書き換えられた事故
アルフレッドはローテリアル大学を出て
アシュフォード署には戻らず、
家に帰ることにした。
アルフレッドが玄関を入ったところで
ベアトリスに呼び止められた
ベアトリス
「アルフレッド。お帰りなさい。
あなた宛てに荷物が届いているわよ。」
ベアトリスが小包をアルフレッドに渡す。
小包は国際便で送り主の住所はキルシニア王国になっている。
アルフレッド
「ベアトリスさん。ありがとうございます。」
ーーアルフレッドの部屋
小包を開けると中にはハンカチ、
薬品の瓶、手紙が入っていた。
アルフレッドが手紙の文字を目で追う。
読み終わると魔法で手紙を焼いた。
箱からハンカチと薬品の瓶を取り出す。
薬品の瓶はコートのポケットに入れた。
クローゼットから木箱を取り出すとベッドの上に置く。
箱の中に
・ハンカチ
・魔法式資料
・地図
・調査対象一覧
を入れた。
アルフレッドは引き出しから
録音魔石を取り出すと
机の上に置く。
椅子に座り、机の上の写真立てを見る。
写真立ては二つ。
1つはルシアンの写真
もう一つは、
アルフレッド、ゼノ、
ジェイミー、キャサリンが写っている。
一度目を閉じてから
録音魔石の録音を開始する
・・・
録音が終わり
録音魔石に封印魔法を施す。
ベッドの上の木箱の中に入れる。
木箱に蓋をして未整理と書く。
ギイ。ドアを開ける音
アルフレッドはゼノの部屋に入る。
クローゼットを開けると奥に手に持っていた
木箱を置く。
アルフレッドは部屋を見渡す。
ゼノの部屋は自分の部屋と違い
整理整頓され置かれているものも少ない。
アルフレッドはゼノに
部屋を片付けろと良く言われていたことを思い出す。
机の上にバイオリンケースが置かれているのが目に入る。
アルフレッドはバイオリンケースに触れ
願わくばまたゼノと一緒に演奏できるように祈る。
アルフレッドは身支度を整えると
キッチンにいたベアトリスに声をかける
アルフレッド
「ベアトリスさん。
ちょっと出かけてきます。」
ベアトリス
「あら。こんな時間からどこに?
今、夕食の準備をしていたところだったのよ
今日はビーフシチューを作ったの。」
アルフレッド
「それは残念です。
明日食べさせてもらいます。」
アルフレッドは残念そうにすると
ベアトリスに手を振って部屋を出る。
ーー23:13 事故現場到着
ゼノはまだ到着していない。
3週間前に貿易会社役員だったグレゴリー・ヘイルが
ビルから転落し死亡した。
グレゴリーが倒れていた場所の地面に対して
魔法探知を発動、土属性魔法反応あり。
次にビルの屋上に向かう。
アルフレッドは事故現場であるビルの屋上に来ていた。
屋上は夜半ということもあり人影はない。
月の明かりと僅かな電灯の明かりだけが頼りだ。
ーー3週間前 屋上ビル
アルフレッドは屋上の様子を観察する
屋上には柵がない。
グレゴリーが転落したと思われる場所まで歩く
下を見る。
ビルは7階建てでこの高さから魔法で衝撃を
緩和しない限り致命傷を負うだろう。
アルフレッドは床を見て違和感を覚える。
この周辺だけやけに綺麗だ。
魔法探知を発動する。
魔法反応なし。
アルフレッド
「修復魔法で修正したんじゃないのか?」
他に何かないか見渡すと
いくつかの鉢が置かれていることに気づく。
キラ。
アルフレッド
「?}
鉢を移動し、光ったものを探す。
小さな魔法石のかけらが落ちていた。
アルフレッドは小袋に入れてると
解析魔法を展開
ーー解析結果
内部に人工的な魔法式あり
アルフレッド
「・・・!これは人工鉱石だ。」
アルフレッドはポケットに人工魔法石を入れる。
鉢を元にもどそうとした時、
鉢の下が濡れていることに気付いた。
屋上の床は乾いている。
鉢の下にハンカチを取り出し、液体をしみこませる。
鉢は科捜研へ分析依頼をするとして
こっちのハンカチは別機関に依頼することにした。
