


「は、はあ………」


 だから、なんだろうか。

 冒険者ギルドには戻れない上、追い出されている。そんな俺がどう関係しているのか全く分からない。


「ここまで言っても分からないですか。では、行動で示すとしましょうか」


 シャン………と静かな音を立てて、ハルゴールさんが剣を抜く。

 その剣には装飾がないものの、柄や鍔は黄金色に輝いており、明らかに高級品だと分かるものだった。

 そして、その剣先は俺に向いている。


「ふむ、右か左か………」


 剣先が揺れて、それに合わせて腕を掴んでいる男が俺の腕を横一文字に伸ばした。

 これは、つまり………


「え、ちょっ、待っ───!?」


「分かりやすい右がいいですかね」






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