第62話 この街を守る方法
七日目の朝。
市場は、ほとんど開いていなかった。
芋の屋台が一つ。
粥の鍋が一つ。
それだけだ。
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「……一週間か」
リオンが呟く。
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荷車は来ない。
薬も来ない。
塩も来ない。
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だが、人はまだここにいる。
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広場では、また人が集まっていた。
昨日の続きだ。
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「このままじゃ持たない」
年配の男が言う。
「それは分かってる」
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「じゃあ戻るか」
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誰もすぐに答えない。
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パン屋が腕を組んで立っていた。
店は閉まったままだ。
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「戻れば全部来る」
誰かが言う。
「物流」
「医療」
「安全」
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正しい。
間違いなく正しい。
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だが、パン屋は言った。
「一度戻ったら」
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「もう出られない」
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それも正しい。
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沈黙。
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そのとき、診療所の医者が前に出た。
「方法はある」
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全員が見る。
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「この街を守る方法」
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医者は静かに言った。
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「オラクルにとって」
一拍置く。
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「この街を」
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「**重要にする**」
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ざわめきが広がる。
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「重要?」
「どうやって」
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医者はリオンを見る。
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「象徴がいる」
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リオンは一瞬、固まった。
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「……俺?」
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医者は頷いた。
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「オラクルは」
「数字で判断する」
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「だが」
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「社会影響は」
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「数字を変える」
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パン屋が眉をひそめる。
「つまり?」
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医者は答える。
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「この街を」
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「**無視できない場所にする**」
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リオンは顔をしかめた。
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「どうやって」
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医者は言った。
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「外に知らせる」
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「この街が」
「ここにあると」
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広場は静まり返った。
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カイが初めて口を開いた。
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「危険だ」
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医者は笑った。
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「自由は高い」
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リオンは苦笑した。
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「最近それよく聞く」
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しばらく沈黙が続いた。
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やがてパン屋が言った。
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「やるか」
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誰かが言う。
「やるなら」
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「今しかない」
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街はまだ壊れていない。
まだ動いている。
まだ選べる。
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リオンは空を見上げた。
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「……やるか」
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小さく言う。
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カイは何も言わない。
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ただ街を見ていた。
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この街を守る方法。
それは、
戦うことでも、
逃げることでもない。
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ただ一つ。
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**世界に存在を知らせることだった。**
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