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盤上の邂逅

--1年半前

アルフレッドはいつもの着なれた警察の制服ではなく

バーテンダーの黒ベストを着る。

それを面白くなさそうにゼノが見ている

アルフレッド

 「ゼノ。いつまで拗ねてるんだ。」

ゼノ

 「拗ねてなんていない。ただ納得できないだけだ。」

アルフレッド

 「仕方ないだろ。お前の腕じゃ潜入は無理だ。」

ゼノ

 「カクテルの腕前なら自身があるんだがな

  チェスに関しちゃだめだな・・・」

アルフレッド

 「今回潜入対象の店のコンセプトが

  酒とバーテンダーとチェスを楽しむだからな」

ゼノ

 「まあ。無理はするなよ。

  今回、俺は近くでサポートできない。」

アルフレッド

 「わかってるさ。

  ゼノは俺が潜入中は別チームの応援だったな。」

ゼノ

 「ああ。お互い頑張ろうぜ。」

アルフレッド

 「早く。証拠を掴むさ。」


アルフレッドはあるバーに潜入調査に入ることになった

バーで秘密裏に禁書の売買が行われている情報が寄せられ

その証拠を掴むための潜入だ。


ーーバー

バーのオーナーが

アルフレッドを客に紹介する。

本日から新たな仲間に加わった

アルフレッドくんです。

アルフレッド

 「初めまして。アルフレッドです。

  皆様よろしくお願いします。」

オーナー

 「アルフレッドくんは

  カクテルの腕前もチェスも

  とても素晴らしく皆様に楽しいひと時を

  差し上げられるでしょう」


アルフレッドがカウンターで

客にカクテルを作っていると

オーナーがアルフレッドに声をかける。

オーナー

 「アルフレッドくん。

  早速挑戦者が現れたぞ。

  強敵だ。頑張りたまえ。」

オーナーに案内された個室に

1人の男性が席に座っていた。

テーブルにはチェス盤とチェスの駒が

並べられている。

アルフレッドが席に座る。

そのとき正面の紳士と目が合う。

アルフレッドは少し驚く。

彼は有名な魔導理論の大家。

確か名前は。。。

エイドリアン

 「初めまして。エイドリアンです。

  アルフレッドくん。よろしく頼むよ。」

アルフレッド

 「お相手できて光栄です。エイドリアンさん。

  期待に沿えるよう。頑張ります。」

エイドリアン

 「では早速、始めようか。」

アルフレッド

 「はい。よろしくお願いします。」

エイドリアンは正直期待していなかった。

精々10数手だろうと思っていた。


10分経過

20分経過

まだ終わらない。

手数はお互い20手を超えている。

2人のお互いの一手は早く

そして隙のない攻防戦が繰り広げられていいた。

エイドリアンちらりとアルフレッドを見る。

アルフレッドは真剣な表情でチェスの駒を進める。

エイドリアンが笑う。

 「・・・面白な。」

今度はエイドリアンがチェス盤を見つめ

次の一手を考える。

結局1時間以上に及び

繰り広げられた戦いは

白星が付いたのはエイドリアンだった。

アルフレッドが悔しそうに

 「ありがとうございました。

  さすがにお強い。」

エイドリアン

 「私もこんなに楽しくチェスができたのは

  久しぶりだったよ。

  また今度手合わせを願いたいものだ。」

アルフレッド

 「こんどは負けませんよ。」


エイドリアンとアルフレッドは

週に数回チェスを楽しむことになった。


何回目かのチェスの対戦後

エイドリアン

 「私は大学では禁書管理法も教えていて

  アルフレッドくん、君は禁書についてどう思う?」

アルフレッド

 「禁書は価値があるものだと思います。ただ扱う人間を選ぶ危険なものです。」

エイドリアン

 「そうだね、だから禁書管理法があるんだよ」


ーー家の玄関

アルフレッドが身支度を整えて玄関を出ようとしたときだった

ちょうどゼノが帰ってきた。

ゼノとは生活時間帯が昼夜で違うためか

1週間ぶりに顔を合わせる。

ゼノ

 「久しぶり。そっちはどうだ。」

アルフレッド

 「あまり進展はないな。

