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さよならホームラン  作者: 多手ててと
6回

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30/47

6回表(4)

 5回の裏、こちらの攻撃は三者凡退。相手さんもかなりいい投手を出してきてくれたみたい。真っ直ぐ、変化球、コントロール、配球。全部お手本にしたいぐらいやね。前の回で追加点が入ってくれて良かった。後で思えばここで少し流れが変わったんかもしれん。


 うちがマウンドを降りて3番手の星野が2アウト一塁から1発を浴びたけど、あれは打った方を褒めるべきやろう。星野は120キロのボールを投げられるアンダースロー。持ち球はストレートの他にカーブ、シンカー、チェンジアップ。キャッチャーに戻ったうちは外側にカーブを要求したんやけど、それが真ん中やや低めに来てしまった。相手はそれを見逃さず、鋭いスイングで上手く救い上げられた。バックスクリーン直撃の豪快なツーランホームラン。うちがもっと警戒すべきやった。


 いわゆる「流れ」はプレイしていると感じることがあるけど、基本的には心理的な要因によるもの。せやからメンタルトレーニングで改善することができる。ネガティブ思考は連鎖してまうから、ポジティブシンキングで切り替えんとあかん。それに失敗するとビッグイニングを作られてしまう。


 「星野、今のは油断したうちのせいや。切り替えていくで。バックもたのむで」


 今回も内野はもちろん、外野も大きな声で返事を返してくれる。ほんま頼もしいわ。こいつらをあと2年鍛えたら本当に甲子園は夢やない。というか甲子園に行かなあかんやろ。


 そして試合はその後は淡々と7回、最終回まで終了し、関西中央大との練習試合は4対2で勝った。いや、これはホンマにすごいことやよ?


「まさか高1だけのチームに負けるとは思ってなかったよ」


相手のゲームキャプテン(もちろん1回生)にも、自嘲気味にそう言ってもらえた。そら立場が逆やったらうちかて苦笑いするしかないやろ。


「いえ、今日うちのメンバーは出来過ぎでした。データもこちらが一方的に持ってましたし。それでも10回やって勝てるのは1回、その1回が今日だったと思います。ですから……今度は9イニング制でもう1回やりませんか?」


 相手が標準語なのでうちもそれに合わせる。多分関西出身やないと思う。


4点のうち2点はトモカズのツーランホームラン。残りの2点は黒木とうちの連続タイムリー。4回までに4点取って、そっから2点返された。7イニング制の練習試合という一発勝負。情報戦とかいろいろこちらが有利やったとは言え、強豪の大学生相手に勝つんはめちゃ凄いことやねんで。相手は1回生だけやけど、それでも凄い。


 これやったら組み合わせ次第で夏の大会でそこそこええとこまで行けるかもしれん。何回も言うけど大阪大会はこの時代まだシードが無いから組み合わせ次第の運任せやけどね。


 だが実は当初うちが想定してた練習ができなかった。


 つまりボコボコにどつきまわされる練習。相手にチャンスをガンガン作られ、点を取られないようにするのではなくて、いかに取られる点を減らすか、という練習試合。大差で負けていても心が折れず、死に物狂いで抵抗し、わずかな勝機を目指す練習。うちの今日のテーマはそれやってん。なんか勝ってしもたけど。


「そうですね。じゃあ早いうちにやり返す予定を決めさせてください」


 最近、リベンジという言葉がはやり始めているが、その単語は出てこなかった。


「よろしくお願いします。本日は本当にありがとうございました」


 うちだけやなく、チーム全員で頭を下げた。うちの連中もこういうのはちゃんと中学までで仕込まれてるんよな。


 帰りの電車の中で設楽が言った。


「いやいや、関西中央に勝てるとは思わんかったわ」


 レフト、ファースト、ライトと3つのポジションを危なげない守備で守ってくれただけで花まる合格点なんやけど、打席に入っては三振2つでノーヒット。相手が相手やからしゃーないんやけど、設楽にはもっと欲を出して欲しいと思う。そのうちネジまき直したるからな。


「確かに大学生に勝つと自信になんな」


 今日、先発を務めた笹沢も格上相手に6人で2イニングを終わらせて自信になったみたいやね。せやけど自分(二人称)、初回の連中が懲罰交代されたのを忘れたらあかんで、思いっきりなめられてたんやで?


