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その断罪、すでに三回目です  作者: あめとおと


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7/9

7



静かすぎる朝だった。


けれど今回は、その“静けさ”に意味がある。


「……見ているのでしょう?」


窓辺で、紅茶を口にしながら呟く。


返事はない。


だが――


「いいわ。聞こえている前提で話すわね」


カップを置く。


わざと、ゆっくりと。


「あなた、“流れ”を整えたいのでしょう?」


時間を戻し、予定を変え、証言を誘導する。


すべては――


「“望む結末”に近づけるため」


沈黙。


けれど。


「なら、試してみましょうか」


立ち上がる。


ドレスの裾が、静かに揺れる。


「あなたの“理想の展開”が、どこまで通用するのか」


振り返る。


セリーヌが、少し不安げにこちらを見ていた。


「お嬢様……」


「大丈夫よ」


微笑む。


「少し、劇を変えるだけ」


――わざと。


「セリーヌ」


「はい」


「これから、あなたに“裏切ってもらう”わ」


空気が、凍る。


「……それは」


「言葉通りよ」


近づく。


彼女の目を、まっすぐに見る。


「王太子に、証言しなさい」


「私が、毒を混入したと」


「ですが……」


迷い。


当然だ。


「これは命令よ」


静かに、しかし確実に告げる。


「従うかどうかは、あなたが決めていい」


逃げ道は与える。


その上で。


「選びなさい」


沈黙。


長い、長い沈黙。


やがて――


「……承知いたしました」


セリーヌは、深く頭を下げた。


「お嬢様のご命令に、従います」


「そう」


それ以上は言わない。


理由も、説明もしない。


――見ているから。


「ねえ」


窓の外へ、視線を向ける。


「これでどうするの?」


あなたの“予定通り”に、証言が出る。


けれど、それは――


「私が仕込んだものよ」


沈黙。


だが、確かに。


空気が、わずかに揺れた。


「楽しみね」


くすりと笑う。


「どんな反応をするのか」



数時間後。


大広間。


人が集められている。


王太子。

側近たち。

そして――セリーヌ。


「……本当か」


王太子の声が、低く響く。


「はい」


セリーヌは、はっきりと答えた。


「毒の混入は、私が行いました」


ざわめき。


予想通りの反応。


「理由は?」


「お嬢様の命によるものです」


視線が、一斉に私へ向く。


「……弁明はあるか」


王太子が問う。


その瞬間。


「いいえ」


私は、あっさりと答えた。


「その通りよ」


空気が、凍りつく。


リオンの目が、わずかに細められる。


「認めるのか」


「ええ」


一歩、前へ。


「私が命じたわ」


嘘。


完全な嘘。


けれど――


「さて」


ゆっくりと、周囲を見渡す。


「これで満足?」


沈黙。


誰も、意味が分からない。


「どうしたの?」


首を傾げる。


「“この展開”、望んでいたのでしょう?」


その言葉に。


ほんの一瞬。


“何か”が、揺れた。


空気が、歪む。


「……来た」


小さく呟く。


その瞬間。


「――待て」


王太子が、手を上げた。


「……妙だ」


低い声。


「何がですか」


リオンが問う。


「話が、早すぎる」


王太子は、私を見ている。


「こんなに都合よく、証言と自白が揃うはずがない」


――正解。


「それとも」


彼の視線が、わずかに上を向く。


「“そうなるように仕組まれた”のか」


空気が、震える。


「……やっぱり」


口元が、歪む。


「気づき始めてる」


いい傾向だ。


「ねえ」


小さく、呟く。


「困るでしょう?」


観測者へ向けて。


「“予定通り”のはずなのに、納得されないのは」


完璧な流れ。


完璧な証言。


完璧な自白。


それでも――


「人は、違和感を捨てきれない」


王太子は、眉を寄せている。


「この件、保留だ」


彼は、はっきりと言った。


「再度、すべて洗い直す」


ざわめきが広がる。


「殿下、それでは――」


「構わん」


強く、遮る。


「納得できぬまま進める気はない」


――崩れた。


“用意された流れ”が。


「ふふ」


思わず、笑みがこぼれる。


「どう?」


静かに、天井を見上げる。


「気に入ったかしら、この展開」


沈黙。


けれど。


確かに、“視線”が強くなった。


「これは宣戦布告よ」


心の中で、告げる。


「あなたが動かすなら」


ゆっくりと目を細める。


「私は、それを壊す」


そして――


「壊した先で、勝つ」


視線を戻す。


王太子。

リオン。

セリーヌ。


すべての駒が、少しずつずれていく。


「さあ」


小さく呟く。


「次は、どうする?」


もう、前と同じ結末にはならない。


それだけは――


完全に、確定していた。





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