  どうやら売買はVIP部屋で行われているらしい。」

ゼノ

 「そうか・・・。その割には随分と楽しそうじゃないか。」

アルフレッドが戸惑う。

 『楽しい?俺はあの人との勝負が楽しくて

  潜入調査を忘れていたのか・・・』

ゼノ

 「どうした?急に黙り込んで」

アルフレッド

 「いや、何でもない。

  お前がいないから調子が出ないのかもな。」

ゼノ

 「何だそりゃ。

  まあ、焦らず行こう。」

アルフレッド

 「・・・そうだな。

  すまないが今から出勤なんだ。

  じゃあな。」

アルフレッドが店に着いて準備が終わり

店に出るとオーナーから声がかかる。

オーナー

 「エイドリアン様がお待ちだ。

  早く行きなさい。

  どうやら彼は君が気にいたらしい。

  彼は上客だ失礼のないようにな。」

アルフレッド

 「はい。」

アルフレッドは玄関先でのゼノとの会話を

思い出し、気を引き締めていこうと思い

身を正してエイドリアンの待つ部屋のドアをノックする。


ーー数時間後 バーカウンター

カウンターにはアルフレッドがカクテルを作っている。

気持ちを新たにし勝負に臨んだからか

今回はアルフレッドに白星がついた。

いつもなら勝負が終わったら帰る

エイドリアンが珍しくカクテルを作ってくれないかと言ってきた。

アルフレッド

 「何にしますか?」

エイドリアン

 「そうだな。コロネーションを二つ

  一つは君に。」

アルフレッド

 「・・・わかりました。」

挿絵(By みてみん)


アルフレッドがシェイカーを振り

手際よくコロネーションを2杯分作る。

そのうちの1杯をエイドリアンの前に静かに置く。

エイドリアン

 「ありがとう。いただくよ。

  君も飲むといい。」

アルフレッド

 「はい。。。」

エイドリアンはしばらくカクテルを楽しむと

エイドリアン

 「そろそろ。お暇しなくては

  明日も朝から授業が入っていてね。」

アルフレッド

 「そうですか。今宵も良い夜でした。

  またのお越しをお待ちしております。」

エイドリアンは立ちあがり、コートを着る。

アルフレッドは見送りのため店の前まで送る。

ふぃにエイドリアンが近づきアルフレッドに耳打ちをする。

明後日の夜に素敵な招待を受けている

そこには君が知りたかったものがあると思うんだが

一緒にどうだい?

アルフレッドは少し考えてから

 「是非。お願いします。」

エイドリアン

 「そうか。ではまた明後日に」

エイドリアンは振り返ることもなく遠ざかっていく。


アルフレッド

 「どういうつもりかはわからないがこれはチャンスだ。」

アルフレッドはスマホを取り出し

明後日禁書取引の場に立ち会う可能性ありと打ち込む。


--明後日 VIPルーム

VIPルームの前にエイドリアンが待っていた。

エイドリアンがVIP前のスタッフに声をかける。

エイドリアン

 「彼もいっしょに」

スタッフ

 「はい。かしこまりました。」

アルフレッドはエイドリアンと一緒にVIPルームへ入る。

VIPルームには複数人の男女が座っている。

アルフレッド達は案内された席に腰を下ろす。

アルフレッド

 「どういうつもりですか。エイドリアンさん」

エイドリアンは静かに人差し指をたて口にあてる。

そこにステージにオーナーが現れ

オーナー

 「今宵は皆様、お集まりいただきありがとうございます。

  早速ですが今回のオークションの品でございます。」

台に乗せられた禁書が運ばれてくる。

オーナー

 「こちらはとある侯爵家より譲り受けた

  由緒ある土属性に関する禁書になります。

  めったにお目にかかれない逸品です」

オークショニアが価格を提示していく。

アルフレッドは隠し持っていたカメラで禁書を撮影。

価格はどんどん吊り上がっていく。

そして高額な価格で落札されようと

ハンマーを振り下ろされようとしたときだった。


複数人の警察官が流れ込んでくる。

警察官

 「皆さん。席を離れないでください。

  お話を聞かせてもらいます。」

  

