表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/63

第44話 危険度を下げる方法

 その説明は、あまりにも丁寧だった。


「危険度を下げる方法は、あります」


 管理局の職員は、柔らかい声でそう言った。


 責める調子でも、

 脅す調子でもない。


 ――説得だ。


---


「生活指針に、より忠実になること」

「感情の変動を、最小限に抑えること」

「不要な思考負荷を避けること」


 机の上に、数枚の紙が並べられる。


【推奨行動一覧】

【非推奨対人関係】

【感情安定化ルーチン】


 すべて、“あなたのため”と書かれている。


---


「これを守れば」


 職員は、にこやかに続けた。


「危険度は、確実に下がります」

「外出許可も、検討されるでしょう」


 リオンは、紙を見つめた。


 どれも、難しくない。

 怒らない。

 考えすぎない。

 期待しない。


 ――生きるのを、やめるだけだ。


---


「……守らなかったら?」


 リオンが聞く。


 職員は、一瞬だけ言葉を選んだ。


「その場合は」

「現在の保護措置を、継続します」


 脅しじゃない。

 事実だ。


---


 部屋に戻ると、エリスが待っていた。


 珍しく、一人だ。


「……説明、受けました?」


「ああ」


 リオンは、紙を放り投げた。


「従順になれ、ってやつだ」


 エリスは、否定しなかった。


---


「……どう思いますか」


 リオンが聞く。


「正しいと思う?」


 エリスは、しばらく黙った。


 そして、正直に答える。


「安全、ではあります」

「でも……」


「でも?」


「あなたが、いなくなる」


 その言葉は、静かだった。


 だが、深く刺さる。


---


「……なあ」


 リオンは、天井を見上げる。


「俺、悪いことしてないよな」


「してません」


「じゃあさ」


 一拍置く。


「俺が、ここで従順になったら」

「世界は、良くなるのか」


---


 そのとき、扉が開いた。


 あの男――カイだ。


「ならない」


 即答だった。


---


「良くなるのは、数字だけだ」


 カイは、紙を一瞥する。


「それは、危険度を下げる方法じゃない」

「**人間度を下げる方法だ**」


 リオンは、思わず笑った。


「ひでえ言い方だな」


「事実だ」


---


「……でもさ」


 リオンの声が、少し低くなる。


「従えば、外に出られる」

「普通に暮らせる」


「“普通”か?」


 カイは、問い返す。


---


「間違えない人生は」

「失敗しない人生は」

「誰の人生だ」


 答えは、出ている。


---


 リオンは、紙を一枚拾い上げた。


 そして、ゆっくりと破った。


 一枚。

 また一枚。


 破るたびに、胸が軽くなる。


---


【感情指数:上昇】

【将来危険度:微増】


 警告灯が、はっきり点く。


 だが、リオンは気にしなかった。


---


「……選んだな」


 カイが、静かに言う。


「ああ」


 リオンは、頷く。


「何もしない罪より」

「間違える罪の方が、マシだ」


---


 エリスが、小さく息を吐く。


「……これで、戻れませんよ」


「戻らなくていい」


 リオンは、窓を見る。


 安全で、

 正しくて、

 静かな世界。


 その外に、

 まだ行ったことのない場所がある。


---


 危険度を下げる方法は、簡単だ。


 従うこと。

 考えないこと。

 自分を削ること。


 だが――

 それを選ばない人間がいる。


 そして世界は、

 **その存在を、危険と呼ぶ。**

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