表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/63

第52話 誰も正解を知らない夜

 夜になると、この街は少しだけ静かになる。


 昼の騒ぎが嘘のように、

 店はゆっくり閉まり、

 灯りがぽつぽつ残るだけになる。


 それでも完全には眠らない。


 どこかで酒の匂いがする。

 どこかで口論が続いている。


---


 リオンは、屋根の上に座っていた。


 この街で一番落ち着く場所だ。


 誰にも指示されない。

 誰にも見張られない。


 ただ、風がある。


---


「……暇だな」


 隣に立つカイに言う。


「安全な街なら」

「今頃は管理時間だ」


 カイは短く笑った。


「この街は、時間を管理しない」


---


 遠くで、怒鳴り声が上がった。


「また喧嘩か?」


「多分な」


「止めなくていいのか」


「そのうち止まる」


 実際、数分で静かになった。


 誰かが止めたのか、

 当人たちが疲れたのかは分からない。


 それでも終わる。


---


「……不思議だな」


 リオンは夜空を見る。


「ここ、正解ないのに回ってる」


「だから回る」


 カイは答える。


「正解があると」

「誰も考えなくなる」


---


 しばらく沈黙が続いた。


 風が吹く。

 遠くで犬が吠える。


 ただの夜だ。


---


「なあ」


 リオンが小さく言う。


「俺さ」


「何だ」


「もしこの街に来なかったら」


 少し言葉を探す。


「今も“危険度”の中で生きてたんだよな」


---


「そうだな」


 カイは否定しない。


「安全で」

「正しくて」

「静かな人生だ」


「……嫌だな」


 リオンは苦笑する。


---


 街の広場では、

 数人が焚き火を囲んでいた。


 酒瓶が回る。

 話が続く。


 誰も記録しない。

 誰も評価しない。


---


「……あれ、何話してんだろ」


「大したことじゃない」


「どうして分かる」


「大したことなら」

「こんなところで話さない」


---


 リオンは、少し笑った。


 確かにそうだ。


---


 そのとき、広場から声が上がる。


「おい!」


「屋根の上!」


「落ちるぞ!」


 誰かがこちらを指差している。


---


「……心配されてる」


 リオンは、少し驚いた。


「危険度じゃない」


 カイは言う。


「ただの心配だ」


---


 リオンは、しばらく黙っていた。


 胸の奥が、少しだけ温かい。


---


「……なあ」


「何だ」


「この街さ」


 一度言葉を止めてから、


「正解、知らないよな」


---


「知らない」


 カイは答える。


「多分、これからも知らない」


---


 リオンは、空を見上げる。


 星が、ゆっくり流れていた。


---


 誰も正解を知らない夜。


 それでも人は、

 笑い、

 喧嘩し、

 話をしている。


 それだけで、

 この街は今日も続いている。


 そして世界はまだ、

 その理由を理解していない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