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その断罪、すでに三回目です  作者: あめとおと


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8



違和感は、最初からあった。


「……静かすぎる」


大広間。


つい先ほどまで、ざわめきに満ちていた場所。


それが今は――


「誰も、いない?」


人が、消えていた。


王太子も。

リオンも。

セリーヌも。


まるで最初から、存在しなかったかのように。


「……そういうこと」


ゆっくりと、息を吐く。


「切り離したのね」


空間ごと。


時間ごと。


“場面”そのものを。


「ずいぶんと強引じゃない」


足音が響く。


広い空間に、一人分だけ。


コツ、コツ、と。


「ねえ」


声をかける。


当然、返事はない。


けれど。


「聞こえているのでしょう?」


視線を、上へ。


「ここは、あなたの領域?」


その瞬間。


――ザ、と。


音がした。


空気が、乱れる。


そして。


「……ああ」


思わず、笑みがこぼれる。


「やっと、姿を見せる気になったのね」


目の前。


何もなかった空間に、“歪み”が生まれる。


光が、ねじれる。


影が、重なる。


――形にならない“何か”。


「はじめまして、かしら」


一歩、踏み出す。


「それとも、ずっと会っていたのかしらね」


応答はない。


けれど。


“視線”だけが、明確にこちらへ向いている。


「無口なのね」


肩をすくめる。


「でもいいわ」


微笑む。


「言葉がなくても、意図は分かる」


ここは、閉じた空間。


外界から切り離された、“修正用の舞台”。


「強制的に、軌道を戻すつもりね」


一歩、さらに近づく。


「私を、ここで折るつもり?」


空気が、わずかに震える。


――肯定。


「ふふ」


小さく笑う。


「やっぱり、そう来るのね」


当然だ。


流れを壊された。


予定を崩された。


「だから、“排除”」


シンプルで、合理的。


「でもね」


足を止める。


「それ、遅いわ」


静かに告げる。


「もう私は、“気づいた側”よ」


その瞬間。


――ガンッ!


強い衝撃。


視界が、揺れる。


「……っ」


身体が、吹き飛ばされる。


床に叩きつけられる。


息が詰まる。


「……なるほど」


ゆっくりと、身体を起こす。


痛みはある。


けれど。


「物理的にも来るのね」


血の味が、口の中に広がる。


「雑で好きよ、そういうの」


立ち上がる。


足元が、わずかにふらつく。


「でも――」


顔を上げる。


「それで終わり?」


空間が、歪む。


今度は、床。


足場が崩れる。


落ちる。


底の見えない闇へ。


「……落とすの?」


風が、耳元を裂く。


「安直ね」


その中で。


私は――


笑った。


「でも、甘いわ」


手を伸ばす。


何もない空間へ。


「だってこれ、“あなたの中”でしょう?」


落下が、止まる。


ピタリと。


空中で。


「なら」


ゆっくりと、身体を起こす。


足場はない。


それでも、立つ。


「“ルール”があるはずよ」


視線を巡らせる。


歪んだ空間。


崩れた構造。


けれど。


「完全な無秩序じゃない」


見える。


微かな“線”。


流れ。


「ここが、基準点」


空間の一点に触れる。


――ビリ、と。


何かが弾けた。


「やっぱり」


笑みが深くなる。


「触れるじゃない」


“観測するだけの存在”ではない。


「干渉できるなら」


指先に、力を込める。


「こちらも干渉できる」


――ギシ、と。


空間が、軋む。


「なっ……」


声はない。


けれど、“動揺”は伝わる。


「驚いた?」


一歩、踏み出す。


空中を、歩く。


「観られるだけだと思ってた?」


もう一歩。


「残念」


さらに近づく。


歪みの中心へ。


「私、三回目なの」


にっこりと笑う。


「“慣れてる”のよ」


その瞬間。


――バチンッ!


強い反発。


視界が、白く弾ける。


「……っ!」


気づけば。


私は――


元の大広間に立っていた。


ざわめきが、戻る。


人の気配。


音。


時間。


「お嬢様!」


セリーヌが、駆け寄ってくる。


「ご無事ですか!?」


「……ええ」


ゆっくりと、息を整える。


身体は、無傷。


さっきの衝撃が嘘のように。


「戻された、か」


小さく呟く。


「お嬢様、今一瞬……姿が……」


「消えていた?」


「……はい」


やはり。


「そう」


視線を、ゆっくりと上へ向ける。


「逃がしたのね」


完全には、押し切れなかった。


だから、戻した。


「でも」


口元が、わずかに上がる。


「十分よ」


確信した。


「“触れる”」


あの存在に。


あの領域に。


「なら、次は」


静かに、呟く。


「もっと深く行く」


もう、怖くはない。


むしろ――


「楽しくなってきたわ」


ゲームは、完全に変わった。


駒同士ではない。


盤の外と、内の戦い。


「さあ」


小さく笑う。


「どこまで耐えられるかしら?」


視線の先。


見えない“何か”へ。


はっきりと、挑発を向ける。






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