理論の遺産
ゼノは帰国した日は遅くまで手続き処理をしたため
署の近くに泊まり
翌日、アルフレッドと共に住んでいたあの家に戻ることにした。
ゼノが懐かしそうに
家の門をくぐりゆっくり玄関に向かっていると
ベアトリスが庭で花の手入れをしていた。
ゼノ
「ベアトリスさん。
お久しぶりです。
ただいま戻りました。」
ベアトリスが顔を上げ
少し驚いた様子で
「あら。おかえりなさい。
長期研修お疲れ様。
変わりはない?」
ゼノ
「はい。無事に帰国できました。」
ゼノは手に持っていたお土産の
お菓子をベアトリスに差し出す。
ゼノ
「これはアルディオン連邦の
焼き菓子になります。
どうぞよかったら受け取ってください。」
ベアトリス
「ありがとう。いただくわ。
ちょうど少し前にルシアンくんも
帰ってきたからお茶にしましょう。」
ゼノ
「・・・そうなんですね。」
ゼノは事前にカイルからアルフレッドの部屋を
今はルシアンが借りていると聞いていたが
署でのアルフレッドによく似た面差しのルシアンを思い出し
少しばかり動揺した。
ベアトリスはゼノの様子には気づかずに
屋敷へ入っていく。
それに続いてゼノも屋敷へ向かった。
ゼノは久しぶりに
自室に荷物とコートを置きに入った。
研修前は生活が荒んでいたこともあり
多少は荒れてはいたがもともと物が少ないこともあり
思ったよりはましだった。
ゼノは荷物を置き、コートを掛けると廊下に出た。
アルフレッドの部屋(今はルシアンの部屋)
は廊下を挟んで向かい側の部屋になる。
ゼノは一瞬躊躇ったがルシアンの部屋のドアをノックする。
「ルシアン。居るかい?
良かったら下でお茶にしないか?」
少ししてドアが開き
中からルシアンが顔を出す。
ルシアン
「ゼノさん。おかえりなさい。・・・
お茶ご一緒します。」
ゼノ
「そうか。良かった。
アルディオン連邦のお土産の
焼き菓子があるんだ。
美味しいぞ」
ルシアン
「そうなんですか。楽しみです。」
ゼノとルシアンはお互いに少しぎこちなくながらも
話ながら居間へ向かう。
ちょうどベアトリスが
紅茶と焼き菓子を持って来るところだった。
ベアトリス
「ルシアンくんは紅茶で良かったかしら?」
ルシアン
「はい。大丈夫です。」
ゼノ
「?」
不思議そうなゼノに気づきベアトリス
「ルシアンくんはアルフレッドくんと違って
紅茶よりコーヒーなのよね。」
ルシアン
「・・・紅茶も好きですよ。兄ほどではありませんが」
ベアトリス
「アルフレッドくんは本当に紅茶が好きだったわね。
いろんな種類の紅茶を私もたくさん貰うおかげで
紅茶を買うことがなくなっていたほどよ。
そう言えばよくゼノくんもお茶の買い出しに
一緒に行っていたわね。」
ゼノ
「ええ。一緒に行って荷物持ちさせされるうえに
茶葉のうんちくを聞かされてましたよ。」
ルシアン
「そうだったんですね。
兄は故郷にいるころはそんなに紅茶好きではなかったんですが
こちらに来てからそんなに好きになったんですね。」
ゼノ
「ああ。それはある事件の影響だと思う。。。」
ルシアン
「事件?事件に紅茶が関係してたんですか?」
ゼノはある二人で解決した事件を思い出しながら
話はじめる。
ゼノ
「あれは2年くらい前に転落事件があったんだ。
当初被害者は、階段から足を踏み外したことによる
事故死だったんだがアルフレッドが不自然だと言い出したんだ。」
ーー2年前
アルフレッド
「被害者の女性はまだ若く、
階段を不注意で踏み外すのはあまり考えられない。」
ゼノ
「でも実際に女性が転落したとこを見た証言者は
女性がふらついて足を踏み外したように見えたと証言している。」
アルフレッド
「女性の部屋に大量の紅茶が気になるんだ。。。」
女性は紅茶好きなことを知ってる人々から
紅茶をプレゼントされていたらしい。
2人は被害女性の部屋を調査することにした。
ゼノ
「調査の結果部屋から特徴的な術式署名の魔法痕跡が見つかった。
その術式は温度を変化させる魔法式だった。」
アルフレッド
「この術式署名は被害者のものとは違った。
おそらく犯人のものだ。
被害者はカフェインの大量摂取により
めまいを起こしたと思われる」
アルフレッド
「ゼノこの部屋にある紅茶の種類を記録してくれ。」
ゼノ
「? 何のために」
アルフレッド
「ゼノ。紅茶の飲み比べをしようじゃないか」
アルフレッドとゼノは大量のお茶を飲み比べることにした
部屋と同じ魔法式でお茶を淹れ、カフェインの量を測定。
ある茶葉で高濃度のカフェインが抽出されることを特定した。
そこからその茶葉を購入した店を探し、
購入者を割り出した。そして犯人の術式署名が現場のものと一致したことで
殺人事件として解決したのだった。
--現代
ゼノ
「その時紅茶は淹れる温度や茶葉でいろいろな味に
なることが分かって追求心が強いアルフレッドははまったらしく
それから紅茶マニアになったんだよ。」
ルシアン
「そんなことがあったんですね。
俺も紅茶に興味が出てきました。」
3人はそれからしばらく雑談をしていた。
ーーゼノの部屋
ゼノはルシアンとアルフレッドの話ができたことで
少し心が軽くなったような気がした・・・
そして帰国後そのままにしていた
スーツケースを奥へしまおうとして
荷物の陰に隠れていた箱に気付いた
ゼノは箱を机に置く
箱の蓋には「未整理」と書かれていた。
蓋を開けると中には
箱には
・ハンカチ
・魔法式に関する資料
・地図
・録音魔石
・調査対象一覧
ゼノ
「間違いない。
これはアルフレッドの字だ。」
ゼノは慌ててルシアンを呼びに行く。
ゼノ
「ルシアン。アルフレッド最後の遺産が見つかった。」