ーー23:20 事故現場 ビル屋上
ビルの屋上のドアが開く音がする。
男がアルフレッドに近づいてくる。
男
「アルフレッド。
こんな時間に現場検証をしたいので
立ち会ってほしいなんてどうしたんだい?」
アルフレッド
「悪いな。ジェイミー。
君に確認しなきゃいけないことがあるんだ。」
ジェイミー
「確認?」
アルフレッド
「ああ。話すより実際に見てもらった方がわかるだろう。」
アルフレッドはポケットから
薬品の瓶を取り出すと蓋を開け
あたりに中の液体を撒く。
魔法探知を発動する。
魔法反応あり。
修復魔法反応
土属性魔法反応
ジェイミーが驚愕の表情を浮かべる。
ジェイミー
「なぜ。魔法反応が!」
ジェイミーは慌てて口を押える。
アルフレッド
「驚くのも無理はない。
君が作った魔法痕跡除去薬は凄いよ。
俺の改造した魔法探知でも探知できなくなるんだから。
さすが薬品調合のスペシャリストだな。」
ジェイミー
「・・・」
ジェイミー
「さすがアルフレッドだね。
いつから僕が怪しいって思ってたんだい。」
アルフレッド
「君に依頼した証拠品(鉢)が消えたときからだよ。
証拠品が消えただけじゃなく。
証拠品の調査依頼自体がなかったことにされていた。」
ジェイミー
「君のことだ僕が組織に関わっていることも
わかっているんだろう?」
アルフレッド
「ああ。
転落事故死したグレゴリーは
魔導鉱石の密輸と人工魔法石の売買担当者だったが
人工魔法石の情報を別の組織へ売り渡そうとした
ところを見つかって消されたってとこだろ
このビルから土属性魔法で突き落とし
破損した床を修復魔法をかけた。
その痕跡が残らないように細工をしたってことは
君が組織の人間だと言う証拠だよ。」
ジェイミー
「本当、君は凄いね。
さすが理論の怪物だけはあるね。」
アルフレッド
「・・・。
ジェイミー組織から抜けるんだ。
今ならまだ間に合う。」
ジェイミー
「無理だよ。そんなことできるはずない。
それにあの方が許すはずない。」
アルフレッド
「それなら。教授、エイドリアン教授とは
話がついてる。
君が望むなら君を解放すると約束してもらっている。」
ジェイミーが目を見開く
「解放!?
アルフレッド、君はあの方の何なんだ?」
アルフレッド
「・・・。強いて言えば理解者かな。。。
だからこそ言える。
彼の理想は君が思っているようなものじゃない。
だからこんなことは辞めにするんだ。」
ジェイミーの顔がゆがむ
「理想が僕が思ってるのと違うだって?
君にはわからないだろうね。
あの方のこんなバカげた世界の法則を終わらせる
崇高な考えがわかるはずない。」
アルフレッドは悲しそうに
「ジェイミー。
こんなことをしてもキャサリンは戻らない。。。」
ジェイミー
「わかってるさ。そんなこと。
でもだからこそキャサリンのような被害者を
出さないためにもあの方の理想を実現させるべきなんだ」
アルフレッド
「キャサリンが大病を患って治療中に
命を落としたのは本当に悲しいよ。」
ジェイミー
「違うよ。アルフレッド。
キャサリンは殺されたんだよ。
本来施術技術が未熟で施術なんてできなかった
筈の医者が自分の実績のために行った。
その結果施術を失敗させてキャサリンは
死ぬことになった。」
「おれはそいつに重罪を願ったが
やつは軽度の罰にしかならなかった。
それは奴が有力貴族の出自だったからだ」
「こんな世界間違ってるだろ。
そう思わないかアルフレッド。」
アルフレッド
「・・・」
アルフレッドは決意の表情を浮かべジェイミーを見る
「俺が変えてみせるよ。
一緒に変えようジェイミー。」
ジェイミー
「何言ってるんだい?
そんなことできるわけないだろ
それに君はあと数年で故郷に帰るじゃないか」
アルフレッド
「俺は帰らない。
この国に残る。
騎士試験を受ける。」
ジェイミー
「!!
