静かな朝、動き出す事件
事件の翌日、朝から署に行くことを
夕飯の時にゼノに話したところ
朝からなら一緒に行くかと言われ
二つ返事で了承したルシアンだった。
ーー朝
ゼノは二人分の朝食の準備をしていた
目玉焼きにベーコン、ソーセージ、ベイクドビーンズを
手際よく皿に盛りつけると
焼いていたトーストが出来上がる音が鳴る。
ゼノ
「まずまずだな。」
ゼノ時計を確認し
「そろそろルシアンを起こしに行くかな」
ゼノは階段を上りルシアンの部屋の前へ
ゼノ
「ルシアン。朝だぞ。
起きろ。今日は一緒に署に行くんだろ?」
ルシアン
「・・・・・」
ゼノ
「入るぞ。」
ゼノはドアを開けて部屋に入る
部屋の中を見渡すゼノ。
ほとんどがアルフレッドが住んでいたままだったが
机に書きかけのレポートと魔導数理学Ⅰ、魔法の原理、
古代術式解読学の書籍が積まれている。
壁にはダーツの的が張り付けられていた。
この前、カイルにダーツで負けたのを悔しがっていたので
リベンジに向けて特訓中なのだろう。
ゆっくりとゼノはベッドに向かう。
ゼノはルシアンの寝顔を見ながら
眼鏡を取ると本当にアルフレッドにそっくりで
思わず呼びそうになるほどだった。
ゼノ
こいつはルシアンでアルフレッドじゃないと
頭では理解しているつもりだが、まだ心の整理はついていない。
アルフレッドを失った喪失感は大きい
しかし、ルシアンをアルフレッドの代わりとして見ることはしたくない。
ゼノ
「少しずつ慣れていくしかないな。。。」
ゼノは一呼吸してルシアンを起こすことにした。
ゼノ
「ルシアン。朝だぞ。起きないと置いていくぞ
それでもいいのか?」
ルシアン
「うう・・・ゼノさん?あと5分だけ。。。」
ゼノ
「アルフレッドも良くそう言っていたが
5分で起きたためしがない。
君たちはそんなところまで似てるのか。」
ルシアン
「・・・!?兄さんが?」
ルシアンは兄の名前を認識して慌てて起きる。
ゼノ
「やっとお目覚めか?
おはよう。ルシアン」
ルシアン
「おはようございます。。。
ゼノさん。」
ルシアン
「ゼノさんはよく兄さんを起こしていたんですか?」
ゼノ
「ああ。ここに同居するようになってからは
ほぼ毎日起こすのが俺の朝の日課になってたよ」
ルシアンが考え込む。
ゼノ
「ルシアン。どうした?」
ルシアン
「すみません。
兄は故郷では家族の誰よりも早く起きていたので」
ゼノ
「そうなのか?あいつはけっこう寝起きは悪かったぞ。」
ルシアン
「・・・兄はゼノさんのこと本当に信頼していたんですね。
少し羨ましいです。」
ゼノ
「・・・そうだといいんだがな。
さて本当に起きて準備しないと
朝飯抜きで行くことになるぞ」
ルシアンは慌ててベッドから起き上がる。
それを見届けてからゼノは紅茶を入れるため下へ降りていく。
ゼノ「そう言えばルシアンはコーヒー派だったな」
ゼノは二人分のコーヒーを淹れているとルシアンが下りてきた。
そして二人は他愛もない大学や警察の話をしながら朝食を食べるのだった。
ーーアシュフォード署
ルシアンとゼノが署に着くともう
カイルが来て準備をしていた。
カイル
「ルシアン、ゼノさん。おはよう。」
ゼノ・ルシアン
「おはよう。カイル」
ゼノ
「随分早いじゃないか。」
カイル
「昨日は魔法探知で手がかりを見逃したから
今度は見逃さないようにいろいろ見てたところです」
ゼノ
「何か収穫はあったか?」
カイル
「収穫ってほどじゃないですが部屋の鍵で少し気になった点があります」
ルシアン
「気になる点?」
カイル
「ああ。部屋の鍵は2つあって一つは
大学のスペアキーとして総務部が厳重に管理していた。
もう一つは被害者が倒れていた近くで見つかってる。」
ルシアン
「?何かおかしな点があるのか?」
カイル
「魔法式の暴走による爆発なのに被害者の近くに
鍵が落ちてるのはおかしくないか?
窓ガラスや本が散乱するほどの爆風で
被害者はその爆風の衝撃による外傷性ショックで亡くなってる。」
ゼノ
「ポケットに入っていたのが被害者が吹き飛んだ時に落ちたんじゃないか?」
カイルは現場写真を机に広げた。
カイル
「これを見てください。
被害者の周りには紅茶がこぼれています。
机に置いてあった紅茶だと思います。
鍵ですが床の方に向いていた面は濡れていて
表面は乾いてます。」
ルシアン
「鍵は爆発の後に置かれた?」
ゼノ
「どうやって鍵を置いたんだ?
