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ブラックなネコ  作者: 椿 雅香
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武史さんと和也くん(3)

少しみじかいですが、キリが良いのでアップします。

 和也くんがこっちの世界へ来たおかげで、ネコを探す人手が増えたことになります。

 でも、ネコは見つかりません。

 三人とも、あのネコが、刀剣乱舞の『こんのすけ』みたいに、常時彼等の側にいると思っていたのです。そうあるべきだと思っていたのです。それなのに……。

 ネコは、三人をおちょくっているのでしょうか。それとも、逃げ回っているのでしょうか。鉄道に乗って、別の町へ出かけたのでしょうか。

 武史さんに焦りが見えてきて、公子さんが心配しました。


 和也くんはといえば、早くも仕事に飽きてきました。

 第一、エクセルを使えば一発でできる表計算を電卓たたいてするなんてイライラします。一度、「電卓が苦手だ」と、こぼしたら、「じゃあ、算盤使うか?」と言われてしまって、ガックリしました。


 そんなこんなで、現在はアファターファイブで次世代の会の女の子と遊ぶことに夢中になっていて、真面目にネコを探しているとは到底思えない状況です。

 

 ある日、業を煮やした武史さんが和也くんの部屋を訪れました。

 和也くんは、デートの準備に余念がありません。今度のデートには、足を延ばして海を見に行こうと、地図を見て研究中です。秋の海は夏の海と違った情緒があるので、和也くんとしては、そのまま恋人になるつもりです。

 

 武史さんは、頭に血が上りました。

 

 和也くんは、就活が上手く行かないので腐っていたところをネコに付け込まれたと言っていましたが、就活はダメでも女の子を口説くのは得意だったようです。

 

 自分の就職先も決めていない男が女の子とチャラチャラするんじゃない。

 

 そう言いたいのを必死で我慢しました。

 口に出したら、一流企業で働いている者の傲慢だと思われるでしょう。実際、自分でもモテない男のやっかみ以外何ものでもないと思うのです。

 だから、別のことを言いました。


「和也。君、真面目にネコ探しているのか?」

「探してますよ」

「本当か?」

「武史さんも公子さんも、仕事あがるの遅いから、五時で終わる俺が毎日探してるんじゃないっすか」

「真面目に集中して探してるって言えるのか?いっつも、女連れじゃないか」


 これには、和也くんもカチンと来ました。

「もしかして、ここに長居したいために、俺がワザといい加減に探してるっていうか、探しているフリだけしてるって言いたいんすか?」

「そうだ。お前がこっちへ来たのが九月だ。かれこれ一月経つけど、ネコの気配さえ見つからない。三人がかりなのに」

「そんなの、俺のせいじゃないっす」

「お前が、もっと一生懸命探せば、見つかってるはずだ」

「言いがかりだ」

「言いがかりだって?」

 思わず武史さんが和也くんのシャツをつかんだとき、部屋の戸が開きました。


「あらっ。武史さんも来てたん?」

 そこまで言った公子さんが固まりました。

「ゴメン。あんたたち、そういう関係やったん?大丈夫。性的嗜好は好き好きや。ウチは、そういう関係には理解あるつもりや。えらい失礼しましたっ」


 勢いよく戸を閉める音で、二人は、我に返りました。そして、公子さんがとんでもない誤解をしたことに気付きます。


「僕はゲイじゃない!」

「俺はホモじゃねえ!」


 二人同時に叫びましたが、後の祭りでした。 


 それからしばらく、武史さんや和也くんと公子さんの間にギクシャクしたものがなかったといえば嘘になりますが、時間は極めて平穏に(!)流れました。ネコが現れないこと以外。

 まあ、そんなに簡単に現れるなら誰も苦労しないのです。

 

 ホモ疑惑を払しょくすべく頑張ったわけでもないのでしょうが、そのうち、和也くんは、喫茶『花梨』のリカちゃんと恋人同士になりました。武史さんによれば、和也くんはもともと軟派で、就職活動のような真面目なことより女の子を口説く方が向いているんだそうです。

 おかげで、和也くんも次世代の会の集まりに呼んでもらえるようになりました。

 でも、合コン――クループ交際を合コンと一緒にするのは、どうよ?と、クレームが来そうですが、そこはさておいて――なんかは男女同数で構成するものですので、和也くんが参加すると男が一人余ります。融通が利かない武史さんが苦悩するのを尻目に、和也くんは極めて天然で屈託がありません。


「複数のカップルのデートじゃなくてグループ交際なんだから、一人余っても良いじゃないか」と主張して、結局、七人で行動するようになってしまったのです。

 

 和也くんの計算があったのかもしれません。

 というのは、次世代の会と一緒に遊ぶとき余るのは、大抵武史さんだったからです。


 あんにゃろう。


 武史さんは、歯ぎしりしました。


 このとき和也くんが見せたリーダーシップと行動力を就活に生かせば、とっくに内定がもらえたでしょうに。

 それができないところが和也くんらしいところです。



真面目な武史さんには、和也くんがチャランポランに見えたのでした。

二人のホモ疑惑は、公子さんには美味しい展開です。

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