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その断罪、すでに三回目です  作者: あめとおと


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2/10

2



光が、消える。


――そして。


気づけば、私は椅子に座っていた。


見慣れた、自室。


窓の外には、柔らかな朝の光。


カーテンが揺れている。


「……戻っている」


ぽつりと、声が漏れた。


手を見る。

震えていない。


呼吸も、落ち着いている。


――夢ではない。


「お嬢様? お目覚めでいらっしゃいますか?」


扉の向こうから、侍女の声。


この声も、覚えている。


「ええ。入ってちょうだい」


扉が開く。


入ってきた侍女は、いつもと同じ顔で、いつもと同じ礼をする。


「本日のご予定ですが――」


「……一週間後、だったかしら」


思わず、言葉が漏れた。


「はい?」


「いいえ。続けて」


侍女は首を傾げながらも、予定を読み上げる。


茶会、謁見、視察――


すべて、記憶と一致していた。


「間違いないわね……」


小さく呟く。


これは、“一度目”と同じ一週間。


そして、その先にあるのは――断罪。


「お嬢様?」


「何でもないわ。少し考え事をしていただけ」


侍女を下がらせ、私はゆっくりと立ち上がる。


鏡の前へ。


映るのは、完璧に整えられた令嬢。


――そして。


まだ、何も知らなかった頃の自分。


「三回目……」


指先で、鏡に触れる。


冷たい。


現実だ。


「なら、やることは決まっているわね」


未来は知っている。


断罪の流れも、証言も、タイミングも。


なら――


「潰せばいい」


簡単な話だ。


証言を消せばいい。

証拠を潰せばいい。

関係者を排除すればいい。


……そう思っていた。


「お嬢様、こちらに」


廊下で、侍女が小さな箱を差し出す。


「何かしら」


「本日届いた贈り物です」


――来た。


一度目も、二度目も、ここから始まった。


箱を開ける。


中には、美しい菓子。


何の変哲もない、王都でも人気の品。


けれど。


「……これを、誰が?」


「差出人の記載はございません」


同じだ。


すべて同じ。


この菓子が、後に“毒”として問題になる。


私はそれを知っている。


だから――


「捨てなさい」


即座に言った。


侍女が驚く。


「よろしいのですか?」


「ええ。今すぐに」


これで、一つ目は回避できる。


そう思った。


……その時だった。


「失礼いたします!」


別の侍女が、慌てて駆け込んでくる。


「どうしたの?」


「厨房で、騒ぎが――!」


「騒ぎ?」


嫌な予感がした。


「菓子に、異物が混入していたと……!」


――は?


思考が、止まる。


「……どの菓子?」


「本日、複数の貴族家に届けられたものです!」


足元が、冷える。


今、捨てさせたばかりの箱を思い出す。


「まさか……」


私は、ゆっくりと振り返る。


さっきまで箱を持っていた侍女。


彼女の手は――


もう、空だった。


「……回収は?」


「すでに各所へ配られており――」


終わっている。


“事件”は、もう動いている。


「そんな……」


ありえない。


一度目は、もっと後だった。


二度目も、同じだった。


タイミングが――ズレている。


「どういうこと……?」


未来は、変えられる。


そう思っていた。


けれど違う。


「変わっている……?」


それとも――


「最初から、固定じゃなかった?」


胸の奥が、ざわつく。


知っているはずの世界が、音を立てて崩れていく。


「……面白いじゃない」


気づけば、口元がわずかに歪んでいた。


予測不能。


想定外。


――だからこそ。


「やりがいがあるわ」


私は静かに歩き出す。


まずは、現場。


この“ズレ”の正体を確かめる。


そして――


「今度は、見逃さない」


誰が、何を仕掛けているのか。


一度目では見えなかったもの。

二度目でも掴めなかったもの。


三度目で、全部――


「暴いて差し上げるわ」


廊下の先。


騒ぎの中心へと向かいながら。


私は、はっきりと確信していた。


この物語は、もう。


“同じようには進まない”。





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