4-7 白原六花③
なんで?
ねえ、なんで?
わたしじゃ、どうしてダメなの?
やっぱり、カナみたいな子じゃないとダメなの?
屋上の隅、日も当たらない場所で、六花はぽろぽろと涙を流していた。
何度も何度も、涙を拭うが止まらない。
人が告白をしたときどうして泣くのだろう?
告白に失敗した自分が可哀想だから?
それとも自分の想いが届かなかった。その事実を悔やむのだろうか?
いや、告白したことで、良好だった関係が崩れてしまうからだろうか?
――相手の想い人が憎いからよ。
声が聞こえた。
どこかで聞いたことがある声な気がした。
「誰?」
真っ赤に腫らした目で周囲を見るが、誰もいない。
「だれ!」
今度は大きな声で問いかけた。
反応したのは、屋上でお弁当を食べている生徒達ぐらいだ。
誰もいない。
だが、声は続ける。
――あなたが泣いてるのは、憎くて、憎くて、しょうがないのよ。
「わたしはカナのことが憎い訳じゃない」
声に向かって反論していた。
幼なじみが憎いわけがない。
わたしはカナのことをそんな風に思っていない。
――いいえ。あなたはカナっていう子が憎いのよ。いい、その感情をなんていうか知ってる?
「え?」
艶やかな笑い声が、下品な笑い声が、せせら笑う声が、聞こえた。
あはは。
アハハ。
ははは。
――それはね? 嫉妬っていうの。自分が欲しいものを奪い、手に入れたものに嫉妬してるのよ。
「そんなことない!」
――そうかしら? じゃあ、もしもカナって子がいなければどうかしら?
叶がいなかったら?
そんなifのことを考えたことなかった。
叶と良太、自分はいつも一緒だったのだから。
誰かが欠けるなんて考えたことない。
でも。
もしも。
倉田叶が、黛良太の隣に居なかったら?
そうしたら、彼の隣には自分だけ。
彼の笑顔も、優しさも全部……。
――そうよ、あなただけのものよ。
艶やかな声は、六花の胸の内を見透かしたように入り込んでくる。
邪魔者を排除すればいい。
どんな手を使っても、それが相手を傷つけることになっても。
そうすれば、黛良太は自分を見てくれる。
「それはダメ……そんなカナを傷つけるなんて」
ダメだ。それはダメだ。
良太と自分と、叶はこれからもずっと幼なじみだ。
それなのに彼女を傷つけてしまうわけにはいかない。
声は再びせせら笑う。
――いいじゃない。その子がいなくなれば、彼はあなただけを見てくれる。そうしたら幸せじゃない。
良太が自分だけを見てくれる?
それはとても魅力的に思える。
だが、できない。
「わたしは……わたしは……」
――何を迷うの? いまさら迷っても仕方ないのよ? もっと強欲になりなさい。
「え?」
――だって、あなたはもう■■でるじゃない。




