5-3 黛良太⑥
黛良太は、目の前で繰り広げられている魔法少女と悪魔の攻防をただ呆然と眺めていた。
「なんだよ、これ」
六花がおかしくなったと思ったら赤い髪の悪魔に姿を変え、叶は魔法少女に変身した。
頭のどこかでは理解している。
でも気持ちが追いついていない。
六花からの告白のことでギクシャクしてるところもあったが、ついさっきまでこれまで通りを送っていたはず。
なのにどうして、こんなことになったんだ。
「黛も体験しただろ、これが魔法少女とメアの戦いだ」
「あんたは……」
ナハトは良太を一瞥して、
「お前たちの言葉でいえば、天使だ。名前は今はナハトと名乗っている。倉田叶、つまりロザリアの監視役、天使位第六位だ」
「……夢じゃないのかよ」
「否定する順番が違うのではないか?」
天使の言葉はその通りだ。
俺は……叶が戻ってきた夜、人狼に襲われた。そしてロザリア――叶に助けられた。叶とロザリアが同一人物だと推測したのは、彼女の癖だった。
あいつはいつも困ったことや嘘を吐くときに、自分の髪を弄る。
月明かりのしたでみたロザリアも、カフェや学校でみた叶も、二人とも髪をいじっていた。もちろんそれだけが理由ではない。
直感に似たものだ。
「いつから叶はこんなことをしてたんだよ」
「彼女が言っていただろ、一ヶ月前からだ。一ヶ月前の爆発事件で生命を失い、それからだ」
叶は一ヶ月前に生命を失った……。
それを聞いても良太は取り乱さなかった。六花が死んだというのも同じだった。
なぜか。
簡単だ。
今日まで六花も叶も、自分と一緒の時間を過ごしてきた。
彼女たちが死んで生き返っていたなんて信じられない。
だから良太は自分が経験したことを信じることにした。
「あんた、叶の監視役だろ、だったら助けてやってくれよ!」
ナハトの法衣を掴み訴える。
「それはできない。いや、できたとしても倉田叶は拒むだろう。思い出してみろ、彼女はなんといっていた?」
泣きながら自分のことを話していた叶はなんといった?
思い出せ、わずか数分前のことだ。
思い出せ。
彼女は契約したと言っていなかったか?
法衣から手を放し、
「……神と契約して、生命をもらった」
「そう。彼女がレヴィア――メアと戦うと言うことは契約を履行しているということだ。今回は特に無理だろう」
「叶が自分の手でりっちゃんを救いたいから」
「そこまでわかっているなら、見ていろ。彼女が魔法少女として何を選択し、何をしてきていたのか」
頷き、目の前で繰り広げられている攻防を見守る。
だが、良太の心に沸き上がるものがある。
――俺は幼なじみ二人が戦っているのをただ見ていることしかできないのか。
それは自己への怒りだった。




