表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/63

第58話 医者が来ない理由

 診療所の扉は開いていた。


 だが、中は少し慌ただしい。


「包帯は?」


「あと二巻き」


「薬は?」


「解熱剤が切れた」


 医者が棚を覗き込みながら舌打ちした。


---


 リオンは入口で立ち止まった。


「……大丈夫か」


 医者は振り向きもしない。


「大丈夫じゃない」


 即答だった。


---


「昨日まではな」


 棚を閉める。


「荷車が来ない」


「薬が来ない」


「それだけだ」


---


「それだけ?」


 リオンは眉をひそめる。


「それだけで終わる」


 医者は淡々と言う。


---


 診療所は小さい。


 ベッドは三つ。


 棚も古い。


 それでもこの街では、唯一の医療だ。


---


「怪我人が出たら?」


 リオンが聞く。


「出る」


「どうする」


「できることをする」


---


 医者は肩をすくめた。


「できないことは、できない」


---


 そのとき、扉が開いた。


 男が肩を押さえて入ってくる。


「転んだ」


「見れば分かる」


 医者はすぐに腕を触った。


「骨は無事だ」


「運がいい」


---


 包帯を巻く。


 手際は早い。


 だが――


 棚を見て、少しだけ顔が曇った。


---


「包帯、最後だな」


 ぽつりと呟く。


---


 リオンはそれを聞いていた。


「……荷車が止まってるからか」


「そうだ」


 医者は短く答える。


---


「事故じゃない」


「違う」


---


 医者は、少しだけ笑った。


 苦笑だ。


「安全のためだろ」


---


 リオンは言葉を失った。


---


「安全のために」


 医者は包帯を締めながら続ける。


「危ない街には、医療を送らない」


「事故が起きたら責任になる」


---


 男は包帯を見て言った。


「まあ治った」


「治ってない」


 医者は即答した。


「応急処置だ」


---


 男は笑って出ていく。


「ありがとうな」


---


 診療所は、また静かになった。


---


 リオンは棚を見た。


 空の箱。

 少ない薬。


「……これ、やばいな」


---


 医者は椅子に座った。


「そうだな」


---


「怒らないのか」


 リオンが聞く。


---


 医者は少し考えてから答えた。


「怒る相手がいない」


---


「オラクルだろ」


「顔が見えない」


---


 しばらく沈黙が続いた。


---


 カイが静かに言う。


「これは」


 一拍置く。


「始まりだ」


---


 リオンはため息をついた。


「またそれか」


---


「まだ軽い」


 カイは街を見ていた。


---


「本当の問題は」


---


「人が気づいたときだ」


---


 医療が止まり、

 物流が止まり、

 物資が減る。


---


 それでも人はまだ笑う。


 まだ怒らない。


---


 だが――


 それがいつまで続くのか、


 誰も知らなかった。


---


 医者が来ない理由。


 それは事故でも、


 距離でもない。


---


 **安全の計算だった。**

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