ーーバーの入り口前

アルフレッドは連行されていくオーナたちを眺めていた。

後ろからエイドリアンが近づいてくる。

エイドリアンにも警察は話を聞いたが

初めての参加で何も知らずに招待されただけだと判断されたらしい。

アルフレッド

 「エイドリアンさん。なぜ捜査に協力してくださったんですか」

エイドリアン

 「魔法の研究者の端くれとして禁書がその価値も

  わからない人間に渡るのが嫌だっただけだよ」

アルフレッド

 「・・・。ご協力ありがとうございました。」

アルフレッドはその場を離れようとした時だった。

エイドリアン

 「君と勝負が出来なくなるのは残念だよ。

  気が向いたら大学の私の研究室に来てくれ歓迎するよ。」

アルフレッドは一礼すると歩き始めた。


ーーローテリアル大学 エイドリアンの研究室

ドアのノックの音が響く

エイドリアン

 「どうぞ」

ドアを開けて男性が入ってくる。

大学関係者ではない。

男性

 「・・・」

エイドリアン

 「やあ。来てくれると思っていたよ。

  ようこそ、アルフレッド・櫻塚くん」


ーー数時間前 

アルフレッドは潜入捜査が予定より早く片付き

ガレスに報告も兼ね帰任の挨拶をしに彼の執務室へ来ていた。

ガレス

 「ご苦労だった。

  思ったより早く証拠現場を押さえられたな。」

アルフレッド

 「はい。協力者のおかげです。」

ガレス

 「協力者ね・・・

  まあ、いい。検挙できたからな」

アルフレッド

 「次の捜査ですがゼノと合流しますか」

ガレス

 「いや。お前はしばらく休暇を取れ」

アルフレッド

 「休暇?なぜですか」

ガレス

 「お前、警察官は休まなくてもいいと思ってるだろ。

  まあ実際、事件が建て込むとそうだがな。」

  

 「ゼノたちが追っている事件は

  今山場を迎えてる。

  その裏付けのためノース・インダストリア地方に

  泊まり込んで捜査に当たってる。

  あと数週間で蹴りが付くだろう。」

  

 「アルフレッド。

  お前はそれまで休暇をとれ」

  

アルフレッド

 「・・・・わかりました。」

 

アルフレッドは思わぬまとまった休暇を

どう過ごすか思案していると

エイドリアンを思い出した。

アルフレッド

 「行ってみるか・・・」

 

ーーローテリアル大学 廊下

アルフレッドは手に紅茶の茶葉とスコーンが入った紙袋を下げながら

廊下を歩いていた。

ちょうどエイドリアンの部屋から

数名の女子生徒が出てくるのが見えた。

女子生徒たち

 「エイドリアン教授って本当に素敵よね。」

 「本当、紳士的でかっこよくて授業も丁寧だし

  教え方も上手。」

 「あんな。魅力的な方がまだ独身なんて

  なんでかしら?」

 「噂だけど、爵位継承でいろいろあるみたい。」

アルフレッドはすれ違いざまに話を聞いていた。

アルフレッド

 「爵位継承かあ・・・。

  どの国でも爵位があると大変だな」


ーーローテリアル大学 エイドリアンの研究室

エイドリアンとアルフレッドは

アルフレッドが持ってきた

紅茶とスコーンを食べながら

古代術式解読学や魔法の原理について話をした。

エイドリアンは魔導理論の大家だけあって

アルフレッドが知らなった理論や

魔道具の話しをしてあっという間に時間が過ぎた。


アルフレッドはそれから何回か大学の研究室に通う。


今日はチェスの勝負をすることになった。

珍しくアルフレッドが長考している。

エイドリアン

 「アルフレッド。負けを認めたらどうだい。」

アルフレッド

 「まさか。これからですよ教授」

エイドリアンは口の端を上げながら

アルフレッドを見る。

アルフレッド

 「ほら、見つけたここだ。」

エイドリアンは盤上をみて形勢が逆転されたことを

理解する。

エイドリアンは少し驚き次の手を考える。

勝負はアルフレッドの白星。

アルフレッド

 「遅くまですみません。

  そろそろ失礼します。」

エイドリアン

 「いや。楽しかったよ。・・・」

アルフレッド

 「教授どうしましたか?」

エイドリアン

 「いや。君とは色々研究の事やチェスのことを

  もっと話したいと思ってね。

  今度私の家に来ないかい。」

アルフレッド

 「教授の家にですか?

