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さよならホームラン  作者: 多手ててと
6回

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6回表(1)

 人間はやっぱりコネが大切やとうちは思う。練習試合の相手もコネを使って見つけている。例えばクラブチーム。極論を言えばクラブチームは草野球の延長だ。ただし野球連盟に所属している硬式野球のチームであり、勝ち進めばノンプロの大会である都市対抗にも出れるし、クラブ選手権に優勝すれば日本選手権にも出場できる。


 だが本当にピンキリなので、弱小クラブチームであれば、創設初年度である我々川添高校公式野球部でも勝つことができる。一方で強いチームはプロでプレーできるレベルの選手もいるし、スポンサーがついている場合もある。


 この時代は野球界では動乱期といってよい。1990年代の中頃から、野球部を無くす会社が出始めたからだ。廃部・休部するチームの中には都市対抗でも活躍している名門もあった。つまりプロのひとつ下のカテゴリーの野球人たちの居場所が狭くなった。当然野球でプロとしてもノンプロとしても食べていけない選手が出始めた。


 2010年ぐらいになるとそれらの選手の受け皿として独立リーグという、また別のプロ野球の組織がその受け皿となるのだけれど、この時代にはまだない。


 だから強いクラブチーム、というか化物みたいな選手が混じっているクラブチームも所々にある。そしてクラブチームはクラブチームの横の繋がりがあるので、試合の後に他のチームを紹介してもらえることもある。


 うちが昔見た夢だと、プロとアマの垣根はもちろん、アマチュアでもカテゴリーを超えた試合をするのは難しかった。高校生とクラブチームが合同練習したり、練習試合をするには高野連の許可が必要で、そして実際に許可がおりるなんてことはほぼありえない話だった……はず。


 でもこの現実では、うちが男子に交じってプレーしているみたいに、選手兼監督が許されたり、アマチュアどうしの試合であれば届け出を出せば可能になっている。多分うちの努力のタマモノだ。他の高校も私に感謝して欲しい。


 そして今日の相手は淀川センチメンタルズ、基本的におっさん(でも元ノンプロだったりする)が多いけれど、ひとりだけ飛びぬけたピッチャーがいる。順調に行けば3年後あたりに育成契約でプロ入りする可能性すらある選手だ。以前対戦したクラブチームの紹介を受けて、彼目当てでうちはセンチメンタルズに試合を申し込んで受けてもらえた。高野連への手続きはうちがやった。


 こちらの先発はシニアでは敵だった笹沢。彼が先発で3回を無失点に抑えた。笹沢は左投げのスリークォーターで、高1のこの時期で140キロを投げる。これは十分異常。1年生の最初で130キロ投げられたらもの凄いピッチャーやからね。


 ちなみにシニアの時はMAX135だったけど、うちが1か月程矯正すれば5キロ近く上がったし、コントロールも良くなった。こうやって球を受けていても気持ちいいぐらいストライクが決まる。彼は外野もやれるけど、夏の大会が終わるまではピッチャーを中心にプレーしてもらうつもりだ。そうすれば夏までにはもっと球速も上げられるやろ。10人しかいないから、けが人がでたり、点差がついて他の選手を休ませたい場合はもちろん外野を守ってもらうことになる。

 

 うちでは3番手やと思ってたけど、うちを抜いて2番手になりそう。流石は未来(?)の沢村賞投手や。高校時代に良い指導者に恵まれなかった、というのは酷やろう。うちの指導力が傑出してるんよ。ホンマに。


 だが、こちらも相手のピッチャーを打てない。相手の守備はそこそこだからランナーは出る。このそこそこという単語は難しい。例えば元ノンプロのおっさんは技術的にはメチャメチャ上手いけど、年齢が年齢やから守備範囲が狭かったりする。逆に若者(うちらより少なくとも5つは先輩だろう)は技術的に難があったりする。そしてどちらもうーん、という方もいらっしゃる。クラブチームやから楽しめればええねん。


 だって平日はフルタイムで仕事をして、休みの日に趣味で野球をしている人たちやからね。むしろようやったはる、って言うべきやろ。


 せやからまあ、見えるエラーも見えないエラーもあって点は入るのだけどクリーンヒットは出ない。トモカズですら犠牲フライになったライトフライとサードのエラーによる出塁だけ。


 うーん。みんななんとか相手のピッチャーからヒットを打とうと頑張っているんやけど、これはあんまり実戦形式の練習にはならへんかもしれへんなあ。結局相手の守備が良くてもヒットだったと思われるのは、うち、高見沢、黒木がそれぞれ1本ずつ打った3本だけだった。それも多分まぐれやろ。


 勝ってこんなん言うのもなんやけど、うちらがもっとレベルアップしてからあのピッチャーにリベンジさせてもらいたいところ。


 もちろんクラブチームだけではなくて、大学にも頼んでみた。やはりアマ球界のお偉いさんに顔が利くと強い。うちの部員はもっとうちに敬意を払うべきやと思う。


 関西中央大学、ここは関西六大学野球の名門や。ダメ元でも頼んでみるもんやね。さすがに相手は全員1回生(かいせい)。1回生でも完全に格上や。多分ぼこぼこにされるやろう。楽勝するよりはボコボコにされた方が経験値が溜まるので良いと思う。ホンマはもっと伯仲した試合ができる相手がええねんけどな。それは贅沢な悩みやろ。


 だがうちのチームは予想外の善戦をした。先発は今日も笹沢。このチームにはピッチャーが4人おるけど、今年の夏、笹沢以外の3人は他のポジションが多くなる。2番手に昇格した彼にある程度のイニングは食べてもらわないといけない。


「3イニング持ってくれたらええねんけどなあ……」


「あっ? 3イニングぐらいしっかり押さえるわ。あちらかて1回生だけなんやろ?」


 大学の野球部は高校の野球部とは違うんよ。とにかく体格がうちらとは違う。高1のフィジカルエリートと大学1回生のフィジカルエリートは見た目からして全然別の生物やと思うやろ? 思わへんのは笹沢が虚勢をはってるか、フシアナやからや。多分前者やと思うけど。


 さらに層の厚さも違う。1回生のピッチャーだけで14人もおって、しかも全員が高校で実績を出している。4人やない。14人やぞ? その半分ぐらいがエースではないにせよ甲子園のマウンドに立っとるんよ? さすがにうちのアホどもかてそんなことはわかってるやろうから口に出しては言わへんかったけど。これは途中から相手は元投手やけど今は野手がマウンドに立っても文句は言われへんね。

大学によって異なりますが、関西では今でも大学生は1年生ではなく1回生と呼ぶのが普通です。関西というか西日本がそうかな?

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