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リオウを探して何年も世界の地を歩き回った。しかし裏の世界と言うだけあってレンが事情を簡単に話すことはできず、リオウの所在はおろか存在でさえ掴めずにいた。
だがレンは<ブルー=ムーン>という秘密結社があることを耳にした。そしてそれが父親の裏の名前だということも。
しかし秘密結社は女人禁制。何をどう頑張ってもレンが中に入れることはない。だがレンにはさほどの障害ではなかった。女であるから入れないのならば、女であることを利用すれば良い。ただそれだけだ。
そうして知った母の死と<ブルー=ムーン>の活動内容。行きつくところは裏世界を牛耳ることしかないようで、そのために母も自分も棄てられ、挙句母は殺された。くだらない、野望のせいで。
だがレンは同時にリオウの存在を知った。母はリオウの世話をしていたのだからその娘であるレンも当然リオウと接触している筈だということを<ブルー=ムーン>が恐れていると言うのだ。共に暗殺技術を磨き、復讐をしに来ると。
レンは情報を得るとリオウを探し回った。会いたい、とそれだけの気持ちが強かった。暗殺依頼をすること、復讐も忘れたわけではない。だが何より自分を支えてきた存在が実在することを、確かめたいと、思った。
そしてようやく探し当てたリオウの居場所。十二年ぶりに会った彼はレンが想像していたどの姿とも違っていた。それでもリオウだと感じさせる。懐かしさが一瞬で蘇った。
「……リオウ……」
「何、してるの?」
突然聞こえたリオウの声にレンは驚いて振り返った。戸口に立つリオウが、窓辺に立ってカーテンをぴったりと閉じているレンを不思議そうに見ている。
「いつからいたの……?」
心なしか震えそうになる声を絞り出すようにして発し、レンはリオウを見つめた。今、と短く答えたリオウはその場からは動こうとはしない。
暗い色のカーテンを透かして陽光が入る。しかしカーテンを閉めていることには変わりないため、室内は薄暗い。その中で二人は黙ったままお互いを見つめていた。
「レン?」
リオウがまだ不思議そうに首を傾げ、レンの名を呼んだ。レンは掠れる声でなに、と返す。
「どうかしたの?」
リオウの問いに何でもない、とかぶりを振り、レンは窓際から離れた。ひどく喉が渇いていた。
「水、飲んでくるわ」
「うん。飲み終わったら俺のところにきて。今夜のこと話すから」
「……ええ」
もうすぐ終わる。
レンはキッチンへ行き、硝子のコップを出しながらひとり心で呟いた。
もうすぐであの男はいなくなる。
蛇口から流れる水をコップに注ぎ、レンは目を細め。
そうしたら、リオウに打ち明けよう。
生ぬるい水が喉を潤し、躰の下へ流れ込んでいくのを感じ、レンは一気にそれを呷った。コン、とコップをシンクに置いて片手の甲で口元を拭う。
それまでは、死んでもこの想いを口にするものか。




