第40話 もう、俺を待つな
中央連結都市〈ハブ〉は、珍しく騒がしかった。
怒号ではない。
抗議でもない。
――議論だ。
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「予測に従えば、安全だったはずだ」
「でも、人が死んだ」
「じゃあ、何を信じればいい?」
酒場。
通路。
管理区画の隅。
人々が、正解について話している。
それ自体が、異常だった。
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中央評議会は、再び招集された。
だが、空気は以前と違う。
「……オラクルは、停止すべきだ」
誰かが、そう言った。
「完全停止は、危険だ」
「だが、全面運用も――」
迷っている。
それでいい。
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「……あなたの意見を聞きたい」
議長が、こちらを見た。
この期に及んで、まだだ。
俺は、一歩前に出た。
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「俺は、答えを出しに来たんじゃない」
会場が静まる。
「出させるために、来た」
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「正解は、要らない」
はっきり言った。
「必要なのは、判断だ」
「間違える自由と」
「引き受ける覚悟だ」
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「それは……混乱を招く」
誰かが、弱々しく言う。
「混乱は、もうある」
俺は、即答する。
「ただ、今までは」
「誰かに押し付けてただけだ」
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「俺は、ここから離れる」
その言葉に、ざわめきが走る。
「もう、中央には来ない」
「要請があっても、受けない」
議長が、思わず立ち上がる。
「それは――無責任だ!」
「違う」
俺は、振り返って言った。
「**最後まで責任を返す**」
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エリスが、少しだけ驚いた顔をした。
「……本当に、行くんですね」
「ああ」
「次は、どこへ?」
「決めてない」
それでいい。
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俺は、評議会の中央を指差した。
「ここに、椅子があるだろ」
誰もが知っている、あの席。
「それは、もう要らない」
「空けておけ」
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「世界は、揺れる」
最後に、そう言った。
「また歪む」
「また間違える」
「でも――」
一拍、置く。
「**俺を待つな**」
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会議室を出るとき、
誰も、止めなかった。
止められなかったのかもしれない。
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夜。
中央連結都市の灯りが、遠ざかる。
世界は、まだ不安定だ。
完璧には、ほど遠い。
だが――
息をしている。
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「……これで、終わりですか」
エリスが、星空を見上げて聞く。
「終わらない」
俺は、そう答えた。
「俺がいなくなった後も」
「世界は、勝手に歪む」
「じゃあ……」
「それを、誰かが止める」
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馬車が、闇の中を進む。
名もない道。
地図にもない方向。
だが、確かに続いている。
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後日。
中央連結都市に、新しい一文が追加された。
【判断は、現場で行う】
【正解は、存在しない】
署名はない。
だが、それで十分だった。
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世界は今日も、少し歪んでいる。
それでも、誰かが息をしているなら――
まだ、大丈夫だ。
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