社交界の影
ルシアンは面白いものを見る目で
カイルを見ていた
ルシアン
「似合うじゃないか。カイル」
カイル
「お前、馬子にも衣装だと思ってるだろ」
ルシアン
「いやいや。黙っていれば由緒正しき子弟に見えるぞ。」
カイル
「そうかよ。お前は妙に様になってるな。
どこから見ても立派なお貴族様だよ。」
ルシアン
「それはありがとう。カイルくん。」
カイル
「・・・鳥肌がたった。その呼び方でいくのかよ。」
ルシアン
「そうだよ。カイルくん。僕たちは今夜、素敵な夜会にいくんだから」
カイル
「壁のシミになることにする。俺に社交ダンスは無理だぞ。」
ベアトリス
「あらあら。二人とも見違えたわ。
こんな素敵な二人にエスコートしてもらえるなんて
楽しい夜になりそうね。」
ーー数日前
カイル
「それで考えってなんだ」
ルシアン
「こんど侯爵夫人が主催する夜会があるんだがそれに参加する。
その夜会にはレイモンド子爵も来る予定だ。」
カイル
「夜会?しかも侯爵夫人主催の夜会に俺たちみたいな
庶民がどうやって参加するんだよ?」
ルシアン
「実はその夜会にベアトリスさんが招待されてるんだ。
俺たちはその御供として参加させてもらうのさ。」
カイル
「お前のところの大家のベアトリスさんは貴族じゃないだろ?
またどうして招待されてるんだ?」
ルシアン
「ああ。それは主催者の侯爵夫人は慈善活動に熱心な方で
うちの家(ベアトリスさんが大家の家)はもともと
貴族の持ち物で歴史的建造物なんだが
その地域の歴史的建造物保護活動を侯爵夫人がしたのが
きっかけで親交を深めたらしい。」
カイル
「確かにお前の家、歴史ありそうだもんな。」
ーー侯爵邸(夜会会場)
ベアトリスを真ん中に右にカイル、左にルシアンが
並びながら夜会会場に入る。
開会の挨拶として侯爵夫人から挨拶があり
ディナーの後にダンスタイムが始まった。
カイルは宣言どおり壁のシミになることにしたようで
ワインを片手につまらなそうにダンスを眺めている。
ルシアンはベアトリスと数曲踊ったあと
侯爵夫人に近づく人物に気が付いた。(レイモンドだ。)
カイルも気づいたらしく
ルシアンとカイルは
侯爵夫人に挨拶するのに乗じてレイモンドに近づくことにした。
ルシアンはベアトリスに今日の夜会に参加させていただけたことに
お礼が言いたいと言い侯爵夫人へと近づいた。
侯爵夫人が近づいてきたベアトリスたちに気づき声をかける。
「ベアトリス様。ごきげんよう。
夜会は楽しんでいただけているかしら?」
ベアトリス
「はい。キャベル様。
今宵は素晴らしい夜会にお招きいただきありがとうございます。」
キャベル侯爵夫人
「それは良かったわ。
今夜は素敵な方々をお連れなのね。紹介していただけるかしら?」
ベアトリス
「もちろんです。
こちらはうちの住人のルシアンくんで隣にいる彼はその友人のカイルくんです。」
ルシアンくんはとても優秀でローテリアル大学の法学部首席なんですよ。」
キャベル侯爵夫人
「あら。あの名門ローテリアル大学で首席だなんて。
凄いことだわ。将来が楽しみね。」
キャベル侯爵夫人は隣のレイモンドを見て
「そういえばローテリアル大学と言えば、
レイモンド様も多額の寄付をされていたわね。」
レイモンド
「ええ。キャベル様の活動には到底かないませんが
私も貴族としての社会的責任を果たせたらと思い
将来有望な若者たちにより良い環境で学べるように
微力ながらお手伝いをさせていただいています。」
ルシアンがレイモンドに話しかける。
「初めまして。レイモンド様。
僕はルシアン・櫻塚と申します。お会いできて光栄です。」
レイモンド
「こちらこそ将来有望な若者と知り合えてうれしいよ。
そちらのカイルくんもローテリアル大学の生徒なのかい?」
カイル
「いえ。俺、いや僕は違います。」
ルシアン
「彼はチェス仲間なんですよ。
なかなかの腕の持ち主なんですよ。」
レイモンド
「ほお。チェスは盤上の格闘技と言われるほどの
緻密な先読みと心理戦を繰り広げるものだ
若い二人が切磋琢磨するのは素晴らしいね。」
ルシアン
「レイモンド様。ありがとうございます。
これからも励みます。
なごやかに話は進む。
ふいにキャベル侯爵夫人が思い出したように
「櫻塚・・・ルシアン様もしかしてご兄弟がご親戚に
アルフレッド・櫻塚と言う方がいらっしゃらないかしら?」
レイモンドがその名前を聞いたとき
一瞬だが表情が変わったのをルシアンは見逃さなかった。
ルシアン
「はい。アルフレッド・櫻塚は僕の兄です。」
キャベル侯爵夫人
「そうなのね。。。彼は社交界でもいくつもの難事件を
名推理で解決する方として評判だったの。
それがあのようなことになって本当に残念だわ。」
レイモンド
「私も何度かお会いしたことがあるが
アルフレッド殿は大変優秀な方だった。」
ルシアン
「キャベル様。レイモンド様。お気遣いありがとうございます。
僕も兄に負けないように勉学に励みたいと思います。
レイモンド
「おお。もうこんな時間だ。
まだご挨拶をしたい方々がおり、
申し訳ありませんが私はこれにて失礼させていただきます。」
そう言うとレイモンドはその場を離れた。
レイモンドがルシアンの横を通り過ぎたとき
ルシアンにだけに聞こえるように
「付き合う友人は選んだ方が君のためだぞ」とつぶやいた。
ーールシアン自室
夜会が終わり、3人は帰路に就いた。
夜も遅くなったことからカイルは泊まることになり
ルシアンの部屋で今日会ったレイモンドの話をしていた。
カイル
「噂に聞いてたのとだいぶ違ったなあ。驚くほど紳士的だった。」
ルシアン
「あれは芝居だよ。
相手の身分や自分の役に立つ人間には紳士的に振舞っているだけだ。」
げんにすれ違いざまに付き合う友人は選んだ方が良いと忠告をいただいたよ。
カイル
「・・・そうなのか。表と裏がありそうだな」
今夜は、着なれないタキシードやエスコートをしたのに
あまり成果がなかったなあ」
ルシアン
「いやそうでもないぞ。
さっき、ベアトリスさんに聞いたんだが
レイモンドが大学関係者との付き合いが増えたらしい。。。」
カイル
「さすがご婦人方の噂話はためになるね」
そしてルシアンがレイモンド関連の資料を見返していると
資料間に小さなメモが挟まっていることに気づいた。
そこにはアルフレッドの字で「彼は駒でしかない」と書かれていた。
ルシアンはそれを見た瞬間、自分がレイモンドに感じていた違和感
が確信に変わった。一連の黒幕にしてはレイモンドは小物すぎる。
他に仲間がいるのではないか?
カイル
「どうした?考え込んで。」
ルシアンはメモを見せる。
カイル
「これアルフレッドが残したメモか?
どういうことだ?」
ルシアン
「彼は黒幕ではないのかもしれない。。。
明日から過去の事故現場を調査しよう。」




