#03《カイル視点》 信じられないことになってる
短めです
「なっ………な、なああぁっっ⤴?!」
大口を開けて笑っているだと?!冷酷、厳格、寡黙で堅物、そんな風に噂されるあのアレスティがっ!?
今見ている光景が信じられない。オレは一旦頭を引っ込めて思考を整理する。
一体どういうことだ?アイツあんな表情できたのかよ、微笑んだ顔すら誰も見たことがないってのに。いやいやいや、アレスティだって笑うことくらいある………のか?
再びチラッとあちらを盗み見ると、表情筋をいきいきと動かしてシャノンと話す姿が目に入る。頭が理解を拒むせいで未だ混乱中のオレは、親しげに話す2人の様子を眺めつつ思案する。
驚きだぜ、アイツら陰ではあんな仲良かったのかよ。………いや。今までそんな素振りは見たことないし、ロゼッタも知らんっつってたからつまり………つまり、どういうことだ?
ぐるんぐるんとまとまらない思考と何故だか速まる鼓動に、らしくもなくあたふたと慌ててしまう。
と、とにかく様子見だ。盗み見るのに罪悪感もあるが、何を話してんのかのほうが気になる。2人きりにさせないという本来の目的については記憶喪失になっとこう。
そう決意したその時。
ーーーふわっ、と。
心底楽しげに、柔らかく微笑むアレスティの表情が唐突に目に飛び込んできた。
「っ………!?」
オレら口を手のひらで覆い、叫び出したくなる衝動を必死に堪える。
えっ、かわい!オレの後輩の笑った顔めちゃくそかわいい!
オレは暫くの間ぼーっと様子を眺めてしまっていたようで、話が終わったらしくこちらに歩き出した2人の姿を見て、大急ぎで道を引き返す。だってあの、あのアレスティの微笑みの破壊力が………っ。
思い出してしまい顔が熱くなる。
みっ、見てはいけないもんを見てしまった!バレたらまずい、ここは逃げる!
何がまずいのかはよく説明できないが、オレは全速力で廊下を走っていった。
ーーーバァンッッッ!!!
「カイル、ドアを乱暴に開くのはやめ………」
「大変だあっっ!!!アレスティが………アレスティがあっ!!!」
オレの言葉に、生徒会室の中の全員の視線が向けられる。
今しがた全力疾走していたオレは乱れた息を整えてから、覚悟を決めて言った。
「………笑って、た」
一瞬静まり返った空気。それを破ったのは、殿下の深いため息だった。
「はぁ………何を言っているんだカイル」
呆れたとでも言うように答える殿下。
え、もしかしてプライベートでは普通に笑ったりするのか?てかアイツにプライベートとかあるんだろうか、休日も王子の護衛してるって聞いたことがあるんだが。
考え込むオレに対し、更に言葉が続けられた。
「………そんな事、あるはずがないだろう?3年以上付き合いのある私でも、あれの笑った顔なんて見たことがない。最も大きく表情を変えたのですら、精々眉を少し寄せた程度だ」
やれやれと首を振る。他のやつらも皆信じられないといった顔をしている。ミュールに至ってはオレを鼻で笑うような顔をしている。おのれ、次は高いとこにある書類取ってやらねえからな。
「事実なんですよ!オレも目を疑ったんですけど、何度見てもちゃんと笑ってて………」
そう反論しながら、オレはアレスティの笑顔を思い出してしまう。
ーーーいつも無表情なアレスティの、あの慈しむような優しい微笑み。
ぽわぽわと顔に熱が集まっていく。
硬直したオレを訝しげに見つめてくるミュール。お前だってあれ見たら絶対こうなるからなっ、あれはもう破壊兵器だ、性格も完璧なアレスティのあんなもん見たら、男女問わず惚れるだろ。そうだ、一般生徒にあの笑顔を振り撒けば大変なことになるんじゃ………
「とっ、とにかくっ!アレスティのやつがーーー」
「………私が、何でしょうか?」
「うわっ!?あっ、いつの間に!」
背後に立っていた本人に驚いて飛び退く。隣にはシャノンもいる。
「いやその………あ、後でお前にやってもらいたい仕事があるんだよ。手が空いてれば任せたいんだが、いいか?」
咄嗟に適当な嘘をついて誤魔化す。
「はい。………私で良ければ」
普段通りの無表情と平坦な声。ひとまずバレてはいないようで、ほっと息をつく。
仕事のため机に戻っていく2人の後ろ姿には、親しげな雰囲気など欠片もない。さっき見たものが現実だったのか、夢でも見たんじゃないのかと怪しくなってくる。
思わずじっと見つめていると、持ち場に戻ったアレスティとパチリと目があってしまい慌てて逸らす。
ほんっと、なんなんだよ!?
なん………だと………
まだキャラの外見の描写を入れてねぇ………