  よろしいんですか。」

エイドリアン

 「もちろん。古いだけの屋敷だが

  先祖代々の禁書や古典魔導書は

  君も興味があると思うがね。」

アルフレッド

 「では、お言葉に甘えて

  今度お伺いします。」

エイドリアンは

屋敷の住所を書いたメモをアルフレッドに渡す。


ドアが閉まる音

エイドリアン

 「どうしたことだ。

  私は今、研究も組織のためでもなく

  一人の人間として楽しんでいるなんて・・・」

エイドリアンはチェスで見せたアルフレッドの

意志の炎をやどした瞳を思い出していた。

 「ああそうか。あの瞳や姿かたちがあの人と重なるのか。。。」

 

ーー家 アルフレッドの部屋

アルフレッドはベッドで仰向けに寝ながら

エイドリアンについて考えていた。

エイドリアンは大変魅力的な人で老若男女に慕われている

生徒たちにも大変な人気だ。

なのになぜかアルフレッドには時々

エイドリアンの目の奥には黒い影が見える気がした。

アルフレッドは住所の描かれたメモを見つめながら

 「何かわかるんだろうか。。。」


ーーエイドリアン邸

アルフレッドは執事に案内され書斎に入る。

エイドリアンはどうやら仕事をしていたようだ。

エイドリアン

 「アルフレッド。良く来てくれたね。

  来てくれたところ悪いのだが急ぎの仕事があってね。

  少し待ってくれるかね。」

アルフレッド

 「かまいませんよ。」

エイドリアン

 「悪いね。待っている間

  ここにある本を見てるといい」


アルフレッドは書棚にある本を興味深く見ている

どれも一般の書店や図書館等には置いていない

貴重な魔法の書籍とエイドリアンの研究論文も並べられていた。

ーー数時間後

アルフレッドの机の前には本が山積みになっている。

凄い速さでページがめくられていく。

アルフレッドが視線を感じて顔を上げると

エイドリアンが楽しそうにアルフレッドを見ていた。

アルフレッド

 「すみません。夢中になっていて気づきませんでした。」

エイドリアン

 「いや。いいんだよ。

  君は警察官より研究者向きなんじゃないかな。

  どうだい今からでも研究者にならないかい?」

アルフレッド

 「ご冗談を。俺には無理ですよ。」

エイドリアン

 「そうでもないさ。

  今からでも十分間に合うさ。」

エイドリアンが時計を見る。

 「アルフレッド、今日は泊まっていくといい。」

アルフレッド

 「いえ。そんなわけにはいきません。」

エイドリアン

 「遠慮することはない。

  私は独身で親族は遠い親戚しかいなくてね

  ディナーを一緒にしてくれると嬉しいんだがね。」

アルフレッド

 「・・・。ではお言葉に甘えて。」

 

2人は食事をしながらエイドリアンの研究について

話しをしていた。

エイドリアン

 「さっき書斎で熱心に私の論文を読んでいたがどうだったかね。」

アルフレッド

 「非常に興味深いテーマでした。

  特に魔法改変の理論は世界を変えてしますほどだと思います。」

エイドリアン

 「もしその理論で既存の魔法理論を

  書き換えられるとしたら、君はどう使う?」

アルフレッド

 「俺ならどう使うですか・・・

  大切な人のために使いたいです。」

エイドリアン

 「そうか。だがあの理論は人を救うためだけのものではない。

  世界を変えるため考えた理論だ。

  どうだね、一緒に証明してみないかい。」

アルフレッド

 「・・・以前の故郷にいたころの私ならあなたの理論に賛同したでしょう。

  でも今の私は世界に生きる人々を傷つける理論なら証明したくありません。」

エイドリアンはゆっくりと瞬きをして微笑む。

 「そうか残念だ。君となら証明できると思ったんだがね」

アルフレッドは微笑み返し

 「俺も残念です。」

エイドリアン

 「さて、アルフレッド。

  君は確かピアノが趣味だったね。

  良かったら聞かせてくれないかい。」

アルフレッド

 「ええ。いいですよ。」

 

ーー屋敷の一室

ピアノの音色が響く

エイドリアンは椅子に座ってアルフレッドの演奏を聞いていた。

演奏が終わりアルフレッドがエイドリアンに近づく

アルフレッド

 「今度は教授の音を聞かせてくれませんか?」

エイドリアン

 「よろこんで。」

アルフレッドは部屋にあるバーコーナーを見て

 「カクテルを作ってもいいですか?」

エイドリアン

 「好きにするといい。」

アルフレッドはバーでカクテルの準備をする。

エイドリアンはピアノの前に座ると演奏を始めた。

エイドリアンの演奏が終わるころ

アルフレッドがカクテルをエイドリアンに差し出す。

作ったカクテルは「オールドファッションド」だった。


挿絵(By みてみん)


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