襲撃
鑑定資料の確認ができなかった
ルシアンとカイルは捜査資料をもう一度見直すことにした。
手分けをして膨大な資料を確認しているが
ルシアンは表向き留学生とアステリアに着ているため
昼は大学に通っていることやカイルは警察業務をしていることもあり
なかなか手がかりを掴めていない状態だ。
その日も2人は資料を家に持ち帰って作業することになった。
警察署でカイルと別れ帰路につくルシアン
ルシアンは兄がLodger契約で借りていた部屋を借りている
大家のベアトリスさんが作ってくれた夕食を食べたあと
自室に帰ったときだった。
人の気配を感じた。
気配のある部屋へ行くと男が部屋を物色していた。
ルシアン「おい。何をしている」
侵入者はルシアンに対して目くらましの魔法を発動
ルシアンは防御魔法を展開しやり過ごしたが
狭い部屋では攻撃魔法は使えない。
相手も考えは同じだったようで肉弾戦に切り替えたようだ。
ルシアンは多少は武術の心得はるが相手の方が上手だった。
徐々に押され、遂にルシアンは相手の拳を腹にくらい倒れでしまった。
男がさらにルシアンを追撃しようとし拳がルシアンに迫る。
ルシアンが咄嗟に防御姿勢をとったがいつまでも衝撃はこなかった。
ルシアンが顔を上げるとそこには男の腕をつかむカイルがいた
あっという間に男の顔や腹にカイルの拳が決まる。
男は後ずさる。
分が悪いと判断した男は窓から逃走した。
カイルはルシアンに手を差し出しながら
「大丈夫か? お前よく賊に襲われるな」
ルシアンはカイルの手を掴み立ちあがる
複雑そうな顔をしながら
「助けてくれてありがとう・・・」
カイル
「賊に心当たりはあるか?」
ルシアン
「いや、初めて見る顔だ
カイルはなぜここに?」
「実は気になることがあったんだ」
「そのことを伝えに来たのさ」
「そしたらお前が襲われていて驚いたぜ」
「気になること?」
「お前の兄貴の事故報告書だよ」
カイルは資料を差し出した。
「鑑定資料が消えたあと、事故報告書の方の閲覧記録も確認した」
「……」
「そしたら妙なことに気付いた」
「閲覧者の中に、鑑定資料を閲覧した人物と同じ名前があった」
「誰だ?」
「ルシエドって男だ」
カイルは眉をひそめながら
「そいつは警察関係者じゃない」
「じゃあ何者なんだ?」
「レイモンド・グレイ卿に仕えている使用人だ」
ルシアンが部屋の中を確認すると
机の引き出しなどが荒らされていた。
ただし
コインも紙幣もそのまま。
売れば高値になる懐中時計すら持ち去られていない。
金銭や金目の物が目的ではない。
何を探していた?
この部屋は兄が借りていた時のまま
ほとんど手をつけていない。
兄の遺品を探していた?
手帳は本棚の奥に隠してあった。
魔導書も無事だった。
だが、引き出しだけは荒らされている。
偶然じゃない。
相手は何を探しているのか知っていた。
兄の遺品には手帳があった。
あの手帳には事故報告書には存在しない記録が残されている。
「……手帳か」
ルシアンは小さく呟いた。
ルシアンが賊の逃げた窓を閉めようとしたとき
床に何か落ちていることに気が付いた。
ボタンだった。
ルシアンは床に落ちたボタンを拾い上げた。
ボタンには奇妙な紋章が刻まれていた。
黒い鴉。
そして交差する二本の黄金の鍵。
ルシアンは首を傾げる。
見覚えがない。
だが隣のカイルは違ったようだ。
ボタンを見た瞬間、
彼の表情が強張った。
「……おい」
「どうした?」
「それをどこで拾った」
「床に落ちていた」
カイルは舌打ちした。
「最悪だ」
「知っているのか?」
「ああ」
苦々しく吐き捨てる。
「レイモンド・グレイ卿の家紋だ」
レイモンド・グレイ。
その名前はルシアンも知っていた。
汚職や贈収賄の噂が絶えない貴族だ。
兄の死に関係がある?
兄の事故。
消えた鑑定資料。
そして今夜の襲撃。
バラバラだった点が、一つの線として繋がり始めていた。




