2回表(3)
今度はうちらが守る番。強打者がいるチームを相手にする場合、その前にランナーを出さないのが大事。うちは打たせて取るピッチングで、相手の1番2番を合わせて3球で仕留めることができた。バックのみんなのおかげや。
これで仮に黒木君にホームランを打たれても同点どまり。ビハインドは嫌やけど、最悪でも同点なら安心して勝負できる。初球のインハイのストレートを見逃しで1ストライクが取れた。今のは完全に打つ気なかったみたいやね。次は振って来るやろう。うちは2球目はアウトローにこの大会で初めて投げたツーシームを放り込む。
うそやん。なんであれを外野に運べるん? 運よくライトのほぼ定位置やったから、まあ守備のおかげで1打席目はうちらの勝ちや。
黒木君はツーシームなんて知らんのとちゃうか? 打席から見てどう思ったんやろ? 実際のところツーシームという球自体は昔からあるんよ。今から10年ぐらい前の野球雑誌でプロの人がインタビューに答えている。ただフォーシームの綺麗な真っ直ぐに比べると評価が低く、「汚い握り」とか呼ばれている。その考え方は少年野球の指導者たちも感じているようで、うちが投げるのもあまり良く思われていないみたい。
そんなわけでこの時代、意図的にツーシームを投げるのはうち以外には知らん。それを初見で外野まで運んだ黒木君がすごい。
今度は東荻攻撃、2回の表は7番からだから塁にふたり出たらうちに打順が回って来るはずや。そう思ってたら3者凡退なんよね。笹沢君は上手く立て直したなあ。その裏の守り、うちも負けずに3者凡退に取った。次の回は打順が回って来るでぇ。マウンドで投げるのも好きやけど、やっぱり打席に立てるのも嬉しい。
3回表、1番からの好打順で高見沢君が9球も粘って塁に出た。うちへのサインはバント。まあしゃあないね。せっかくだからまたファーストを狙ったんやけど、今度はきっちり処理されて普通にアウト。いやちゃう、送りバント成功や。
3番の先輩が今度はセンター前に運んで三塁一塁。これは先輩が上手いのもあるけど、高見沢君の粘りの影響も大きいんちゃうかなあ。ここでトモカズが堂々と登場。したんやけど敬遠で満塁。まだ3回で1アウトで一塁埋まっているのに敬遠かあ。
いうてもこの時代、4球投げなあかんわけやから1球ぐらいストライクゾーンの近くにきたり、あるいはキャッチャーが捕れない暴投なんてあるんちゃうかな、と思ったけど、流石は決勝戦。そんなことはなかった。満塁。
この敬遠策はそれなりに上手くいった。100点ではないけど70点ぐらい? 5番の先輩の打球はショートゴロ、これも抜けてもおかしくなかったけど止めた黒木君は凄いわ。643のダブルプレイになるはずだったけどセカンドの送球が逸れたからファーストがベースから離れたため、ゲッツー崩れで1点追加。2アウト三塁一塁。
当たり前やけど送球をベースを踏んだ状態で受けて、さらに1塁に投げる。いわゆるピボットプレイは小学生には難しい。繰り返し繰り返し練習しなければ身に着けることはできない。私みたいに最近見た夢の中で数えきれない程の数を練習して、それでできるようになった人間は多分いないだろう。
でも相手の監督がセカンドの選手に怒鳴っている。やっぱりこの時代の指導者はこうなるよね、怒られたら怒られないように上手くなるのかというと、それは上手くいかない可能性が多いと思う。選手に委縮させないように、技術的な指導をするのがマクロ的には良いはず。中にはそれが合う選手がいることは否定できないけれど。
ともかくうちがブルースに入ったのは偶然だけど大正解だったようやね。プロ野球のレジェンド選手を輩出する土壌があったわけや。
この回の追加点はこの1点だけだったけど、うちが3回までランナーはエラーでひとり出しただけ。4回からマウンドに上がったトモカズが打たれたのは黒木君のヒット1本だけ。フォアボールがふたつあったけど、無失点で府予選を勝ち抜けた。
大阪府大会の後には近畿大会がある。でもそこであっさりと負けてしまった。トモカズが風邪で熱を出して欠場。うちは3回に1ヒット2エラーで2点取られたけど、そこ以外はきっちり抑えた。でもその後があかんかったな。
これまで5年生のうちとトモカズばっかりが投げてたんが拙かったんよ。いや4回、5回は無失点やったんよ。でも最終回(6回)に先頭がエラーで出塁した後、制球が悪くなって、フォアボール、そしてボール先行で真ん中に置きにいったとこを1発持って行かれました。打線もトモカズ頼りのところがあり、トモカズがおらんかったら1点しか取れずに負け。
あーこれはうちのせいやな。気が付いてたのに監督に言わんかったからなあ。6年生には申し訳ないことをしてしまったと思う。年下のうちのことを聞いてくれへんけど、ちゃんとネゴれば良かったわ。




