バカと賭けと罰ゲーム
「うぅ……ぐすっ、酷い目にあった……」
スコール、ネーベル、クロード。
男衆のみと話をしていると半泣き状態のレイズが出てきた。
いつものズボンを穿いているが、上半身は相変わらず裸で今はべとべと。
一体何をされたんだか。
「で、いったい何をしたんだい? 君」
「カプサイシンを練り込んだ塗り薬とテンタクルスシード」
「……君ねえ、それはやっちゃいけないことだろう」
「レイズが相手ならいいだろ」
酷いことを言っている。
スコールは本当に酷いやつだ。
なんでこんなことが平気でできるのやら。
「まあいい、座れ」
「あのなぁ! オレが立場上一番上なんですけどね!」
「涙声で言っても説得力無いからね」
「お前ら二人とも死んじまえ!」
「「断る!」」
「…………」
席に着いたレイズが突っ伏して本格的に泣き始めた。
寄ってたかって美少女をイジメるネーベルとスコール。
こいつらはフラグを立てようとかいう考えはないのか。
「大丈夫かレイズ?」
「ぐすっ、結局味方はクロードだけか」
「俺が帰るためのゲートはできてるんだろうな? できてないなら味方しない」
「……くそっ、マスター! 一番強いやつ頼む」
自棄になりやがった。
ラウンドテーブルを囲む俺たちのもとに茶色い酒が運ばれてくる。
「お嬢さん、なにがあったか知らないけど服はちゃんと着ろよ」
「うっせーこうなりゃ自棄酒だ! 肴も適当に持ってきやがれぇー!」
ぐいっと、一口。
そして、
「げほっ、げふっ……喉が焼ける」
「おいレイズ、それニュートラルスピリッツだからそのまま飲むもんじゃねえ」
「……そういうのは早めに行ってくれよクロード」
クロードの背中をさすられながらむせこんでいた。
今のところレイズに一番優しいのはクロードだ。
「久しぶりに賭けをしないか」
「いいねそれ」
スコールが言い出し、ネーベルが手品のようにトランプを取り出す。
レイズのことはガン無視だ。
こいつら酷い。
「俺も参加していいか? 前の負け分を取りかえしておきたい」
「これで負けたら笑いものだよクロード」
「ネーベル、お前こそセコイ真似はさせないからな」
そして男三人は揃ってレイズに視線を投げた。
「オレもやったらぁ」
その一言で三人から「引っかかった」という気配が伝わってきたのは気のせいだろう。
さすがに一人から巻き上げるほど酷いやつらじゃないと思いたい。
「で、アキト」
「やらねえよ!?」
さすがに鴨にされる気はない。
いくら鴨られても金はあるから大丈夫だけど、こういう形で浪費したくない。
ギャンブルに注ぎ込むなんてやっちゃいけないことなんだ。
「そうじゃなくてディーラーをしてくれないか。不正とか言われたくないからね」
「そ、そういうことなら」
トランプを受け取って軽くシャッフル。
ごく普通のトランプ……じゃねえ!
これよく見たらブランクルーンカードじゃねか!
「テキサス・ホールデム。ノーリミットで強制ベットはなし」
「乗った」
「いいだろう」
「やってやる」
おうおう、やる前からネーベルの邪な目論見が……。
いやいいか。もし何か言われたら逃げよう。
光属性の魔法でフラッシュバンを起こして壁抜けで逃げよう。
「それじゃ頼むよ」
テーブルの真ん中にカードを五枚並べる。
そしてそれぞれに二枚ずつ配る。
さて、このポーカーは誰が勝つ……。
「ベット」
最初の掛け金が置かれる。
「コール」
「引き揚げ」
「コール」
一巡。
カードを一枚表にする。
ハートのエースだ。
「引き揚げ」
「引き揚げ」
「お前ら何企んでる……コール」
「引き揚げ」
一巡。
二枚目のカードを表にする。
ダイアのエースだ。
「ベット」
「……なんか嫌な予感が」
レイズはコンコンとテーブルを叩いた。
チェック、つまりパスだ。
「引き揚げ」
「コール」
一巡。
三枚目をカードをめくる。
クラブのエース。
……おい、エースが揃うぞ。
「増やしたくねえ……コール」
「引き揚げ」
「コール」
「引き揚げ」
一巡。
四枚目のカード。
ハートのキングだ。
「引き揚げ」
「チェック」
「引き揚げ」
「チェックしかない」
一巡。
テーブルの上には金貨の山が……。
これだけあったら半年は遊んで暮らせると思えるほどの額だ。
「さあ、最後のカードをめくるんだ」
カードをめくる。
クラブのジャックだ。
「ショーダウン」
ネーベルは手持ちのスペードのエースとでフォーオブアカインド。
クロードは手持ちのジョーカーとでフォーオブアカインド。
スコールは手持ちのジョーカーとでフォーオブアカインド。
レイズは手持ちのジャックとキングでフルハウスとワンペア。
「お前ら三人揃ってイカサマか!?」
「…………」
「…………」
「なんか、レイズが可哀想だな」
クロードだけが言葉を発し、ちょうど酒場のマスターが肴を持ってきた。
塩気の強い燻製肉とチーズだ。
「お客様、あまりテーブルの上にお金を出さないようにお願いします」
それだけ言ってカウンターの向こうへと消えていった。
「うん、いい稼ぎだ」
「取り分は取った。じゃあな」
レイズの掛け金が三等分され、二人が回収してそそくさと逃げる。
酷い。
最初から……。
バタンッ!