本気なのか・・・」
アルフレッド
「本気だ。
だからジェイミー。
俺の手を取れ。」
ジェイミーは迷いの表情を浮かべる
その時エイドリアンの教授の言葉を思い出す。
エイドリアン
「ジェイミー。
この国は腐敗している。
私はをそれを終わらせる。
そのためには君の力が必要だ。
私を助けてはくれないだろうか」
ジェイミー
「あなたは爵位もあって
社会的地位だってあるじゃないですか。
正当な方法で変えていくことだってできるんじゃないですか?」
エイドリアンが寂しそうに笑う。
「・・・。
正義の剣では立ちきれないことを
私は身をもって知っている。
だからこそ根底から法則を変える必要があるんだ。」
ジェイミーはアルフレッドを見る。
「僕にはもう戻れそうにないや。。。」
アルフレッドの手を見る。
キャサリンの笑顔を思い出す。
そしてエイドリアンの寂しそうな顔が浮かぶ。
・・・
ジェイミー
「君の手を取れたら……
本当に良かったな」
ジェイミーは後ろに後退してビルの端まで進む。
アルフレッド
「何をするつもりだ。
ジェイミー。」
ジェイミー
「ごめんね。アルフレッド」
ジェイミーは笑うと手を広げて後ろに飛ぶ
ジェイミーが落ちていく
アルフレッドは迷わずビルの端を蹴る
アルフレッド
「ジェイミー!!!」
アルフレッドがジェイミーを抱え込む
右手で魔法を発動。
アルフレッド
「くそ。距離が短い。
一人分の衝撃緩和がやっとだ。」
アルフレッドは石畳が迫るのを見ながら
数秒のはずだが長く感じる落下の静けさを感じ
自分の死がどう扱われるかを考えていた。
ジェイミーは助ける。
これは事故にする。
ドサ。
アルフレッドは自分の体を盾にして
ジェイミーを衝撃から守る。
誰かの呼ぶ声で目を覚ます。
体中が軋むように痛む。
ジェイミー
「なぜ、こんなことをしたんだ・・・」
ジェイミーが回復魔法をかけようとする。
アルフレッド
「ジェイミー。無理だよ。」
アルフレッドは力を振り絞り魔導書を取りだすと
最後のページを破るとジェイミーの胸にそれを突きつける。
ジェイミー
「これは。」
アルフレッド
「これを持ってここからすぐに離れろ。
それは真実にたどり着いたものに
渡してくれ。」
ジェイミー
「できないよ。君を置いていくなんて」
アルフレッドは安心させるように笑う
「大丈夫だよ。ジェイミー
もうすぐゼノが来る
だからゼノに見つかる前に行け。」
ジェイミーは戸惑いながら
何度も振り返りつつ走っていく。
アルフレッド
「早く来いよ。遅いぞ。相棒。」
アルフレッドの意識が遠のく
ゼノ
「アルフレッド!大丈夫か」
ゼノの声で意識が戻る。
ゼノ
「すぐに救急車が来る。
心配するな。大丈夫だ。」
アルフレッド
「ゼノ。遅いじゃないか。
・・・
これは事故だよ。
事故じゃなきゃいけない。」
アルフレッドはもう痛みの感覚がないのを感じ
もうすぐ自分に終わりが近づいていることを理解した。
アルフレッドはゼノの頬に手を伸ばす。
ーーージェイミーの部屋
ゼノ
「だめだ。ここには帰っていない。」
カイル
「ゼノさん。手がかりは見つかりません。」
ゼノ
「・・・。そうか
一旦署に帰ろう。」
ーーーアシュフォード署 廊下
ルシアンがゼノ達に駆け寄る。
ルシアン
「どうでしたか」
カイル
「だめだった。既に逃げた後だった。」
ルシアン
「そうか・・・」
ルシアンはゼノを見て
持っていた録音魔石をゼノに渡す。
ルシアン
「録音魔石の封印魔法が解けました。
・・・兄からゼノさんへのメッセージが
録音されていました。」
ゼノ
「何だって」
ーーアシュフォード署 アルフレッドとゼノの部屋
ゼノが一人椅子に座っている。
机の上には録音魔石が置かれている。
ゼノは録音魔石の再生を開始させる。
ざざざ
アルフレッドの声
ゼノ。これを聞いているってことは
どうやら俺は失敗したようだな・・・
そして既に真実に辿り着いているだろうから
俺からの最後の頼みだ
ジェイミーを救ってやってくれ。
俺がこんな人間らしい感情で動くなんて
自分でもらしくないと思ってる。
故郷にいたころの俺は理論こそ全てで
他のことはどうでもよかった。
家族やごく親しい人達以外のことは
何とも思わなくなっていたせいか
摩擦も多くなっていた。
いつしか俺は「理論の怪物」と呼ばれるようになった。
弟が苦しんでいることもわかっていたのに
どうやって言葉をかけるべきかさえ
分らなくなっていた。
そんな時、研修(留学)を言い渡された。
自分でも漠然と今の状態がダメだとわかっていたから
その命令を受けた。
最初の出会いは
あまり覚えていない。
期待していなかったんだ。
お前は故郷では誰も入ってこなかった
俺の心にどかどかと入って来た。
俺と食事を一緒にして、睡眠を取らせたり
何でこいつはここまで俺に関わろうとするのか理解できなかった。
そんな日常がいつしか当たり前になっていった。
気付けば俺は人間に戻っていた。
子供の頃のように今の俺ならルシアンの話をちゃんと聞けるだろう。
俺の心残りは
ゼノと一緒に調査できなくなることと
ルシアンと話せないことだ
・・・
だがそれも真実に辿り着いた
お前たちなら大丈夫だろう。
ゼノ。俺を人間に戻してしてくれてありがとう。
ピー。
録音魔石の再生が終わる。
ゼノは知らないうちに涙を流していた。
「・・・。
何が『お前たちなら大丈夫だろう。』だ。
全然大丈夫じゃないよ。
アルフレッド。」




