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青い月  作者: 江藤樹里
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7/12

3-2


 日が沈み始める。リオウはレンに声をかけ、二人は部屋を後にした。


 <ブルー=ムーン>の元へ向かう道では緊張したレンが隣にいたが、リオウは不思議と穏やかな気持ちでいた。暗殺へ赴く途中でこんなにも平静でいるのは初めてだ。


 オレンジの夕日が二人の黒く伸びた影を濃くする。その並んでいる影法師が何だか嬉しいような、くすぐったいような感じでリオウは目を細めた。

 これから先、こうやって二人で肩を並べて歩くことができたらどんなにか良いだろう。彼女も自分と、同じ想いだったなら。


 リオウは心の中で自嘲した。何を馬鹿なことを、と。


 人の命を奪う自分に人を好きになる資格などあるはずがない。同時に好きになってもらう資格もない。それはリオウが暗殺者になることを受け入れた瞬間に決まっているのだから。


 空の闇が深くなるにつれ、二人の影も薄れていった。そして二人は、秘密結社<ブルー=ムーン>が活動している建物を前にしたのだった。


「こっち」


 リオウは侵入できそうだと目星をつけていた窓へとレンを連れていった。今日も大きな集まりはないのか見張りの気も抜けている。容易に侵入できるとリオウは確信し、レンに念を押した。


「本当に来るの? 此処から先はレンが見たこともないような世界だよ」


 リオウの言葉にレンは、行くわ、と決意を変えない。まだ僅かな明かりがある間に地下まで行った方が良い。これ以上何かを行っても時間の無駄だろうと判断し、リオウは頷いた。


「解った。気絶だけはしないでよ、置いて行くからね」


 窓枠に足をかけ、リオウは中へ入った。片手でレンが入ってこないよう制し、辺りの気配を探る。見張りもリオウが侵入したことには気づいていないようだ。


 よし、と呟くとリオウは制していた片手でレンを引き入れた。身軽にレンは侵入し、リオウと同じように周囲に神経を集中させる。そうして二人は階段のところまで進み、足音を立てずに階下に下りた。


「音がしないわ」


 レンの言葉に頷き、リオウはナイフを構え、そろそろと壁から顔を向こう側へと覗かせる。しかし誰もいないし、気配もない。本当に活動しているのだろうか。


 地下のせいで明かりがない。暗闇に慣れた目でも遠くまで見えないのは彼らとて同じことだ。そして必ず彼らは明かりを持っているはずだ。会員制クラブのような秘密結社に入れる者同士の顔を覚えたくないのであれば別だが。


「……向こうに階段がある。まだ下に行けるんだわ」


 リオウはレンの指差す方向を見るが、リオウの目には何も見えない。目をどれだけ凝らしても暗闇以外は認識できず、その先にあると言う階段をリオウは認められない。


「階段が見えるの? 俺には見えないけど」


「え、見えないの? でも私には見えてるわ」


 しばし考え、リオウはレンが昔から夜目が利いていたことを思い出した。どんなに暗いところからリオウが帰ってきても、レンが一番に見つけたのだ。まるで猫のようだとメイドの中で言われていたのをリオウは知っている。


「よし、行こう。レンは何かが見えたら言って。人の気配は俺の方が判るだろうから、扉とか今みたいに階段を探してみて」


「ええ」


 二人は階段まで足音を立てずに進む。ブロックで造られている冷たい階段をゆっくりと下りると更に闇が濃くなったような気がした。



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