「これ、1年目でも結構いいとこいけるんちゃう?」


 最後は外井。こいつらホンマに調子に乗ってんな。今日の結果が望外の成果やねん。実力は完全にあっちが上やねんで。


「そんな絶好調なみなさまに素晴らしいお報(しら)せがあります」


 うちは決定事項を早めにこいつらに伝えることにした。幸い電車は空いてるから他の乗客の皆様の迷惑にはならへんはずや。


「な、なんやねん? なんか企んでるんか?」


 設楽がうちに聞く。企むてあんた。


「最後な、やっぱりリベンジマッチしたいんやて。再来週やねんけど、午前午後、コールドありの9イニング制のダブルヘッダーやで? 嬉しい話やろ。3タテしちゃおうぜ! 7点差つけてコールドで泣かせたろうやないかい」


うちはちょっとおどけて言(ゆ)うたった。


「また関西中央とやるんか?」


 そりゃ格上から胸を借りれるチャンスは逃さへんよ。正直うちはどちらかの試合がコールドにならずに9回まで凌げたらええな、って思ってるんやけどな。


 幸か不幸かダブルヘッダーは2試合ともコールド負けした。何といっても最初から相手の気合が違った。坊主頭になってた人がちらほらおったのはうちの気のせいやろう。


 ダブルヘッダーやから、4人の投手がそれぞれ平均4~5イニング投げなあかんわけで、この前みたいに全力では投げられへん。トモカズでさえスリーランホームラン打たれよった。うちがやられたのはソロやからしゃあないんちゃう? ソロ2発もらったけど、ピンチは抑えましたよ。ええ。


 そんなわけでうちが当初予定していたボコボコにどつきまわされる練習はきっちりできた。2試合目は8回コールドやから頑張った方やろ。もちろんこれはこれでうち自身を含めて大きな課題なんやけど、得たモノも大きかったて思う。

みなさま拙作ご愛読いただき大変ありがとうございます。

そろそろまた宣伝をしておきますね。


【連載中:本作連載中は休載】

みんなで私の背中を推して

連載開始当初の予定:100話目途⇒現在:307話  6,510pt

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現代を舞台にした女主人公最強系のお話。芸能界+将棋です。そろそろ終わりが見えかけてきましたが、それでも350話ぐらいになりそうですね……


Stay Here

連載開始当初の予定: 30話目途⇒現在:41話   1,266pt

競馬ものです。現在は北海道からJRAに遠征して1勝したところです。50話でも話がたためそうにないですね。


【完結済】

音楽室と体育館  全169話  1,282pt

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バレーボールをこよなく愛する音楽教師の主人公最強もの

この作品がポイントが一番伸びているのでは?

ありがとうございます。


夏の潜水艦  全23話  814pt

https://ncode.syosetu.com/n9256jo/

アンダースローに転向した高校球児のお話

こちらもポイントが伸びてますね。ありがとうございます。


ミスターフルベース 全16話  696pt

https://ncode.syosetu.com/n7878gi/

高校球児が甲子園で起こす奇跡のワンプレーのお話

こうやって旧作をご評価いただけるのはありがたいことです。


音楽性の違い   短編   302pt

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人気デュオが「音楽性」の違いから解散するお話

こちらもありがとうございます。


宰相の失脚  全17話   296pt

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ナーロッパの成り上がり系のお話

本当にありがとうございます。


リージア顛末記  全14話   196pt

https://ncode.syosetu.com/n9782hn/

ナーロッパ世界で国王が4人の王女のうち、最も王配として優れた婚約者を連れてきた娘を後継者にしようとするが……

ありがとうございます。


桜の下の彼女   全12話   142pt

https://ncode.syosetu.com/n8398gu/

毎晩、幼馴染の女の子に酷いことをしてしまう夢を見る男の話。

個人的にはお気に入りですがポイントは伸びないのは何故?


以上です。今後も定期的に宣伝する予定です。本作ともどもよろしくお願いいたします。

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