夕食はご一緒に
「で、ここがあなたの部屋よ。普段誰も使ってないから好きに使ってくれて構わないわ。ただし、あまり散らかさないようにね。」
「わざわざすまないな。」
「いいのよ。それじゃ、30分くらいしたら下に来て。夕食を作っておくから。」
「分かった。それまでは本を読んでおくよ。」
そう言うと、馨は本棚から朝読んでいた本を取り出して続きから読み始めた。その後、下に降りて夕食の準備を始めた。
「さて、まずは。」
先ほど買って来たアボカドを切ってエビ、マヨネーズと和え胡椒を振る。
「よし。味はオッケー。次はパスタね。」
先程のものを冷蔵庫に入れると鍋とフライパンを用意して水を入れ沸騰させる。沸騰したら一方にはパスタを入れ煮込む。その間にフライパンでバター炒めにしたベーコンとほうれん草に、煮えたパスタを投入し醤油で味付け。
「うん、上手くできた!さて、そろそろ呼んでこようかしら。」
時間を見ればちょうど30分たっていた。
「馨〜、夕飯できたよ〜!」
なかなか降りてこない。本を読むことに集中していて時間を見ることを忘れているのだろう。二階に上がるとなんと馨は寝ていた。
「可愛い寝顔してるのね。...。ま、まぁそれは置いといて。馨、ご飯できたよ。」
肩を軽く揺さぶって起こす。が、なかなか起きない。
「冷めちゃうから、早く〜。」
「ん〜...。」
馨がゆっくりと体を起こす。
「おはよう、であってるかな?」
「うん、まぁあってるかな?それよりも!ご飯できたよ。早く食べよう?」
「うん、ありがとう。」
リビングに降り、できた料理を並べて二人席に着く。
「いただきます。」
スプーンでエビを馨の口に運ぶ。
「美味しい。」
「そう、口にあって良かったわ。どんどん食べてね。」
会ったばかりとはいえ、美味しいと言って貰えるのは素直に嬉しい。
「この緑色は何?」
「これはアボカドよ。」
「これがアボカドか。先ほど読んだ本の中に出て来たが、なるほどなかなか美味しい。」
「...?本を読んでたのよね?何の本を読んでたの?」
「よくは分からないが、料理についての本だったようだ。」
しまった。置きっ放しだった。できれば見られたくはなかったのだけれど...。
「ん、見たらまずかったか?」
「いや、そう言うわけじゃないんだけど...。なんていうか、恥ずかしい...のかな。」
「確かに色々と書き込まれてはいたな。だが、何を恥ずかしがることがある。努力の証であろう。」
「そう言って貰えると...。ありがとね。」
それからは淡々と会話もなく食べ続けた。
「ごちそうさまでした。」
「お粗末様でした。さて、お風呂だけど、着替えはないんだよね。この時間だと近くのコンビニくらいしか開いてないから下着はそこで買うとして、服は私ので我慢してね。」
「いいのか?」
「いいも悪いも、仕方がないわ。明日ちゃんと買いに行きましょ。」
「ありがとう。」
その後、コンビニくらいまで下着を買いに行ったが、流石に男物の下着を女が買うわけにもいかず、買い方もわからない馨にどうにか買わせた。事務所に帰ると早速お風呂に向かわせた。
「お風呂はここよ。これがシャンプー、頭を洗う時に使ってね。で、これがボディーソープ、体を洗う時に使うの。まぁ、わからないことがあったら言って。」
「分かった。」
おもむろに馨が脱ぎ出したので、急いで脱衣所を出て扉を閉める。
「さて、洗い物でもしますか。」
使った食器やフライパンを洗う。いつもは一人分なので、今日は時間がかかった。そして、明日の朝食の分の米を研いで時間通りに炊けるようにセットする。
「紫月、お風呂上がったよ。」
急に声をかけられて、しかも、いつもは名字で呼ばれるので余計に驚いた。
「どうしたの?」
「い、いや、何でもないわ。お風呂上がったのね。大丈夫だった?」
「うん。この服を着るのには苦労したけど、お風呂は大丈夫だったよ。」
女の子もののパジャマだったけど、かなり自然に着こなしていた。もとから可愛い顔してるからかな...。
「なら、良かったわ。じゃあ、私も入ってくるわね。先に寝てていいから。」
「分かった。じゃあ、おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
着替えを取って来てお風呂に向かう。途中、部屋を除くと馨はまた本を読んでいた。
「はぁ〜。今日は何だが疲れたわ。」
今日はいつになく疲れていたようで、なかなか出られず、長風呂してしまった。1時間ほどしてようやく上がった。自室へ戻る途中、馨の部屋の明かりがまだついていた。また起きているのかと思いきや、電気を点けたまま寝ている。
「まったく、まるで子供ね。」
本をどけて、毛布をかけ、電気を消す。
「さて、私も寝ないと。明日も早いし。」
しかし、布団に入ってもなかなか寝付けない。よくよく考えてみると、まだ素性もよく知らない男の子と一つ屋根の下というのは...。ちょっとまずくない...?