「なんだよもう……」
レイズがテーブルに頭を打ち付けながらぼやいた。
「はぁ……俺の分は返す」
「すまんクロード。その半分はもらってくれ」
「いいのか?」
「構わん」
そんなこんなでレイズとクロードが適当に飲んで食って、支払いを済ませるときに悲劇は起きた。
「金が足りない……」
そう、レイズが頼んだ酒が店で一番高いやつ。
それも希少なものだったらしく、手持ちでは足りないということに。
「貸してあげようか?」
なんとも計ったようなタイミングでネーベルたちが姿を見せる。
レイズはレイズで俺やクロードに借りるという考えがなかったのか、悪徳金融に手を出してしまった。
出してしまったからには後戻りができなくなるのだよ……。
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「っで、なんでこうなるんだよ!?」
借金チャラの条件に提示されたものをレイズは否応なく飲んだ。
なぜかと言えば借金は一日当たり十割加算されていくという無茶苦茶なものであり、且つ逆らったところで勝ち目がないということだから。
現在のレイズの格好はと言えば、とても可愛らしいものだ。
頭には羽根飾り。
着ているのは白を基調に青で装飾されたアイドルが着ているような服。
腰には青地に白糸で装飾されたミニスカート。
そしてすらっと伸びる健康的な足は黒いニーハイソックスと青い紐の白いブーツ。
絶対領域がなんともいえないなぁ……。
うん、初めて会った時と同じ格好。
オレのリュックの中で保管されていたアレですよ、アレ。
こうしてみるとほんとに会えるだけでもラッキーな美少女だ。
胸が……残念だけど。
「うんうん、似合ってるじゃないか。着る服もちょうどなかったことだし、いいんじゃないかな」
「だな。後でナイトリーダーたちにも見せてやれば話のネタになる」
「おめーら後でぶち殺してやる……!」
その格好で言ったところでなぁ、可愛い女の子が半泣き上目遣い……。
いくら殺気を放とうとも自身の美少女オーラに上書きされて効果がない。
「でも可愛いよね~レイズ」
「蒼……お前も分かって言ってるかそれ?」
「うん」
かくんっ、とレイズが項垂れた。
そんなに嫌なのだろうか。
素でかなりいい見た目、言葉遣いが良ければいいとこのお嬢様なんだが。
「それじゃ僕たち出かけてくるから」
ネーベルたちが酒場の出口に向かう。
そのとき蒼がさっとスコールに腕を絡ませた。
スコールは迷惑そうな表情を見せたが、その瞬間にレイズの放つ気配が妬みのようなものに変わった。
「チッ……」
「どした?」
「なんでもねえよ」
なにか不貞腐れているようだ。
「好きなら好きって言っちまえよ。取られてからじゃ遅いぞ」
黙っていたクロードが肩に手を乗せながら言った。
「……いーですよーだ。オレにはあいつが……」
「死んでからじゃ何も言えなくなるぞ。いつまでも引きずってんじゃねえ、俺たちはいつでも戦場を駆け抜けてんだ、いつ死んでもおかしくはない。だから言える時に言え」
「はぁ…………アイゼンにも似たようなこと言われたなぁ……」
項垂れたままレイズは部屋へと戻って行った。
もしかして……スコールのことが……?
まさかね? いやでも化け物クラス同士あり得るのか?
次回更新は7月4~5日の予定です。




