第45話 危険度が上がった日
警告は、静かに更新された。
【将来危険度:高 → 非常に高】
【行動制限レベル:引き上げ】
音もない。
光も控えめだ。
それが、この世界のやり方だった。
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「……おめでとう」
リオンは、皮肉を込めて呟いた。
「ついに、危険になったらしい」
何も壊していない。
誰も殴っていない。
叫んですらいない。
紙を破った。
選んだ。
それだけだ。
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扉が開き、管理局の責任者が入ってくる。
表情は穏やか。
声も落ち着いている。
「残念です」
「協力的であれば、もっと早く――」
「外に出られた?」
リオンは、遮るように聞いた。
責任者は、言葉を詰まらせた。
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「……危険度が上昇したため」
「本日より、行動範囲をさらに制限します」
「理由は?」
「感情指数の急変」
「反抗的行動」
「将来リスクの増大」
全部、“将来”だ。
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「……俺、今ここで」
「誰かに危害加えてるか?」
責任者は、首を振る。
「いいえ」
「じゃあ、何で?」
「可能性です」
その一言で、会話は終わった。
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部屋の外に出ると、
空が、やけに遠く見えた。
安全ガラス越しの空。
割れない。
触れない。
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「……後悔、してます?」
エリスが、小さく聞く。
「してない」
リオンは、即答した。
「怖いけど」
「後悔は、してない」
それが、答えだった。
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その夜。
リオンは、眠れなかった。
頭の中で、何度も同じ言葉が回る。
――可能性。
――危険。
――正解。
全部、曖昧で、
全部、重い。
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小さな物音。
扉の前に、人影が立つ。
「……出るぞ」
低い声。
カイだ。
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「無理だろ」
「危険度、上がったんだぞ」
「だからだ」
カイは、淡々と言う。
「“正解”は、今」
「お前を、閉じ込める方向に走ってる」
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「……俺が逃げたら」
「危険度は、跳ね上がる」
「だよな」
リオンは、苦笑した。
「じゃあ、俺は」
「完全な危険になる」
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「違う」
カイは、はっきり言った。
「**人間になる**」
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一瞬の沈黙。
リオンは、深く息を吸った。
「……分かった」
恐怖はある。
だが、選択もある。
それだけで、十分だった。
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扉が、静かに開く。
警報は鳴らない。
鳴らさない設計だ。
“安全な世界”だから。
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廊下は、静まり返っている。
誰もいない。
誰も止めない。
それが、この世界の油断だった。
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【危険度:測定不能】
【予測誤差:拡大】
どこかで、数値が乱れ始める。
正解は、
**想定外に、弱い。**
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危険度が上がった日。
それは、
リオンが初めて、
自分の足で歩き出した日だった。
そして同時に――
世界が、次の問いを突きつけられる日でもある。
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