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部屋の奥にまた部屋があり、リオウが取っ手を掴んで扉を開ける。其処には懸命にコンピュータに向かっている男がいた。
後ろ姿でおまけに写真も二十年以上前の物なので確実ではないが、あの男が<ブルー=ムーン>本人だろう。
リオウはナイフを構え、足音を忍ばせて男に近寄った。男はリオウに気づかずにコンピュータの画面を食い入るように見つめたままだ。
男から三、四メートル離れたところでリオウは立ち止まり、目を細めて狙いを定める。
一瞬。
殺気と緊張が部屋に漏れた。
「……<ブルー=ムーン>?」
ぴたり、とナイフを男の喉元に当てたリオウが低く尋ねた。男は驚いたのか目を見開いたままキョロキョロとしている。リオウがナイフを寝かして男の喉に押し付けると男は固まったように目の動きを止め、肯定した。
男の座っている椅子を引き、リオウは男とレンを向い合せるように椅子を回転させる。
「本当の名前は?」
「……ジャンだ」
二十二年振りの父娘の対面を果たしているのだが、ジャンはレンを娘だとは知らず、レンはジャンを父親とは認めていない。
「……人魚を作ろうとして、人間の女の子をあんな姿にしたのは貴方なの?」
再会した時のように瞳に何の表情も見せず、レンはジャンに尋ねる。しかしジャンは否定した。
「わたしは遺伝子学が専門だ。あれは別の研究員が人魚の理想として勝手に取った行動でわたしは何も関与していない。
も、もう良いだろう。この物騒な物を避けてくれないか」
「それはできないよ。俺の依頼者は彼女だからね」
リオウの言葉にジャンが青冷めた。ブルブルと震えだし、横目でリオウを睨むように見、レンへ視線を移す。
「そうか……お前が……レン、なんだな……?」
「知ってるの?」
「忘れるはずがない。わたしの全てを賭けて生み出した存在だ……そうか、戻ってきてくれたのか。レイラに逃げられてから手を尽くして探していたんだ」
レンの目の色が変わった。ジャンの言っていることはリオウがレンから聞いた話を矛盾している。レンの母親とレンは、ジャンに捨てられたのではないのか。
「レイラはわたしの研究に理解の色を見せてはくれなかった。そしてわたしがレンにしたことを知ると、お前を連れて消息を絶った。
だがこうして戻ってきてくれたんだ、もう過去のことは忘れよう。レン、わたしの元で働き共に裏世界を牛耳ろう」
レンは動揺を隠せないまま、二十二年前に、この男が自分に何をしたのかを訊いた。するとジャンは、とんでもないことを明かした。
「何のことはない。レンの遺伝子にフクロウの遺伝子を組み込んだだけだ」