窓もドアも施錠されていて鍵の解除防止魔法がほどこさえて
いて魔法では開けられないぞ」
カイル
「それは・・・
現場に行って確認します。
ボスからは大学の部屋の再調査許可は出てます。」
ルシアン
「俺も一緒に行く。」
ゼノ
「二手に分かれよう。
俺は監視記録と証拠品を再度調べる」
ルシアン・カイル
「わかりました。」
カイル
「行こう。ルシアン」
そういうとカイルは走り出す。
ルシアンはカイルの後を急いで追いかける。
ーーローテリア大学 研究棟
部屋は現場保存のため規制線が張られていた。
カイルたちはそれを軽く飛び越えると部屋に入った
被害者の倒れていた場所には目印が付いている。
その周辺の床には確かに紅茶のこぼれたあとが残っていた。
2人は部屋の中をくまなく捜査した。
ルシアンがドア付近を調べていた時だった
ルシアン
「カイル。ちょっと来てくれ。」
カイル
「どうした?何か見つかったか?」
ドアは木製で上の方が明かり取りになっている。
ルシアン
「明かり取りの枠に釣り糸が引っかかっている。」
カイル
「釣り糸?どうしてこんなところに?」
ルシアン
「わからないが事故と関係があるかもしれない。
保管しよう。」
カイル
「そうだな。採取ようの袋に釣り糸を入れた」
カイル
「俺は被害者と関りがあった大学関係者から話を聞いてくる。
今回はここはお前の通ってる大学だから一緒はやめた方がいい。
ルシアンは引き続き部屋の調査を頼む。」
ルシアン
「わかった。14時に食堂でどうだ?」
カイル
「それで大丈夫だ。じゃあまた後で」
カイルは部屋を出ていった。
ルシアンは改めて部屋を見渡す。
魔法式が書かれた紙が置かれたいた机をみる
大きめの机で端の方には卓上ブックスタンドが置いてある
しっかりと固定してあったため爆風でも吹き飛ばなかったようだ。
確か万年筆はここに転がっていた。
机と椅子。椅子の背には本棚が並んでいる。
被害者は椅子のない机の前方から魔法式の暴走で
後方に吹き飛んだようだ。
ルシアン机の下を覗き込む。
するとガラス片とまざり青白い結晶が落ちているのに気付いた。
ルシアンは青白い結晶を小瓶に入れる。
その後、机の引き出しを確認すると
封筒が入っていた。A4サイズが入る大きめの封筒で
大学のマークが印字されているので
学校の売店に売っている封筒だとわかった。
封筒の枚数を確認する9枚入っていた。
この封筒は10枚1セットで販売なので1枚足りない。
他にも何か手がかりがないか探したが他にはなかったため
食堂に向かうことにした。
ーー食堂
少し早めに着いたのでルシアンはカイルの分のランチもと思い
カフェテリア方式なのでトレイに二人分の
ジャケット・ポテト、クランブル、
コーヒーをそれぞれ二つとりレジに向かう。
会計が済んだころカイルが食堂に入ってきた。
カイルは警官の制服のため食堂では目立つため
2人は外で遅めのランチにすることにした。
ルシアン
「カイル。こっちだちょうどいい場所がある」
ルシアンは食堂から少しは離れたベンチが置かれた場所に
カイルを案内する。
カイル
「こんなところあるんだな」
ルシアン
「ここは建物から離れているからあまり人がこない」
ルシアンは袋から食堂で買ったジャケット・ポテトなどを
カイルに渡す。
カイル
「お。おいしそうだな。いただきます。」
ルシアンとカイルは食べながらお互いの調査結果を話あった。
ルシアン
「部屋から青白い結晶を見つけた。
科学捜査研究所で調べてもらってくれ」
ルシアン
「あとは封筒が1枚見つからない。」
カイル
「封筒?それがどうしたんだ」
ルシアン
「俺は大学の売店はよく利用していて
入口にも『本日発売』と掲示されていたから覚えているんだが
その封筒は最近リニューアルされて
学校のマークの入った新しい封筒なんだ。
事故の当日に販売が開始された。
でも封筒は部屋からは見つからなかった。」
カイル
「事故じゃなくて、事件なら犯人が持ち去った?」
ルシアン
「おそらくな。そっちの成果は?」
カイル
「何名かの大学関係者に話を聞いてきた」
1人目:助手
イザベラの研究の助手をしていた人物で
当日はイザベラから頼まれて資料を集めに
国立図書館に行っていたそうだ。
2人目は大学院生
イザベラのゼミに所属している学生で
当日は授業を受けていたとのことだ。
3人目は共同研究教授
イザベラと共同研究をしていて
近く研究成果を発表する予定だったらしい。
当日は自分の研究室で仕事をしていたと言ってる。
カイル
「これは助手と大学院生二人から聞いた話なんだが
どうやら共同研究教授とイザベラはもめていたらしい。
研究成果の発表の準備をしていたが
急にイザベラが研究の検証をもう一度違う方法で
やり直したいと言ったのが原因らしい。」
ルシアン
「発表間近だったのにどうして?」
カイル
「それは分からないが共同研究教授である
アーノルド・ウェインライトのことを
詳しく調べてみたほうがよさそうだ」
ルシアン
「アーノルド教授は魔法式最適化・魔力伝導理論の権威で
イザベラ准教授とは新術式開発の研究を一緒に行っていた。」
ルシアン
「今後の調査方針も決めたいから
一度署に戻ってゼノさんと合流しよう。」
ルシアンとカイルは食事を終えたらすぐに署に向かうことにした。
ーーアシュフォード署 保管室
ゼノは鑑定記録と証拠品を確認するため
保管室へ向かう。
事件事故の鑑定記録と証拠品などは紛失を防ぐため
解決されるまでは署内の保管室へ保管しその後は保管庫へ保管になる。
ゼノは棚番号を確認しながら魔法式の暴発事故の資料保管場所の棚を探す。
ゼノ
「!?鑑定記録と証拠品が足りない。」
棚には管理番号が記載されている
本来あるはずの鑑定記録の保管箱は消え証拠品のいくつかが消えていた。
ゼノ
「誰かがもちだした。……内部の人間か?」




