「因果の逆転」
ルシアンに前には魔法関連の書籍がうず高く積まれていた。
数日前にヴィクトリアの遺品の指輪から魔法式が発見された。
おそらくこの指輪はジャマルの溺死に関わる魔法式だと思われたが
魔法発動後に式が変化する細工がされていたため元の魔法式が何であったかを
知る必要があった。
アルフレッドが残した魔導書に変化後の魔法式に似た式を見つけたが
魔導書は古代魔法文字で書かれたものも多くルシアンは寝る間も惜しんで
解読作業にあたっていた。
その間にカイルは
他の事件の魔法式の確認をしに現場で調査を行っていた。
ルシアン
「・・・。ふう。やっと読めた。
兄さんは本当に凄いな。」
「兄さんはこの魔法に一人で気付いていたのか……」
ルシアンはそう言うと写真立ての中の兄を見つめた。
ーー翌日
警察署内の一室にルシアンとカイルの姿があった。
カイル
「魔法式の解読はできたか?」
ルシアン
「ああ。何とか解けたよ・・・」
カイル
「お。やるじゃないかあれを解くなんて」
ルシアン
「・・・で。そっちはどうだった」
カイル
「こっちもばっちり魔法式を確認できたぜ」
ルシアン
「本当か?よくできたな。」
一番古い事件は20年も前だぞ。」
カイル
「運もあったが、一番は遺族が諦めなかったことだ。」
「事故じゃないと信じて証拠を守り続けてくれてた。」
ルシアン
「どういうことだ?」
カイル
「ああ、20年前と馬車転覆事故と15年前の火災事故は
遺族が事故じゃないと信じて遺品や証拠品を保管していたんだ。
保管状態が良くて助かったよ。」
カイル
「魔法は痕跡残留魔法を使ったのさ」
ルシアン
「確か痕跡残留魔法は
人や物、場所に残された「魔力の痕跡」を読み取り
そこから魔法式を補完して本来の魔法式を導き出す魔法だったな?」
カイル
「そうだ。お前が使う。
現象再定義理論に基づき魔法式の再現をするとは
方法が違うが消された魔法式を特定できるのさ」
ルシアン
「意外だな。お前は攻撃魔法が得意だと思っていた。」
カイル
「警察官には必要だってお前の兄さんに教わったんだよ・・・」
ルシアン
「そうだったのか・・・」
カイル
「さて。答え合わせと行こうか」
ルシアンは解読した魔法式を机へ置いた。
カイルも魔法式を書き写した紙を隣へ置く。
二人は同時に黙り込む。
線の並び。
術式。
魔力回路。
全てが一致していた。
カイル
「……同じだ。」
ルシアン
「ああ。」
ルシアンが解読した魔法式と
カイルが持ってきた魔法式は同じ論理の魔法だったことがわかった。
その魔法の名は「因果の逆転」
効果は結果はそのままに、「原因の解釈」を書き換えること
カイル
「……おい。」
「そんな魔法が存在するのか。」
ルシアンは紙を一枚取り出した。
半年前の転落死の場合
真実
突風
↓
転落
↓
死亡
その横へもう一つ線を書く。
事故
足を滑らせる
↓
転落
↓
死亡
ルシアン
「結果は変わらない。
書き換えられるのは原因だけだ。」
整理すると
馬車転覆事故
結果:馬車転落により死亡
原因(真実):馬への攻撃
因果の逆転:御者が前方不注意による転落
火事
結果;焼死
原因(真実):魔法による放火
因果の逆転:暖炉からの火災
溺死
結果:溺死
原因(真実):水草が伸びてジャマルの服に絡まる
因果の逆転:水難事故
転落事故
結果:転落死
原因(真実):魔法攻撃による転落
因果の逆転:足を滑らせた
ルシアン
「兄さんは事故じゃなく、事故を作る魔法を追っていたんだ」
カイル
「これで事故に見せかけた殺人事件になったな」
ルシアン
「ああ。この殺人事件には複数の人物が関わっているはずだ」
少なくとも3役は必要だ。
①実行役
②証拠隠滅役
③情報操作役
」
カイル
「それは・・・組織じゃねえか」
ルシアン
「兄さんは、この組織に殺された。」
沈黙。
カイルが小さく呟く。
「……俺たちは、とんでもない敵を追ってる。」




